『Part4 男同士の可愛いラブラブなストーリー』 - エッチでハッピー!!✩★✩ゲイ要素の高いオリジナル小説✩★✩
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『Part4 男同士の可愛いラブラブなストーリー』

長編連載/あらすじ/礼士は姉の麗花(れいか)と一緒に、クリスマスのショッピングに出かける。雄真にダイアモンドのエンゲージリングをあげるつもりだったが、予算内ではとうてい気に入るのがなくて、誕生石のトパーズのプロミスリングを贈ることにする。

礼士はこんなに姉とふたりでゆっくり話したことはなかった。姉は大学の福祉科を出て、障害者の手芸作品や手作り菓子を販売する店を経営している。それはみんな弟のウツ病を見てきた結果だという。礼士には一度も病院に見舞いに来ない姉がそんなに彼のことを気にしていたなんて、驚きであった。

礼士と雄真は、進矢と飲みに行く。そこへ海光(かいこう)先生が現れる。ラブラブなふたりを見て、酔払った雄真が、進矢には先生よりもっといい男を探してあげる、と発言。

クリスマスイブが来て、礼士は他のたくさんの男性達と一緒に、デパートのスタッフ出口で雄真を待つ。ふたりはレストランで食事をして、礼士は雄真にプロミスリングを渡す。

姉の唯花(ゆいか)からラインが来て、カラオケに来いと誘われる。ふたりは礼士の実家でイブの夜を過ごす。

礼士から連絡が来て、海光が行方不明だという。雄真のメイクアップスクールも病気でしばらく休んでいるということ。みんなは心配になって、海光のエージェントに連絡を取り、雑誌の表紙撮影をしているところを捕まえる。海光はウツっぽくて、夜眠れず、病院に通っているとのこと。主な原因は、雄真が先生は進矢にふさわしくない、って言ったこと。雄真は本気じゃなかったと泣きながら謝り、早く学校に帰ってくるように頼む。

そこへ唯花からラインが来て、カラオケのお誘い。そんなに深刻に話し合ってもいい結論が出ないから、歌いに来るようにと言われ、みんなもなんだかその気に。




Part4男同士の可愛いラブラブなストーリー



姉の麗花と待ち合わせて、クリスマスの買い物に行った。

「雄ちゃんは目が肥えてるから。」

「そんな話し、したことないのに。」

「でも、そうなのよ。きっと催促してるみたいで、言いたくなかったんじゃない?」

「そんなしおらしいヤツかな?」

「アンタのその予算じゃ、雄ちゃんの好きそうなゴージャスなダイヤは無理だから。」

それを聞いて、俺は黙る。でも俺だってまだ大学生だし。俺達は麗花の知り合いのジュエリーショップに向かっていた。そこは下町の問屋街の、よく言えば活気のある界隈。姉の麗花は、チャラチャラしたお嬢さん高校を出て、チャラチャラしたお嬢様大学で福祉の勉強をした。そのお嬢様高校と大学では、受験の他に両親の面接があり、大学のペット可の寮では、ペットの面接まであるそうだ。姉はそれまでお高くて、他人のことなんて全然知ったこっちゃない、という態度を貫いてきて、福祉科に入った時にはみんなが驚いた。今では障害者の作った手芸作品や、お菓子などを販売する店舗を経営している。今日は俺は休みで、専属スタイリストがいなかったんで、服装は適当。姉はなんだか知らないけど、上から下まで高そうな物を身につけてる。自分の店ではそういうカッコはできないから、うっぷんばらしだそうだ。

「あ、あそこ、あそこ。」

彼女が指差した先には、小さなジュエリーショップ。中に入ると、奥は意外と深い。姉の知り合いはそこのオーナー兼デザイナーさん。意外と若い男性。30代だと思う。姉が連絡してあったらしくて、既に候補もいくつか選んであった。

「ダイアモンドでその予算だと、どちらを取るかですが、サイズを選ぶか、クオリティーを選ぶか。」

どっちみちやけに小さい。もうそれだったら別の物にしたいくらい。俺の予算の少なさに、少し落ち込んでくる。

「俺、そんなちっちゃなダイヤより、もっと違うのもがいいな。」

「本人はダイヤだって言ってるわよ。」

そしたらお店の人が、

「目的にもよりますよ。まだお若い方で、すぐに結婚する予定のない方なら、もっとファッションリングみたいなのにしてもいいんですよ。クリスマスプレゼントですから。欧米ではプロミスリング、ってかなりポピュラーで、それだったら、どんな石で、どんなデザインでもあり、っていうことです。」

俺が初めて聞くその習慣。

「プロミスリング?」

「それは、エンゲージリングをあげる前に、これからもずっと一緒だよ、ってお約束のためのリングなんです。」

俺は姉に、

「雄真はそのプロミスリングなんていうこと知ってるのかな?」

「あの子は私より詳しいわよ。デパートの1階で働いてるんだから。」

お店の人が、

「それだったら、いいダイヤ毎日見てるでしょうから、作戦変更した方がいいかもしれません。」

俺はその言葉が気に入った。作戦変更。麗花は、

「誕生石トパーズだわね。」

「なにそれ?」

お店の人がいくつか見せてくれる。

「今度は逆に随分安いな。」

お店の人が笑って、

「物にもよりますけど。この辺のは、台がシルバーだから安いんですよ。」

姉が、

「台だけでもイエローゴールドにしてあげたら?」

「できますよ。ブルーとイエローゴールド、いいよ思いますよ。」

「なんか今ひとつピンとくるものがないな。」

そしたら、店の奥からもうひとりの男性が出て来て、

「トパーズですよね。デザインもっとあるんで、お見せします。」

その中に、淡いブルーの石に、イエローゴールドの台で、なんか雄真が好きそうなのがあった。

「俺、これにしたい。」

姉はなぜかしばらく笑ってて、

「いい、いい、あの子好きそう。」

それはプリンセスの王冠の輪っかの中に石がはまったみたいな、バカみたいな少女漫画チックなデザイン。サイズのお直しをお願いして、我々はその店を出た。


俺達は食事をしていこう、っていうことになって、レトロチックな食堂に入った。俺はこういう風にこの姉とふたりきりで、ちゃんと向かい合った記憶がない。いつも頭にあった疑問が自然に出た。

「姉さんはあんなにブランド物だの男に貢がせるだのしてて、どうしていきなり大学であんな勉強して今みたいなお店やってるの?」

「なに言ってんのよアンタ。」

「なに?」

「アンタみたいなのが側にいて、どうしたって関心を持つわよ。」

「俺?」

「病気で、ウツ病で、何度も入院して、自殺未遂。本人も家族も、どうにもできない病気があるんだな、って。」

「姉さん、病院に見舞いにも来ないで、友達と遊んでて、俺のことなんてどうでもいいのかと思ってた。」

「どうでもいいけどさ。」

「なんだ、どうでもいいのか。」

姉の言うことは、冗談なんだか本気なんだかよく分からない。

「姉さん、なんで結婚しないの?付き合ってた人、いたんでしょ?」

「色々あるのよ。」

そこで注文した物が出て来た。俺はオムライスで、姉はハヤシライス。

「俺のせい?」

「どうしたらそうなんの?」

「精神病が家族にいるから?」

「それで結婚やめるような人とは結婚したくない。結婚したくなったらいつでもするし。」

「そうなの?」

「アンタと雄ちゃんみたいに、ラブラブになれる人を見付けるから。」

「本気かなあ?」

姉はそれははぐらかして、

「さっきの指輪、よかったわよ。絶対気に入る。」


こんなに姉とふたりでずっと一緒にいるなんて、相当珍しい。俺達はそのあとも一緒に、雄真のデパートに遊びに行った。

「やだ!麗花様!」

雄真は麗花様の周りをピョンピョン飛んで回る。

「俺もいるぞ。」

「あ、礼ちゃん。」

「なんで俺には素っ気ないの?」

「だって麗花様が来て下さるの久し振り。嬉しいわー。」

「雄ちゃんのしてるリップスティック、可愛い色。」

「あ、これはね、ディオールの新色。麗花様もお試しになる?」

俺はふたりのお化粧品屋さんごっこをほっておいて、参考のためにジュエリー売り場を見て歩いた。さすがにこの時期だと店員がうるさい。俺は、

「実はさっき買ってしまったんで。」

と言って回る。ダイアモンドか。マジでいい値段。大きくても安いのはクオリティーが落ちるからだそうだけど、あんまり小さくても可哀そうだし。それより俺と雄真ってこの先どうなんの?あの調子だと、そのうちシンデレラの馬車に乗って、結婚式挙げたいとか言い出しそう。俺が大学出て、雄真がメイクの学校出て、ふたりともちゃんと仕事始めてからだよな。


進矢に会った。彼も俺みたいに大学の近くに住んでるから、丁度中間くらいの場所に飲みに行った。雄真はあとで来ることになってる。俺達はたわいもないことをあれこれ話して、ビールの中ジャッキを空けたくらいで、やっと海光の話しになった。会った時から思ってたんだけど、なんだか彼の顔付きが違う。もともとイケメンだけど、さらに輝いて見える。そのことを言いたかったけど、なんて言っていいか分からないから黙ってた。

「海光にアレが初めてだってバレちゃって。」

「へー、それで?」

「それでね、あの人、こんなイケメンの初めてを奪える自分がすごい、みたいなことを言い出して。やっぱり変ですよね。」

「それって、どういう発想なんだろう?」

「分からない。」

「あの写真はよかった。」

「あれね、ヤった直後。」

「ふーん。アートだったね。童貞喪失直後。」

「ええ。」

「付き合ってんの?」

「ヤってはいるけど。」

「どうなの、彼?」

「他の男を知らないから、分からない。礼士さん、僕に試させてください。」

「ヤバい、それは。」

「冗談です。」

そしたら俺達のテーブルの側に雄真が立っていた。どこから聞いていたのか分からない。

「進矢ちゃん、先生と付き合ってんの?」

俺が、

「ヤってはいるらしいよ。」

「へー、先生セックス上手いらしいよ。」

進矢が、

「そうなの?僕、ひとりしか知らないから。」

「わー、そうなんだよね。なんかあんなのに捧げちゃって、もったいない。」

進矢が笑い出して、

「そういうことですか?」

「うん。もっといい男探してあげればよかった。反省する。」

俺が、

「雄真が反省している。珍しい。」

「なによ、礼ちゃん。」

って、俺の頭をグーで殴るマネをする。進矢は、

「そんなに悪くないですよ、あの人。」

「僕ね、進矢ちゃんの顔が輝いて見える。感動的に。」

俺が、

「俺もそう思った。こんなことってあるんだな。」

進矢が、

「マジですか?」

雄真が、

「マジ、マジ。こういう人初めて見た。恋に落ちた、と言うより、愛の炎に焼かれた人。」

「すごい表現ですけど、僕、そこまで焼かれてるつもりはないですけど。」

「でも、そう見えるもん。先生のこと愛してるの?」

俺が、

「そんな、会ってすぐ。」

「そんなの関係ないもん。」

進矢が、

「僕達、セックスが先になっちゃったから、恋とか愛とかいう気持ちより、なんだろう?身体のつながりに焼かれてる感じ。」

雄真が、

「わー、いい、それ。僕も身体のつながりに焼かれてみたい。」

俺が、

「いつも焼かれてるだろ?もう燃えカスになってるぞ。」

「あ、進矢ちゃんのケータイ。きっと先生ね。」

進矢は少し喋ってて、すぐ切った。雄真が、

「なんだって?」

「なんでも、僕の身体の温もりを側で感じたいそうです。」

「行くの?」

「行きませんよ、そんな、毎日ベッタリ。あ、でもなんか向こうが来るそうです。」

「え、来るの?」

「そうらしいです。」

俺が、

「バカバカしいから、さっさと酔払おう。」

雄真も、

「僕もそうしよう。」


俺達がすっかり酔って、俺がディオールの新色に接吻している間に、海光が現れた。こっちも相当輝いてる。ふたりはほんとに体温を感じ合うほど接近してる。ふたり共早くヤりたいだけじゃん、と思ったけど、進矢は毎日ベッタリでは嫌だという発言をしてたな。雄真は、バンバンと先生の背中を叩きながら、

「先生!ダメですよ。進矢ちゃんには僕がもっといい男紹介するから。」

「お前が俺に紹介したんじゃないか。」

「だから、アレは僕の間違いでした!」

「なんで、俺のどこが悪いの?」

「ふざけてるとこです。」

「君だってふざけてるだろ?」

「そうですけど、進矢ちゃんにはもっと、ヤバいクールな男を見付けてあげるの。」

「ヤバいクールな男?」

「うん、うん。」

「なに?それって俺じゃん。」

俺と進矢が笑い転げる。雄真が、

「全然違う!ヤバいクールな男はね、そのたったひとつのキスだけを想い出に、一生生きていけるような、そういうヤバい恋愛。」

海光が、

「やっぱりそれ、俺じゃん。」

「全然違う!僕の言ってること、分かってない!」

と言って、また海光の背中をバンバン叩いて、

「ヤバいクールな男ってね、なんかこうスーツなんかバリっと似合って、男の香水が身体の匂いに混ざって、それを嗅いだだけで、死んでもいい、って思うようなそういう男。」

「ほらな、やっぱそれ俺じゃん。」

「先生ー!どこまで自分を誤解してるんですかー?」

俺と進矢はさらに笑い転げる。海光は、

「じゃあ、雄真は俺のこと、どんな男だと思ってるわけ?」

「毎年入って来る若い男を引っかけて、適当に遊んで、また別の男を引っかけて、今回みたいに、たまたまイケメンのインテリ大学生が、僕の小さな可愛い間違いで釣れたけれども、進矢ちゃんは先生の相手するほど暇じゃないんで、僕が今度とっとと、もっといいヤバいクールな男を探してあげるんです!失敗から学ぶ賢い雄ちゃんなんです!」

すっかりでき上っている。海光が、

「じゃあさ、今の発言に対して、進矢はどう思ってんの?」

進矢はしばらく笑いながら考えてて、

「僕は釣られたわけじゃないから。」

「どういうこと?」

「僕が釣ったんだから。」

雄真が急に真顔になって、

「進矢ちゃん、今のメチャカッコいい。」

「そうでしょう?」

「僕、今ので酔いがさめちゃった。礼ちゃん、僕思うけど、ほっといても進矢ちゃん、さっさと先生よりもっと素敵な男を釣れるわよ。よかった。」

海光が、

「なにそれ?俺はな、進矢の初めてを奪った、クールでラブリーな男なんだから。」

雄真が、

「クールでラブリー、ってメイクの授業じゃないんですから。そもそも職業がチャラいんです!」

「悪かったな。」

進矢が、

「僕は海光の職業や作品は尊敬してますよ。」

海光が、しんみりと、

「ありがとう、進矢。ほらな!雄真。今の聞いてただろう?」

雄真はプイッとあっちを向いてしまう。進矢は体温を感じるほど近くにいる、海光の顔をのぞき込んでなにやら小声で話している。ラブラブなふたり。雄真は、

「礼ちゃん、アホらしいから帰りましょう!」

「いやあ、俺はもうちょっと見学していきたいなあ。まだ食べる物あんまりオーダーしてないし。この店結構食べる物、旨いんだ。」

雄真はふてくされて、俺の肩に寄りかかってビールを飲みながら、時々あっちのふたりをチラチラ見てる。進矢が海光の髪に手を当てて、愛撫するような手付きで撫でる。雄真の機嫌がさらに悪くなる。俺は、

「いいじゃないか、仲がよくて。」

「やなんだもん。先生みたいなのとくっついてー。」

「君がそもそもキューピッドだったんだから。見てくれも可愛いキューピッドだけど。」

俺はいつものように彼の巻き毛をクシャクシャにする。

「ダメ、礼ちゃん。僕の髪、性感帯なんだからー。バカ、バカ!」

あっちのふたりを見ていると、確かに釣ったのは進矢の方だな。年はいくつくらい違うんだろう?進矢が海光を上手くあやしてる感じ。それに進矢が海光の耳にずっとなにか囁いてて、海光はそれを素直に聞いている。なんの話しをしているのだろう?そしたら雄真が、

「ふたりでなにヒソヒソ話してるんですかー!」

進矢が、

「僕がやってみたい、まだやったことのない体位。」

「え、なになに、どんなのどんなの?」

「それは内緒です。」

「つまんない。礼ちゃん、僕達もヤろう。またやったことのない体位。」

俺が、

「そんなのあったかな?」

「ある。」

雄真が俺の耳元でヒソヒソそれを教えてくれる。

「え!マジ!」

って俺はふざけて叫ぶ。

「礼ちゃんのバカ!」

「じゃあ、来週。」

「ダメ、今夜。」

「今夜はもう君はでき上ってるから。」

「じゃー。明日。」

「分かった。」

進矢が、

「僕、童貞が長かったもんで、気持ちだけが先走って。」

海光は恥ずかしそうに下を向いている。先生はよく喋るから、そんなに黙ってることは滅多にない。雄真が、

「よかったですね。先生はセックスだけは上手だってウワサだから。」

すごくイジワルに言うから、俺は、

「雄真、嫉妬してるだろう?でもどっちに嫉妬してるの?」

「僕は、あんな先生にあんないい彼氏ができるのが悔しいんです。」

「じゃあ、雄真は進矢のことが好きなんだ。」

「そーじゃないでしょ?」

「そーだろ?先生に進矢を盗られたのが、悔しいんだろ?」

「そーじゃないでしょ?もしもっとヤバいクールな男だったらよかった、って言ってるでしょう?」

「どっちみち遅いんだから、しょうがないだろ?」

「そんなことない。すぐ別れる。そしたらこの雄ちゃんが、もっともっといい男を探してあげる。」

俺達の目の前で、進矢が海光の顔を上げて、唇に軽いキス。俺は焦って見てる人がいたかどうか、周りを見回す。でもよく分からない。雄真は、

「もういいや、どうせ別れるまで秒読みなんだから、イライラするのはお肌によくない。飲もう飲もう!」

「飲み過ぎるのもお肌によくないぞ。」

「じゃあ、食べよう。海藻サラダ。お刺身。ヘルシー!」

見ていると、今度は海光が進矢の肩に頭をもたせかける。また雄真の機嫌が悪くなって、必死に食べる。俺も負けじと食べる。そしたら今度は進矢が海光の手を握る。テーブルの下じゃなくて、上だから、そこらの人にもよく見える。いいのかね?知らないけど。で、俺が、

「先生、大分進矢に参ってるみたいだな。」

「礼ちゃん、それ食べないんなら。僕が食べる。」

「食う、食う。あのさ、あのふたり、いくつ違うの?」

「あのね、先生確か、33とかそのくらい。」

「ということは、10才くらい違うんだ。カッコいいじゃない、そんなに上の男を手玉に取って。」


俺達は家に帰って来た。まだプンプン怒っている雄真が、クマのチーちゃんを蹴とばす。俺が拾って、可哀そう、可哀そう、をしてあげる。

「もう寝ます!」

「お風呂入ろう。」

「イヤ。」

「なにその、イヤって。」

「そんな気分になれない。」

俺は、周りに誰もいないのに、彼の耳元で、

「あの体位をしてあげるから。」

「え、マジ?あ、僕お風呂に入って来ます。」

「まだ沸かしてないよ。」

「なんだ。」

「すぐ沸くよ。」

「うん!」

ふたりで湯船に浸かりながら、

「雄真、クリスマスイブは何時まで?」

「えっとね6時まで。」

「そんなに遅いんだ。」

「うん。でもね、次の日は休み。」

「じゃあ、ゆっくりできるね。」

彼はチラって俺の顔をうかがうように見る。

「僕ね、麗花様と唯花様になんかプレゼントあげようと思うの。コスメのギフトセット。多分。それか、フレグランスのギフトセット。礼ちゃんは誰にあげるの?」

「石山さんにはなにかあげたいな。ケーキとかお菓子とか。」

「それから?」

「どうだろ?あんまり考えてない。」

俺は湯船からあがって、身体を洗って、頭を洗って、雄真の巻き毛にシャンプーをかける。

「大分伸びてきたんじゃない?」

「うん。こないだ礼ちゃん、なんで麗花様と一緒だったの?」

「たまにはいいだろ?」

「まあそうだけど。」

「ふたりで色々話しをした。姉さんがあんな仕事始めたのも、俺の病気の影響なんだって。全然知らなかった。」

「知らなかった、って普通そう考えるでしょ?僕はずっとそうだと思ってた。」

「だって姉さんそんなことおくびにも出さないし。病院に見舞いに来たこともないし。だから俺、姉さんは俺のことどうでもいいと思ってた。」

「どうでもいいと言えばいいんだけど、そうじゃないと言えばそう言えるし。」

「なんだそれ?姉さんもそんなこと言ってたぞ。」

「よく分かんないけど、麗花様は仕事の話しする時、必ず人に同情しちゃダメだって、できることとできないことをハッキリさせなきゃダメ、って言ってる。」

「あ、だから雄真、俺達一緒に住もう、って言った時、できないこともあるよ、って言ってたんだ。」

「うん。多分それは麗花様の影響。じゃないと僕、礼ちゃん可哀そうで、ずっと看病しちゃうもん。でもここんとこ調子いいからよかったね。」

それからそのやったことのない体位っていうのをやってみたんだけど、思ったより難しかった。


クリスマスイブ。銀座のデパートの裏口には、スタッフの出て来るドアがあって、俺が行った時にはもう大勢の男が、出口で待っている。すごい数。やっぱりデパート、って女性の職場なんだな。今日は雄真の変なリクエストで、俺にその裏口で待ってて欲しいそうだ。毎年繰り返されるイベントで、自分だけ誰も待ってないのがイヤなんだって。俺は朝、雄真が言った通りにドレスアップして、小さめだけどバラの花束も買って、男達に混じって雄真の出て来るのを待つ。ポツポツ従業員が出て来始めて、俺は暇潰しに、カップルを予想する。当たってる時もあれば、全然意外なこともある。俺と雄真、ってどんな風に見えるんだろう?可愛いゲイカップル?ここんとこ雄真の外見は、相当女性化してるから、意外と普通の可愛いカップルに見えるのかも。大分待って、とうとう彼が数人の女の子達と一緒に出て来る。華やかなロングドレスを着て、少し伸びた巻き毛もとっても可愛い。俺は彼の方へ歩いて、抱き締める。それから花束を渡す。なぜか男達が俺達の方を見る。なんで?可愛いから?

「礼ちゃんゴメンね、待たせて。みんなと一緒に帰りたかったから。」

「どうして?」

「だって、礼ちゃんを見せびらかせるもん。」

俺は笑って、

「色々考えたけど、父の知り合いのレストランが銀座にあるから、そこを予約した。」

「いいのに。」

「まあ、1年に1回だし。」

俺は、もしかして1生に1回?と思って、ナーバスになって、プロミスリングはまだエンゲージリングじゃないんだよな、って思い出して、少しホッとする。

「俺も行ったことないんだけど。」

ふたりでちょっとだけ迷って、銀座通りから少し奥まった雑居ビルにそのレストランはあった。1階が店舗で、外に螺旋階段があって、2階にエレベーターがあって、なんか変な造り。レストランは7階にある。中に入ると、トレンディーなオープンキッチンで、俺は父のどういう知り合いなのかとか全然知らなくて、席は1番いい席で窓からネオンが見えて、ロマンティック。わー、どうやって指輪渡したらいいの?なんて言えばいいの?いつ言えばいいの?俺、全く考えないで来てしまった。メニューを眺めていると、オーナーさんが出て来て、俺達に挨拶をする。父とは随分昔の知り合いらしい。プライベートの友達。詳しくは聞かなかったけど、俺にも会ったことあるらしい。俺が小学生の時、だって。

「俺、もう大学生ですよ。」

「時間の経つのは速い。このレストランは私の3つ目のレストランで、5年前にオープンしました。」

雄真が、

「ネオンがとっても素敵。」

目の中に少女漫画のバラがある。オーナーさんが、色々メニューの説明をしてくれて、雄真はオープンキッチンの方へ行って、美味しそうな物がないか偵察してる。

「礼ちゃんなに食べる?」

「この鹿肉ステーキというのが気になる。」

「ふーん。僕はね、ローストターキー。クリスマスっぽい。」

ふたりでスパークリングワインのロゼをボトルで頼んだ。優真はワインを見て、

「可愛い色。礼ちゃんのバラと同じ色。」

また目が少女漫画に。俺は、少し彼を泣かせる計画をして、

「今年は、一緒に住んでくれて、本当にありがとう。クリスマスを病院で過ごさなくて済んだ。」

彼の目の中のバラがゆらゆら揺れる。

「それにいつも美味しいものを作ってくれてありがとう。おかげで健康になった気がする。学校とか色々忙しいのに大変だったろう?」

そこへディナーが来て、ふたりでお互いの味見をしながら、ワイワイと食べる。そしてワインを飲む。お腹いっぱいになって、幸せな気持ちが盛り上がる。

「雄真、デザート食べるだろう?」

「うん!」

「なにがいい?」

「あのね、フランス風クリスマスケーキ、グランマニエいっぱいのクリーム、っていうの。礼ちゃんは?」

「アップルパイにアイスクリームが乘ってるのにする。」

「いいね。美味しそう。また味見させてー。」

雄真がケーキの最初のひとかけを口に入れた時、俺はポケットから小さな箱を取り出す。彼の目の中のバラがグルグル回り出す。

「礼ちゃん?」

彼は小さな箱に結んだリボンを取って、静かに箱を開けて、

「あ!」

ってひと言。それから、

「可愛い!」

と叫ぶ。俺は指輪を彼の左手の薬指にはめてあげる。さすが麗花様。サイズピッタリ。

「ほんとはダイアモンドにしたかったんだけど。」

「でも僕はこれが好き。」

「ほんと?」

「うん。トパーズ。誕生石なのに僕持ってないし。このデザイン、すごいゴージャス!どこで買ったの?」

「姉さんの知り合いの所。」

「あ、だからあの日一緒だったの?」

「そう、そう。」

「このデザインは俺が選んで、姉さんもいい、って。」

「礼ちゃん、ありがとう。じゃあね、これは僕から。」

彼もポケットから小さい箱を取り出す。中を見たら、ちっさいガラスのボトル。

「これはね、僕が調香したフレグランスなの。」

「え、そんなことできるの?」

「うん。こないだから勉強始めて。」

俺はちっさな蓋を開けてみる。

「あー、なるほど。俺の好きな香り。なんで知ってんの?」

「様々な情報をかき集めて。」

「これどうすればいいの?どこにつけるの?」

「ココ・シャネルは、香水はキスして欲しい所につけるのよ、って。」

「じゃあ、全身?アソコも?」

「もう!それさっさと使っちゃって、そしたらまた春用のを作るから。」

「そんなに簡単に創れるもんなの?」

「今、いっぱい勉強してるから。」

「君ってほんとにクリエイティブだな。感心する。」

雄真が貰ったばっかりの指輪を眺めながら、

「今年のクリスマスは、僕の一生で一番いいクリスマス。」

俺は雄真を泣かせようとしたのに、自分が泣いてしまった。


レストランを出て、ふたりで銀座通りを散歩した。雄真は、

「僕ね、銀座って東京の中で1番好き。僕のおじいちゃんは、おばあちゃんとデートは必ず銀座だったって。買い物に行く時も必ず銀座だったって。」

「おやおや、唯花様からライン。なになに、これからカラオケが始まるから、貴方達もいらっしゃい。」

「へー。」

「なにその、へーって?今夜は俺とふたりでラブラブじゃないの?」

「いやー。」

「なに?ひょっとして歌いたいの?」

「まあー。麗花様にもお世話になっちゃったし。」

と言って、指輪を見る。

「じゃあ、ほんのちょっとだけだからな。」

そんなこんなで、いつものように夜中過ぎまで賑やかに。俺はずっとキッチンで石山さんと話しをしていた。家に来る途中で彼女のために、洒落たお菓子を買って行った。俺達はふたりでそれを食べながら紅茶を飲んで、俺は雄真に指輪をあげた話しをして、彼女はまたいつかみたいにお風呂を沸かしてくれて、この家で一番静かな所だから、ゆっくり浸かってらっしゃい、って言ってくれた。お風呂を出たら、俺はなんとなく麗花姉さんから聞いた話しをして、俺の影響であんな店を始めたんだな、全然知らなかった、って言ったら、姉さんはいつも俺の様子を石山さんに聞いてくれてた、って。俺がいつか泊ってた和室に布団を敷いてもらって、先に休むことにした。あの大音響の中でも眠れる俺、ってすごい。まあ、眠くなるような抗不安薬は飲んでるけど。俺がうつらうつらしてる頃に、布団にゴソゴソ潜って来る誰か。

「お前ん家、こっから5分だろう?」

「だって僕、もうこの家の子になったんだもん。プロミスリングもらったもん。」

「ボディーソープの匂いがする。」

「うん。お風呂いただいてきた。」

またスッピンのネグリジェ?確かめようと電気をつけると、

「たまらん。」

「なに?」

「そのスッピンとピンクのネグリジェのギャップが。」

俺は彼の着てる物を脱がして、まだほろ温かい身体を抱き締める。

「あー、すごい礼ちゃん!」

彼がすごい声出すんで恥ずかしいから、サッサとヤって、サッサとイって、サッサとイかせてあげた。いいクリスマスだった。


冬休みが終わって、俺と雄真はそれぞれの学校に戻った。雄真は今夜、クリスマスに食べたグランマニエたっぷりのクリームが入ったケーキ作りに挑戦している。もうケーキの部分はオーブンに入っていて、彼は神妙な顔付きで、クリームにグランマニエを注ぐ。

「これくらいでいいハズなんだけど。」

「俺が味見してあげる。」

「あ、ダメ、そんなに取っちゃ。」

「美味しい!天才!」

「やっだー!礼ちゃんったらー、ほめ過ぎ!」

と言って、俺の背中をバンバン叩く。

そこへ進矢から電話がかかってくる。

「すいません。海光からなにか連絡なかったですか?」

「いや、全然。どうした?」

「行方不明。」

「行方不明、ったって、学校には行ってるだろう?雄真、海光先生はちゃんと学校に来てる?」

「ああ、なんかね、病気とか言ってしばらく休むって。他のクラスの先生が来てる。」

「進矢、雄真が先生学校休んでるって言ってるけど。なにかあったの?」

「すいません。もう少し、心当たりの所を捜してみます。」

進矢はそれで電話を切った。雄真はクリームを冷蔵庫に入れながら、

「先生ね、しばらくおかしかった。あんなに喋るの好きな人が、ずーっと黙ってて。」

「君が変なこと言うからじゃないの?」

「知らないけど、僕は思ったことを言っただけで。」

「進矢にもっといい男紹介するとかなんとか。」

「だって、進矢ちゃんもったいないもん、あんなの。」

「かわいそうに、もしかしたら世をはかなんで。」

「なんで?進矢ちゃんに新しい彼氏できたの?ヤッター!」

「雄真、先生かわいそうじゃないか?捜しに行こう。」

「どこに?どうやって?僕、先生のことそこまで知らないし。」

「俺達よりは知ってるだろう?友達とか、仕事場とか。」

「仕事だったら、先生どっかのエージェンシーに入ってる。友達に聞いてみる。」

そこはメイクアップアーティストとかヘアスタイリストとかフォトグラファーなんかのマネージメントをしている会社で、こんなに遅い時間でも電話をしたらオフィスの人が出た。それによると、海光は普通に仕事をしてて、作品もこのところ前よりもっとクオリティーが高くなっている、ということ。スケジュールを聞いたら、意外とあっさり教えてくれて、あさってファッション雑誌の表紙の撮影に来るハズだということだった。

「よかったな、海光仕事はちゃんとしてるんだ。そのスタジオって、勝手に行ってもいいのかな?」

「そこまで有名人がモデルじゃない限り、ちょっとくらいのぞいても誰も気にしないよ。普通は。」

俺は進矢に電話をした。

「海光ね、あさって仕事で、雑誌の撮影。どうする?」

彼はしばらく黙って、俺が、

「一体なにがあったの?なんで行方不明になっちゃったの?」

「それが、毎日だんだん口数が減って、俺は君にふさわしくない、なんてつぶやき始めて。」

「ウツ病かもしれない。俺もそうだから分かるんだけど。」

「ウツ病になるようなタイプには見えませんけど。」

「どんな人でもなる病気だから。」

「そうなんですか?海光、アーティストだから、俺とかの知らない繊細な面もあるのかも知れない。」

「あさって、こっそりのぞきに行って、どうするかはその時考えよう。」


俺と雄真と進矢の3人は教えてもらったスタジオに行った。その建物は広くて天井の高い、床も壁も真っ白な空間。ドアの隙間から、海光の声が聞こえる。

You can be whatever you want. Do you want to be a fairly with butterfly wings?(君はなんにでもなれるんだよ。蝶々の羽のついた妖精になりたい?)」

Yes, that would be good.(うん、それがいい。)」

3人で中をこっそりのぞくと、モデルは小さな女の子。6才くらい?髪の毛は、雄真の巻き毛をブロンドにしたみたいな感じ。可愛い子。でもなんだかナーバスみたいで、泣きそうになってて、海光が一生懸命話しかけてる。

So I'm going to paint butterflies on your cheeks. (じゃあ俺は君のほっぺに蝶々を描くから。)」

Really?(ほんとう?)」

Of course, you're a butterfly fairly! Hold this mirror and tell me which colours you want.(もちろん、君は蝶々の妖精なんだから!この鏡を持って、そしてどの色がいいか教えて。)」


俺達はそこを離れて、作戦会議。雄真が、

「先生、蝶々の絵とか、すごい上手ですよ。あーあ、僕も英語の勉強頑張らなきゃ。」

俺は、

「そういうことじゃなくてさ、海光見た目元気そうだよね。」

進矢は黙ってる。俺は、

「ちゃんと仕事できるのに、なんで学校は休んでるんだろう?」

雄真は、

「先生ってほんとに才能あって、家の学校で教えるような人じゃないんだよね。メイクアップアーティスト一本でいくのかな?」

進矢が、

「あ、そういえば、それで悩んでるようなこと言ってた。学校辞めると経済的にやっていけるかどうか心配だって。」

雄真が、

「もう僕達みたいなおバカな生徒に教えんの、やんなっちゃったのかな?」

「あ、そういえば、そういうことも言ってました。」

「え、マジ?冗談で言ったのに。」

俺は進矢に、

「海光は、俺は君にふさわしくない、って言ってたんだろう?なにか原因があるの?」

「それはあれですよ、雄真があんなこと言うから。」

「え、僕のせいなの?ほんとのこと言っただけなのに?」

俺は、

「でも雄真の言うことなんかを真に受ける、ってことは心配。やっぱりウツ?それに学校を休んでる、っていうのも心配。」

進矢は、

「学校を休んでる、っていうのは、俺に会いたくないからだと思います。」

雄真は、

「でも先生、学校でだんだん喋らなくなっちゃって。」

俺は、

「病院とか、行ったりしたのかな?」

進矢が、

「考えてるようなことは言ってました。」

「どんな症状?」

「眠れない、って言ってました。」

「それ結構ヤバいな。雄真、先生に会ったらちゃんと謝れ。」

「なんで僕が。」

「海光は才能あるアーティストで、進矢には十分ふさわしい男じゃないか。謝れよ。」

「分かった。」

雄真はふてくされる。俺達はさっきの場所に戻って、またドアの隙間からのぞく。ほっぺに見事な蝶々を描いてもらって、女の子もハッピーでビッグスマイル。嬉しそうにカメラの前でポーズをとる。海光は撮影を見ながら、メイクの道具を片付けている。俺達はどうすればいいのか?俺がウツの時は、誰にも会いたくない気分になる。海光もそうなのかも知れない。だけど彼みたいなアーティストタイプは、野放しにしとくと、いきなり自殺する可能性も。病院に連れて行った方がいい。俺はそう思って、進矢にとりあえず隠れているように言って、雄真とふたりで部屋の中に入って行った。海光は、俺達に気付いて、チラってこっちを見たけど、なにも言わないで、片付けを続けている。俺は、

「海光先生、病気で学校休んでらっしゃる、って聞いて心配で、この場所教えてもらったんです。お加減はどうですか?眠れないそうですね?」

雄真が、

「先生、ゴメンなさい。僕、進矢にもっといい男探すとか色々言っちゃって。ほんとは僕、先生のこと尊敬してます。」

「病院とか行かれたんですか?」

海光はしばらくなにも言わずに固まってて、この固まるというのも、ウツの症状をひとつで、俺はますます心配になる。

「先生、実は進矢も来てるんですけど、会いたいですか?」

海光は暗い顔をして、視線を床に落とす。雄真が突然海光に抱き付いて、

「ゴメンなさい先生!僕が酔払ってバカみたいなこと言ったばっかりに。僕達の大事な先生がいなくなっちゃうなんて、僕達困ります。先生いなくなったら、あの学校もう面白くないし、だったらいつかのエロいメイクアップアーティストの弟子にでもなって、パリにでもどこでも行って、いいように使われて、人生を台無しにした方がマシです。先生早く学校に戻って来て。」

雄真はマジで泣きだした。さすがに海光もクスって笑って、

「病院にはこないだ行った。大分眠れるようになった。」

「よかった、先生。僕達先生が死んじゃうんじゃないか、ってすごく心配した。」

「死にはしないよ。」

「よかった。」

俺は、

「進矢が連絡くれたんです。先生が行方不明になったって。」

海光は、

「行方不明になりたかったんで。」

「そこに来てますけど、会いたいですか?」

「もうどうでもいい。」

と、小さくつぶやく。雄真はまだ泣いていて、でかい音で鼻をかむ。俺は、

「先生、進矢に会うんなら、ふたりきりがいいですか?それとも俺達も一緒の方が?」

「それももうどうでもいい。」

「じゃあ俺達みんなで話しをしましょう。」


撮影が終わって、スタッフ達は画面ででき上りをチェックしている。海光は人が違ったみたいに明るく、

「よかった。色も綺麗に出ましたね。」

そしてしばらく数人の人達と話してから、俺達の方へ戻って来た。その時は進矢も一緒で、みんなで近くのコーヒーショップに行った。海光はできるだけ進矢の方は見てないみたいな感じだった。雄真はまだ泣いていて、そこのペーパーナプキンを大量に消費して鼻をかむ。

「ゴメンなさい。僕がイジワル言って。本当は、僕と礼ちゃんみたいに、ふたりもラブラブで幸せになって欲しい。」

進矢が、

「雄真、本気で言ってるのか?」

「そうやって聞かれると、実はよく分かんないけど。」

俺は、

「雄真。」

「あ、でもね、僕はふたりには幸せにはなって欲しい。どういう形であろうと。それから先生にはちゃんと学校に戻って来て欲しい。」

俺が、

「学校には戻られるご予定なんですか?」

「病院ではもう少し薬の効き具合を確かめたい、って。」

「今の抗うつ剤、大分いいのが出てますから、体調に合えば効き目も早いですよ。」

雄真が、

「先生、もうじき春の東京コレクションですから、また僕をスタッフに送り込んでください。」

俺は、

「君は自分のことしか考えてないな。」

「そんなことないですって。僕みたいな仕事速くて役に立つ人間は、誰のためにとってもいいんです。」

海光は、

「学校に戻るにしても、時間は減らすつもり。俺のエージェントは学校辞めるんなら、もっと仕事あげられる、って言ってる。」

雄真が、

「あれ、あれ、唯花様からラインが。なに、なに?・・・カラオケのソフトもハードもバージョンアップしたから、これからいらっしゃい。・・・じゃあ、ちょっとお返事を・・・今、みんなで深刻なお話しをしてるから。・・・それならみんなでいらっしゃい。どうせそんなに深刻になってもいい結論は出ないし、ライトの数も増やしたから。・・・だって。礼ちゃんどうする?」

「俺は、めだかの学校くらいしか歌えないぞ。」

進矢が、

「あれいい歌じゃないですか?僕好きです。みんなでお遊戯してるんですよね。可愛いじゃないですか?僕、礼士さんと一緒に歌いたいです。」

雄真が、

「じゃあこれからみんなで行きましょう!先生も一緒に!」

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千本松由季

Author:千本松由季
東京都出身。カナダ在住。
男同士の恋愛を、様々なテーマで書いています。作品は長編を中心に50作以上。
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bridgetteyuki@hotmail.com
イラストも描いています。

©Yuki Sembommatsu 2017-2018