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長編小説『俺と彼の結婚式には天井から花をたくさん吊るすの』からベストシーンを抜粋しました。

  03, 2018 12:05
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長編小説『俺と彼の結婚式には天井から花をたくさん吊るすの』からベストシーンを抜粋しました。


R18

ずっとストレスが溜まってる。隣のベッドのヤツが気に食わない。ソイツはイケメンの大学生で、しばらくずっとハイだから、すぐ俺に手を出してくる。キスされるぐらいは構わないし、胸開けられて乳首舐められるくらいも構わないし、でもさっきはパンツに手を入れられて、俺はそれは嫌だったからひとりで病室を抜け出して、食堂の隅っこの看護師に見付かりにくいとこに座ってた。


巡回はさっき終わったばっかだから、1時間くらいはここに座ってられる。あの大学生、イケメンなのはいいけど、時々巨乳の気持ち悪い女子高生の彼女が見舞いに来るのがほんとに気持ち悪い。あの巨乳に触った手で俺のペニスに触られたら、と思うと、マジ吐きそうになる。目の神経が疲れてて、しょうがないんで食堂の電気を消した。


俺は双極性障害で、すぐ人のハイやウツを貰っちゃう。大学生のハイが俺に乗り移って来た。目をつぶっても俺には色が見える。色が飛んで行く。たくさんの色んな色が。それとたくさんの透明な色が、頭の中を通り越して、頭蓋骨を通り抜けて、食堂を通り抜けて、外に向かって発光している。その色達を走って行って、速く捕まえて、全部ちゃんと順番に並べて、なんとかして記録したい。


病院に救急車が入って来る。精神科の病棟はかなり裏側にあるから、あんまり聞こえないけど、夜中だとちゃんと聞こえる。もう1台、また1台入って来る。余程大きな事故かなんかなのかな?こういう時俺はいつも、事故に会った人が大丈夫でありますように、ってどんな神様も信じてない癖に、大丈夫なようにお祈りする。精神科の看護師が数人病棟を飛び出して行く。応援に行くのかな?みんなが無事で、助かりますように。俺はまたお祈りをする。俺にはなにもできないけど。


看護師が走り出た後に続いて、俺は素早く病棟を抜け出す。病院のパーキングの建物。俺はずっとここの屋上に上がりたかった。ここなら、俺の頭から飛び出して行った綺麗な色達を確実に捕まえることができる。なんて綺麗な色達!全ての色が明解に世の中の謎を解き明かして行く。今まで俺が疑問に感じていた事柄が全部ここで明らかにされる。なんだ、こんな簡単なことだったんだ!どうして今までこんなことが分からなかったの?


屋上のフェンスを乗り越えてそこに座る。いつ脱いだのか全然覚えてないけど、俺は全く衣服を着けていない。世界があんまり素晴らし過ぎて、俺には服は必要ない。解き明かされた謎達が、色ごとの背に乗って宇宙へ飛んで行くのが見える。なんて綺麗なの!俺は立ち上がる。そしてビルの屋上を1周する。


ここは都会だから星はほとんど見えない。空がこんなに晴れているのに。風が吹いて来て裸だから少し寒いような気がするけど、そんなことはどうでもいいほど、世界が素晴らしい。俺は自分のペニスに触る。さっきあんなヤツに触られなくてよかった。極彩色の矢が宇宙に向かって行き、それが宇宙で輪になってゴーゴーと音を立てて回る。


その素晴らしい音を聞いているうちに、朝になってしまった。さっき自分の手で1回イった俺のペニスがまた少し触られたがっている。ここから飛び上がる。俺は夢想する。そしたらきっとあの音を立てて鳴っている宇宙の渦と一体になれる。そうすればもうなにも悩むこともないし、全てのことが理解可能になる。そんな素晴らしいことはない。


その瞬間、後ろから力強い腕が俺の身体を掴む。

「なにすんだよ!邪魔すんなよ!」

俺は力の限り暴れて、ソイツを蹴ったり噛んだり、思い付くことは全部してやった。ソイツが俺の名前を叫ぶ。

「優夜(ゆうや)!こんなとこから落ちても死にゃあしないぞ!3階だから、せいぜい足折るくらいだから!落ちたかったら止めないからやってみろ!」

俺は俺の狂った頭で考えて、じゃあやってみようとして、でもよく考えたら俺は落ちようとしたんじゃない、宇宙と一体になろうとしたんだ。上に向かってジャンプする。そしたらまたソイツが俺のことを後から抱きしめる。

「やってみろ、って言ったじゃない!」

「ほんとにやるバカがいるか!」

宮崎という名の大柄な看護師。警備員が2人後ろに立っている。宮崎は俺のことを何年も前から知ってる。

「お前、ハイだろ?なんで夕べ俺達にちゃんと言わなかった?」

大きなバスタオルで俺のことをグルグル巻きにして、病棟に連行する。宇宙はまだ音を立てて回り、俺のことを呼んでいる。


『俺と彼の結婚式には天井から花をたくさん吊るすの』本編

https://note.mu/3685/n/n85ef2702fdad

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