長編小説『たったひとりの俺の男』 - エッチでハッピー!!✩★✩ゲイ要素の高いオリジナル小説✩★✩
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長編小説『たったひとりの俺の男』

R18



あらすじ/七音(なおと)は小さい頃から男の子の玩具には見向きもせず、女の子達と着せ替えごっこをして遊んでいた。30代になった今でも洋服が好きでファッションメーカーの営業をやっている。そのかたわら長身でハーフっぽい顔立ちの彼は、ファッションモデルとしても活躍している。七音には物心がつく前に別れた産みの母がいて、自分はどこの国の人間なのだろうか?という疑問を時折感じていた。

七音は高校の同級生だった清士(きよし)に長い間片想いをしていた。清士は早くに亡くなった父親の貿易会社を継いでいる。優柔不断な七音は遂に告白して、実は清士も七音が好きだったことを知る。七音と清士は失った年月を取り戻そうとセックスに励むうち、次第にお互いの身体に溺れていく。

ある日曜日ふたりが歩行者天国をハッピーに手をつないで歩いていると、新聞社のフォトグラファーに写真を撮らせてくれないかと頼まれる。ふたりは承知するが、それが次の日の新聞半ページにでかでかと載ってしまう。真面目な清士は責任を感じ、七音の両親、弟、伯父、ファッションメーカーの社長などに、「七音さんは私が絶対幸せにします。」と挨拶して回る。

しかし七音には本当の母がいる。清士は彼女を捜し、ふたりは新幹線に乗って母に会いに行き、感動の再会を果たす。

その頃から七音の身体が清士によって性的に開発され、七音はセックス中に快感のあまり失神するまでになり、病院通いするはめになる。そして七音は人々に「エロい。」と言われることが多くなり本人は思い悩むが、ヌード・モデルの仕事を何回かすることになり、それが雑誌の表紙を飾るなど、モデルとしての仕事が広がっていく。

あるメンズの雑誌に載った七音のヌード写真を観た清士は、この顔は誰かにイかされてる時の顔だ、と激怒。モデルエージェントの剣(けん)が呼ばれる。剣はあれは仕事だからやっただけだと弁解。その後ヌード撮影の時は過保護だと笑われながらも、清士が一緒に撮影現場に行くことになる。

世間に顔が知られて電車通勤が難しくなり、七音はファッションメーカーの仕事を辞めて清士と一緒に住み、清士の貿易会社を手伝うことになる。ところが七音はその仕事を通して知り合った洋書店の店長、雄貴(ゆうき)と激しい恋に落ちてしまう。

七音は清士に対する罪悪感から自殺未遂をしてしまう。七音は自殺願望がなくならず長い入院生活を送るが、清士の揺るぎない愛に支えられやがて仕事に復帰。

七音はある知名度の高い雑誌と専属契約をすることに成功するが、その雑誌のモデル、航青(こうせい)からストーカー行為を受け始める。七音とその雑誌の編集長は旧知の仲であり、編集長は、「七音には昔から人を狂気に駆り立てるものがある。」と警告する。

清士は、「七音のことは俺が絶対に守る。」と宣言。航青は逮捕され、七音はやはり清士が、たったひとりの自分の大切な男なんだな、と実感するのだった。




『たったひとりの俺の男』


1

「七音、お前昔からそういうとこあったぞ。自分では気付いてないかもしれないけど。そのもったいぶったところが、やや自己陶酔的というか。」

それほど意地悪な調子でもなく。

「七音、そのストロー噛んで破壊するのも、昔からの癖だよな。」

それほど嫌みな調子でもなく。見てみると確かに自分は、アイスコーヒーのストローを無意識のうちにほどんど破壊しつつあった。

「自己陶酔、ってこともあったかもしれないけど、これは違う。」

「ちゃんと言えよ、この際。お前が呼んだんだから、なにか用があるんだろ?」

「いいよ、もう。俺のことなんか気にすんな。」

「こんなとこまで呼んどいて、それはないだろう?」

昔と変わらない笑顔で俺を見る。ヤバいな、わっと高校三年間のつらい想い出がよみがえる。片想いの想い出。それを絶たないと俺は先に進めない、とカッコよく考えてみたが、「先に進む」って、どっちに向かってどう進むことなのか、それも具体的に全く分かってない。

「清士。」

この名前を呼ぶだけでメチャメチャ感傷的になるのに、本人を前にして上手く平静を保つには、やっぱり感情を全て殺すしかないのか?そんなことできるとは自分でも思ってないけど。それとも冗談だって笑うべきなのか?そんなことできるとは自分でも思ってないけど。なんだかんだ自分は、「先に進む」という言葉に執着してる。

「清士、礼治覚えてんだろ?サッカー部だった。」

「礼治ね、覚えてる。」

「俺と付き合いたいって。だから。」

「だから?」

このなんとも思ってないみたいな、「だから?」に傷付くというより、どっちかというと安心するような気持にもなった、と言いたいところだけど、やっぱりそれは嘘で、内心俺はすっかりショックでうろたえてしまった。だから黙ってしまったんだが、それはあんまりよくない選択だ、と分かっていたけど、まあ選択の余地がなかったっていうのが、現実。しょうがない。ちょっと頑張って先に進まないと。あ、またこの言葉が出てきた。

「礼治いいヤツじゃん。なにやってんの、あいつ今?」

答えるのが少し遅れる。まあ、これはしょうがない、と自分に弁解する。

「どこで会ったの?」

ここで一発頑張らないと。

「先に進まないと。」

「なに?」

「だから、先に進まないと。」

「それ主語もないし、意味なさないぜ。」

「でもそれが、今一番大事なことだから。」

ちょっと恥ずかしかったんで、早口で言ってみた。

「お前のそのポンポン思考が飛ぶの慣れてるつもりだけど。それはちょっとおかしいぞ。」

普通の人だったら呆れたりとか、怒ったりとかするところで、心配してくれたり、笑って見過ごしてくれたり、そういうところが俺の清士が好きなところかも、とかいうのも全然嘘で、実は俺は清士の身体が好きなだけで、一度も寝たことないのに、それって変だよな。今日も若い男が着るような細身のスーツを着こなして、そういうのが好きな俺の股間に挑戦してくる。

「礼治、なんで今頃お前のこと好きだって?」

「妹がとうとう嫁に行ったんで、周りにカムアウトしまくってるんだって。でも、みんなそんなのとっくに気付いてたから、誰もびっくりしないんだって。」

「あ、だから今頃なんだ。妹いくつで嫁に行ったんだって?」

「三十五だって。」

「俺達より二個下か。随分長いこと待ったな、お前に告るの。」

「俺がたまたまあいつの店の常連だってこともあって、言いやすかったんじゃないかな。」

「なんの店?」

「友達と一緒に居酒屋やってんの。駅の近くだよ、俺達の地元の。」

「俺、実はサッカー部、結構妄想だったな。水泳部の水着もいいんだけど、やっぱ俺、サッカー部の太ももだな。」

これにはなんとリアクトしていいのか分からなかったので、しばらく黙っておいた。

「じゃあ、礼治のことはどう思ってた?」

なんでこんなこと聞くんだ、俺?

「礼治ね、悪くなかった。」

その悪くなかった、というのは寝てみて思ったのか、それとも?

「先に進まないと。」

「だからなにそれ?」

「俺、どうしても・・・」

「なにその深いため息。俺なんかお前にしたか?」

「した。」と言いたいのはやまやまだけど。

「なんでそうやって俺のこと睨むの?」

そんなつもりはないけど。

「黙ってるんだったら飯食いに行こうぜ、酒の旨いとこ。」

言いたいんだけど、言うのが怖い。

2

「もうここまできたらお前の言うこと黙って聞くから、お前が喋れ。」

「え、だからあれだよ、その・・・だから、礼治が俺と付き合いたいって言うから、もしかしたら、じゃあ。あ、でも俺、礼治と付き合うつもりは・・・分からない俺、礼治のこと好きだったことないし、でも別に付き合うのはいいけど、でも。そうそう、俺これしないと先に進めないし。先に進むって、でも、どういうこと?ゴメンね俺いつも酔ってもいないのに、なんでこう意味ないこと喋れんの?」

ここで俺が永遠に黙ってしまったので、清士が、

「今の作戦は上手くいかなかったな。じゃあ今度は俺が質問するから、お前が答えろ。」

「分かった、やってみる。」

「お前、礼治にはなんて言ったの?」

「なにも言ってない。」

「でもお前さっき礼治と付き合うのは構わないって。」

「さっきのは嘘。礼治と付き合うつもりはない。」

「へえ。ほんとうに?」

「そうやって聞かれると正直よく分からない。」

「ふーん。いつ返事すんの?」

「さっきのは嘘。実はもう返事した。」

「そうなんだ。なんて?」

「聞いてみないと分からないって。」

「誰に、なにを?」

「誰かに、なにかを。」

「誰か他に好きなヤツがいて、そいつに聞いてみてからじゃなと分からない、だよな、普通に考えれば。」

「そうかな?」

「そうだろ?」

「じゃ、そうかもしれない。」

「両方と付き合っちゃえばいいじゃん。」

「それは絶対無理。」

「じゃあ俺、礼治と付き合おうかな。今でもあんな感じ?」

「うん、あんな感じ。カッコいいよ。」

「あのサッカー部の太ももと毎日寝られんだったら、悪くないよな。太もも今でもあんな感じ?」

「うん、あんな感じ。」

「ケツも?」

「うん。」

「じゃ、ちょっと電話番号教えて。俺ちょっとあの辺に用あるし。」

「いや、それはちょっと。」

「なんで?礼治とは付き合わないって言っただろ?」

「でも。」

「そんなに礼治のこと好きなんだったら、今電話してちゃんと言えば?」

「でも聞いてみないと分かんない、って言っちゃったし。」

「だから誰に?」

ここでまた俺が永遠に黙ったんで、清士はなんかのゲームを始めて、俺は黙ってビールを飲んでいる。しかし不幸なことに俺は酒が強いので、酔った勢いというのができない。あ、でも、もしかしたら酔った勢いの振りならできるかもしれない。でもそんな高度なワザが自分にできるわけがない。でもこのまま一生、清士になにも言わないで死んでいくの、俺って?

「七音な、お前、顔可愛いし、どんだけでもモテんだろ?礼治でも誰でもちょっと好きなヤツいたらバンバン、セックスしちゃえばいいんだよ。考え過ぎないでさ。」

「俺、ちゃんと付き合いたいタイプだから。」

「お前、昔から周りにお前のこと好きなヤツいたのに、全然気付かなかったもんな。」

「え、誰とか?」

「誰かとか。」

「誰?」

清士はそこで謎の沈黙で、沈黙は俺の得意技で他のヤツにかけられたことのないワザだったから、完璧うろたえて、え、俺のこと好きだったヤツ、誰?と考えてクラスの端から端まで思い浮かべてみたけど、さっぱりだし。

「七音は、モノも予想よりでかくて太くて、形もいやらしくて、おまけにケツの締まりも最高だって。」

「誰がそんなこと?」

「お前とヤったヤツが言ってた。お前のその煮え切らない喋りでさえ、そいつ好きだって言ってた。」

「そんなこと言われたことないけどな。」

「それにお前の長くて、きれいで、エロい形の足を愛撫してると必ず発情してしまうって。」

「そんな風に俺の足触ったヤツいないけどな。」

「あと乳首の感度がよくて、色も形もエロくて最高だって。」

「乳首の感度?それはほんとかもしれない。」

「そしてお前のちょっと厚めの可愛い唇をいつどこで見ても自分のモノをぶち込みたくなるって。それからお前を裸にして抱き締めて首の根っこのとこに噛み付いてお前が叫ぶのを聞きたいって。お前のモノを激しくたたせて亀頭の溝を舌の先でなぞってオスの汁がたくさん出てくるまでいたぶりたいって。それから俺の口の中のお前のモノを快感でお前が叫ぶまで舌でなめまくってそして俺の手で上下に動かしたいって。それからお前をうつ伏せにしてよく盛り上がったケツの両方の盛り上がりを舐めて最後にお前のアヌスを周りを舌で虐めてお前が叫んで入れてくれって言うまでじらしてやっとお前が入れてくれって涙を流して俺に懇願してそれでもまだ俺はお前を焦らしてやっと俺がお前に入れた時お前の中はもう我慢で湿りまくって俺のことを待っててお前のケツは俺がイくまで俺のペニスをしっかりつかんで俺は出す時も入れる時もお前のケツで絞められて俺が気が遠くなってそれで俺がイく時俺はお前のケツの上に出した自分のモノを見て世界で一番高い所に登った気分になってそこでやっと俺はお前にキスすることが許されて息ができないような激しいキスでそれは生きるか死ぬかのキスでもしかして俺はお前を殺してしまわないと俺がお前に殺されてしまうんじゃないかって。だから、お前には近付けなかった。ゴメン。」

「え、じゃあ昔俺のこと好きだったっていうのは?」

「俺。」

「じゃあ俺の足触ると発情するっていうのは?」

「俺の妄想」

「じゃあ俺の乳首の感度がいいっていうのは?」

「俺の想像。でもそれ当ったよな。」

「俺の煮え切らない喋りまで好きだというのは?」

「俺。でも今日俺のこと呼び出した理由は言えよな。」

「分かった。」

「高校ぐらいの時って、すごい好きなヤツいても妄想が広がるから、お前のこと本当のお前なのか、それとも俺の作り上げた妄想なのか、全然区別つかなくて、好きとか言うなんて俺、考えもしなかった。」

「俺もそんな感じだったのかもしれない。好きなんだけど相手に言うなんて、それはまた違う次元の問題だった。片想いだと思ってたし。片想いって、それはそれでつらかったのに。」

「お前誰に片想いなんてしてたの?」

ここで言ってしまえばよかったんだけど。どっかから俺の沈黙の神様が降りて来て、俺は黙ってしまった。

「七音、俺達これだけ時間無駄にしたんだから。昔、俺ほんとにお前のこと殺すんじゃないかと思うほど好きだったから、なにも言えなかった。今だったらそんなクレージーな愛し方しないでお前と一緒にいられる自信がある。」

「俺は分からない。俺は愛される幸せより、不幸が好きなのかもしれない。」

「それが理由だったのか?俺のこと好きだけど、昔も今も好きだって言えない理由。不幸が好きなの?俺が目の前にいるのに?」

「なにも考えずに清士の手を取って歩いて行けたらいいと思う。また何年も思って生きていくんだったら。」

「じゃあ、そんなのすぐにすっかり忘れるくらい、今晩いいセックスしよう。そして明日もあさっても一緒にいよう。」

3

それ聞いた時自分にも幸せになる権利があるのかな、って信じられる気がしたんだよな。人気のない裏通りで俺達キスしたんだけど、これが初めてのキスなんだな、って思ったら変な感じだった。清士も同じこと言ってた。こんなに長い間好きで初めてキスして。俺の方が背が高いから、清士は俺のことちょっと壁に押し付ける感じでキスした。それは別に舌とか入れないキスだったんだけど、十分卑猥なキスだった。清士の住まいは男臭いマンションで、料理したあとのないキッチンとか、モノがないから散らかってないだけの部屋とか。清士は俺の服を脱がしてベッドに寝かせてくれたんだけど、自分は服を脱ぎもしない。俺はかなりビール飲んでたし少し眠くなって目を閉じていたら、清士がまた通りかかって、今度は少し舌を入れたキスをしてくれた。それは舌を入れたにしてはあんまり卑猥じゃなくて、ドライなキスだった。その時、

「なにしてんの?」

って、聞いたら、

「色々。」

と答える。俺みたいな優柔不断なヤツの方が、多分いざとなったら度胸いいのかもしれないな、と思ったりしながら、ベッドの中でそこらにあった本を読んでいた。それは車関係の本らしかったけど、なんかミスター・フォードがどうやって車を作り始めたとか、そういう話しだが、英文だったのでよく分からない。写真だけ見ていると、また清士が現れて、

「寒くないか?」

「寒いからこっちに来いよ。」

こうとなったらなぜか何でも言えてしまう不思議な俺の能力。なんでも言えるしなんでもできる俺で、全裸のままトイレに行ってみたりとかしてみた。その時に清士がなにをしてるかチラッと見てみたけど、なんか紙に書いているみたい。清士は親のあとを継いで、なんかよく分からないけど貿易の仕事をしている。でも土曜日の夜にやらないといけない仕事があるとは思えないし。ここらへんで清士が俺のこと生きるか死ぬかの恋愛だって言ってたそれが、本当なんじゃないかと思い始めて。どうなるんだろ?もし俺達がセックスしたら、意外となんでもないのかな?それとも。

「ちょっと水飲みたい。」

また全裸でリビングに出て行った。

「ここ冷蔵庫二つあるんだ。」

「最初のヤツが壊れたと思ってもう一つ買ったら、よみがえったの。」

「へー、不思議。」

それでペリエ、俺の好きな、を出してもらってワザとちょっと、たちそうくらいの俺のモノを見えるようにしてみたりとかしたんだけど、ワザとらしかったかもしれない。

「清士、何時に寝るの?」

「分からない。」

こっちだって三十代の健康な男なんだから、そこに、手の届くところに、男がいてヤりたいに決まってんじゃん、なんとかしろよ、と思っているうちに少しバカバカしくなったし、眠くなったから寝てしまった。

4

起きるとすっかり朝で、外で鳥が鳴いている。清士は?と見るとキッチンでなにかをしている。

「なにしてんの?」

彼の後ろから声をかける。夕べと違って俺は服はちゃんと着ている。

「コーヒー。」

「ありがとう。」

「よく寝てた。」

「お前どこで寝てたの?」

「カウチ。」

「いいけど。俺、帰らないと。」

「帰らなくていいよ。なんか用事でもあんの?」

「熱帯魚にエサをやらないと。」

「今やらないとヤバイのか?」

「二日や三日大丈夫だけど。」

「じゃ、帰らなくていいだろ。」

「まあ。」

「朝ご飯、トーストくらいだけど。」

「いいね。なんでカウチに寝てたの?」

わー、いざとなったらなんでも言えるんだ、俺。

「一緒に寝ればよかったのに、俺だけさみしくベッドに寝かして。」

すごい俺、ここまで言える。

「悪かった。」

「あやまんなくていいけどさ。なんでだろうと思って。」

なんで、って聞いてんのに、答えろよお前、と言いたいところを、

「俺と一緒に寝るのいやだった?」

「そんなことない。」

「ふーん。高そうなジャムだね、これ。」

「うちで輸入してるやつ。」

「俺ほんとに帰らなくていいんだったら帰んないよ。」

「いいよ。」

と言いながらあまり嬉しそうではないような。これはほんとに言ってみた。

「あんまり嬉しそうじゃない。」

「そんなことない。」

「そんなこと言うんなら俺にキスしてみて。」

これは考える前に口から出た。キスしてくれたんだけど、それは単純に嬉しくなりそうな、気持のこもったキスだった。で、俺ちょっと安心した。

「夕べ清士が来ないから考えてたんだけど、俺みたいな健康な身体の男が、他の男がいるのを知りながら、なんで一人で寝ないといけないんだろうな、って。」

清士がそこで思いっ切り吹き出して、

「お前なんで昨日はああで、今日はなんでそこまで言えるんだ?」

「知らない。今言わないとあとでヤバいと思ったから。」

そこでついでに言ってしまおうと思ったから、

「俺のこと長い間妄想してきたから、現実の俺にがっかりしたとか。」

「それは全然ない、むしろ逆。」

「逆って?」

「お前のこと寝てる時に見てたんだけど。」

「俺が寝てる時に見てたの?」

「そう、ゴメンね。」

「あやまらなくていいけど。で、なんて思ったの?」

「重いこと言って嫌われたくないんだけど。」

前置きが長い男だな、自分のこと棚に上げればだけど。

「言って。」

「うん。」

「夕べ見てて俺のこと。」

「こいつのためだったら死ねるな、って。重い?」

「実際そういう誰かのために死ぬとか、そういうことって起こらないし。」

だからなにが言いたいの、俺は?

「もし起こったらの話し。」

「じゃあそういう重いこと考えてたら、俺とヤれなくなった?」

わー、それ言っちゃうの、俺。

「そうじゃない。」

だからなんだって?早く言えよ、だよな。

「なんて言うか、お前の寝てるとこ見ててこのまま乱したくないって。」

「それね、いいんだけど、じゃ俺どうなんの?」

って、自分で言ってて吹き出しちゃって、なんでそこまで言えるの、俺。

「ゴメン、俺の方がよっぽど本物の清士を前にして、なにも言えなくなる筈なのに、なんでなんでも言えるの、俺?」

手に入ったら俺のモノだからかな?だから遠慮しないでなんでも言えるの?俺ってそういうヤツ?

「まあ、いいや。夕べの話しはやめて、今日なにすんの俺達?」

と俺が言った瞬間、清士が立ち上がって座ってた俺の顔の90度の角度でキスしてきて、ちょっと前にしてくれたキスどころじゃなくて、マジで舌入れてきて、そんなことされたらヤバいじゃん、俺のモンたつじゃんとかうろたえていたら、清士は俺の手を引いてベッド・ルームに連れて行く。そこでまたキスされて、折角着たばっかりの服を脱がされ、でも今回は清士も脱いで、俺、ずっと清士の身体が好きだったし、意外と外から細身だけど、脱いだらそれほどでもなくて、締まってるとこが締まってるから、あんな若者向けのスーツ着てカッコいいの?でも清士の身体、裸で見ただけで、俺、身体中興奮してきて、試しに触って抱いてみたら、感動?動揺?なに?裸の清士を抱いていると、涙が出そうになるけど、でも、もちろん俺の性欲の方がずっと強いから、泣いてる場合じゃなくて、そしたら清士が俺の乳首にキスしてきたから、少しクスってなってしまった。そしたら清士もちょっと笑って、

「ほんとに乳首の感度いいの?俺、適当に言ったのに。」

「うん、ほんと。キスして。手で触ってもすごく感じる。」

ここで一瞬うちの熱帯魚のこと思い出して、なんでか知らないけど。やっぱりエサやりに帰った方がよかったかな。でも清士とセックスできるんだったらそんなことどうでもいいや、とは思わなかったけど、ヤツらも許してくれるだろう、とそこまで考えてると清士が、

「なに考えてんの?」

とか、少し責めるような調子で言うから、正直に言ってもよかったんだけど、それも変だな、って思ったから、

「なんで?」

「誰か他のヤツのこと考えてるみたい。」

他のヤツと言えば他のヤツだけど、って思ったら笑いが止まらなくなって、で、

「ゴメン、俺あんまり朝とかしないから。」

という変な言い訳を編み出して、そしたら清士が、

「いいよ、もう・・・俺の予想ぴったりだよな。お前の、予想よりでかくて太くて、形もいやらしくて、俺が言った通りだ。ということは、ケツの締まりがいいっていうのもほんとだな。」

それからはもう笑ってなかったんだけど、清士、セックス上手だった。誰に教わったんだろ、と思ったらちょっと、ムッとしたけど、上手いに越したことはないからそれは言わなかった。俺のケツの丁度いい角度に入れてくれて、俺の感じるところも上手に探ってくれて、俺のケツに入れる前も、俺のケツを可愛いと言ってキスして頬ずりまでしてくれて、そんなことしてくれたヤツいなかったから、ちょっとびっくりしたけど、ハッピーな気持ちになった。俺は清士の肩が好きという発見をした。清士の肩を後ろから抱き締めて、そして肩にキスしながら、

「俺、清士の肩好き。」

「変なの、なんで?」

「なんか安心する。広い肩で。」

「清士は俺のどこが好きなの?」

「どこっていう区別がない。お前の全部が好き。」

とかってあんまりナイスなこと言うから、少し俺もしんみりって、泣きたくはないんだけど、真面目でもないし、シリアス?って同じことか、って思ったら、折角しんみりしたのにまた変になって笑い始めて。

「クレージーだよ、お前は・・・朝してこれだけ笑えるんだったら、夜セックスしたらどうなるんだろう?」

「それはね、清士といると高校時代に戻っちゃうから、箸が転んでもおかしいって。」

「あれは女の子だろ?」

「どっちでもいいんじゃない?」

「七音、俺高校ん時、いつもお前を目で追ってたけど、気付かなかった?」

「全然。俺も清士のこと目で追ってたけど、気付かなかった?」

「お互いに目で追ってたら目が合うはずだよな。」

「不思議と、合わなかったね。」

5

それから俺達またすごい、エッチな、いやらしい、これも同じことか?セックスをいっぱいして、少し疲れてランチを食べに外に出たけど、オフィス街で日曜にランチやってるとこもないから、わざわざ電車に乗ってここまで来た。清士の手に触りたい、キスもしたい。不便な世の中だな。家族連れが多いからなにもできない。

「街中でキスとかできない分、我慢して、そのあとうちでするのっていいかもね。」

そしたら清士がいきなり、

「お前って俺の前どんなヤツとヤってたの?」

「なんで?」

「お前とヤってるとなにも知らない、誰も触ったことないヤツとヤってるような気になる。」

「へえ。」

ヤることはヤってましたけど。

「それは清士とヤる前に記憶をリセットしたから。」

これは嘘だな。

「俺さっきイく時、なんかの風景が見えたんだけど。」

「俺もそんな気がした。」

って、これはほんと。清士が、

「え、どんな風景?」

って、真面目に聞くから、俺は思い出して、

「学校の、運動場の少し霧が出てるような、朝の。」

「あ、俺も。」

清士が俺の目を覗き込むようにして、そしたら俺が、

「あ、そういう風に見られるとなぜか股間に響く。」

「俺達、今朝あそこが痛くなるくらいしたんだぞ。」

「あ、それ関係ない。じゃあ俺のことそんな目で見ないで。」

「俺の目ってそんな影響力があんのか。」

「俺にはね。」

「俺達って同じ風景見てたんだな。」

って、話しが戻って、清士がしんみり言うから、俺も少しそれは不思議だなって思ったから、

「不思議だよな。」

そしたら清士が、家族連れが多くてもしかしたら見えるかもしれないのに、俺の手をテーブルの下で少し強めに握ってきて、でも意外とこっちの方を見てる人がいないから、俺達はずっと手を握ったままでいた。でも、そのままで清士がまたさっきみたいに俺の目を覗き込むから、やめてくれって、マジで言いたかったんだけど、俺が目をそらせばいいだけの話しだよな、と気が付いて目をそらしたら、まだ家族連れがたくさんいたのに、俺の顎を持って自分の目の方に俺の目を向かせて、こんなとこでまさかキスしないよな、と思ったら清士は俺の目に向かって、

「俺、お前のことを愛してる。」

って、ちょっと湿ったような声で言うから、びっくりしたんだけど。目に向かって言うって変な言い方だけど、ほんとにそういう感じ、イメージだけかもしれないけど、そんな感じがした。で、俺は、

「俺、愛してる、ってどういう感情なのかよく分からない。」

俺にしてはよく考えられた返事をしたつもりだったんだけど、清士はなんとなく俺も清士のこと愛してる、って言ってくれる、って思ってたみたいで、って言うか、そんなこと分からないけど、人の内心なんて。清士が、

「でも、お前、俺と一生一緒にいてくれる気持ちがあるのか?」

正直よく分からなかったんで、

「それはよく分からない。」

また俺にしては正直な答え方をしておいた。なぜかこの時また俺の熱帯魚のことが頭に浮かんで、清士に、

「ちょっとゴメンね。」

って、断ってから、弟に電話したら運よく家にいて、

「お前さー、ちょっと熱帯魚の温度見てくれない?」

「大丈夫、二十六度、完璧。」

賢い弟を持ってよかった、って思ってたら、また弟が、

「兄ちゃんどこでセックスしてんの?」

「清士んとこ。俺の初恋の人。」

「よかったね、兄ちゃん。」

だって。そして電話切ったら、清士が、

「お前まだ実家なんだよな。」

「ファッション業界、給料安いから。」

「俺ってお前の初恋の人なの?」

「そうだよ。それより前に好きだった人もいたけど、ほんとに好きになったの清士だもん。弟が、よかったね、って言ってた。」

「でも今は俺のこと愛してるかどうか分からないんだ。」

って、こだわって聞くから、ちょっと俺も考えていると、

「考えないと分からない?」

って、言うから、また少し考えて、

「でも俺、愛してるって分かった時はほんとに分かるから、そしたら言うから。」

これは俺にしては正直な気持ちだったから、清士も分かってくれたみたいで、

「分かった。」

って、言ってくれた。

6

ランチが終わって表通りに出たら、そこは歩行者天国で、ほんとは清士と手を繋いで歩きたかったけど、家族連れがな、って思って、しょうがないから、先に行く清士の袖のところを少しだけつまんで歩いていたら、清士が、

「なにしてんの?」

「ほんとは手繋ぎたいけどできないから。」

ほんとにほんとのこと言ったら、あろうことか、清士が俺の手を握ってきて、えー、マジかよ、って俺としては焦ったけど、でもすごく嬉しくて、なんか俺達って家族連れにもなじんでる?ってそれは嘘で、でもみんな自分のことで忙しいみたいで、そんなにジロジロ見てる人はいなかった、ってそれも嘘で、でも、こう言っちゃあなんだけど、俺達二人共いい男だし、そんなにいやらしくはないんじゃないかとか、色々考えてたんだけど、でもいいや、この状況を楽しもうと思って、清士が俺が手繋ぎたい、って言ったらこんなヤバいところで手繋いでくれて、すごく嬉しくて、

「清士、俺、清士のこと愛してる。」

って、言ってしまった。清士は笑っていた。俺は、

「ほんとだよ。」

って、言ったんだけど、清士は、

「ついさっき、分からない、って言ってたのに。」

「あんときはよく分かんなかったから。」

「やっぱり、お前はクレージーだな。」

俺の手をさらに強く握ってくれて、そしたらなんと、立派なプロ・カメラを持った人が現れて、メジャーな新聞社の名刺をくれて、その人が俺達の写真撮ってもいいか?って聞いてくるから、俺がなんで?って聞き返すと、

「今日のこの歩行者天国の様子を明日の新聞に載せるんだけど、君達が手繋いでるところ、私はすごく、今、だな、って思うんです。」

嫌な感じの人じゃなかったし、俺メインの仕事の他にモデルもしてたから写真写りに自信あったし、清士に聞いたら、お前次第だって言ってくれたから、ポーズとかとってあげて、名前とか聞かれて、それでその時は終わったんだけど。

7

次の日なんでか知らないけど弟がわざわざ起こしに来て、

「父ちゃんが呼んでるよ。」

父ちゃんが新聞見せてくれて、えっ、って焦ったら、なんと俺と清士の写真が新聞半ページに写ってて、

「撮られたのは知ってたけど、こんなに大きく載るとは思わなかった。」

って、弁解したんだけど、意外にも父ちゃんはなにも言わなくて、不気味だったんだけど、後から母に聞いたら、父ちゃんは、

「やっぱりモデルとかやってると写真写りがいいな。」

って、それしか言ってなかったって。不気味だな。いつもかなり辛口で、俺に、目立つことをするな、って言ってきてたのに。清士は横顔だしサングラスかけてたから、多分なんてことなかったんだろうけど、俺は服飾メーカーの営業だから、営業行く先々でからかわれた。あと俺のモデル・エージェンシーはあんまりいい顔しなかったけど、今回は大目にみる、次回は許可取ってからやれ、とか言われた。あんなにでかく載るとは思わなかったから、って、どこ行っても弁解してた。そしたら礼治が電話くれて、

「清士と上手くいったのも俺のお陰だから一発ぐらいヤらせろ。でもそれは冗談だから二人で飲みに来い。」

って言ってくれた。

「じゃあ、あいつの太ももでも拝みに行くか。」

と清士も言ってくれて、ついでに家に寄ってお前の熱帯魚見に行こう、ってほんとか嘘か分かんないことを言ってた。

8

そしたらほんとに礼治の店に行く前に清士が家に寄ってくれて、熱帯魚見たり弟と喋ったりしてるうちに父ちゃんが帰って来て、清士を見て、

「ああ、あの新聞の。」

って、言うから、え、なんでそんなにすぐ分かんのって、俺はちょっとびっくりした。そしたら清士が、

「私は七音さんと高校の同級生で、真剣に付き合い始めたのは最近ですが、私は七音さんと生涯を共にして、きっと彼を幸せにします。」

とかいう、いきなりフォーマルな挨拶をするんで、自分の予測をはるかに上回った出来事に頭が凍ってしまった。それで父ちゃんが晩酌を始めて、清士が車だからって断ったらそれ以上は勧めなくて、

「こいつは幼稚園に入る前から、女の子と着せ替えごっこで、デパートに連れて行けば女の子のドレス売り場から離れない。小学校に上がっても髪を短く切ったら泣き叫ぶ。俺はもうあの辺からすっかり諦めて、この子は他の人達とは違う人生を歩いて行くんだろうと。君、名前を聞いてなかった。」

「すいません、私、水上清士と申します。」

そしたら父ちゃんは意外にも、

「水上さんってあの貿易の仕事をされてた。」

とか言うから、清士もちょっと驚いて、

「父をご存知ですか?」

「亡くなられて、まだお若いのに。」

「はい。あのあと私が会社を継ぎまして。あの、父とはどこで?」

「俺達の釣りのグループで。そのあと飲みに行ったり。君の母上は?」

「元気です。母は姉と一緒にあの頃と同じ家に住んでます。」

そして俺達はまた二階に上がって、弟と喋ったリとか、熱帯魚見たりとか、それから帰って来た母に紹介したりとかがあって、それから礼治の居酒屋に行く道で、俺が、

「ただ俺の熱帯魚見に来たんだな、って思ってたら、急に父ちゃんにあらたまって挨拶するからびっくりした。」

「あんなに新聞に出たから、なんか言っといた方がいいかな、って思って。」

「うん、ありがとう。」

清士は今までで一番暖かいキスをしてくれた。いつもと同じ清士なのに、なんだかドキドキした。

9

礼治の店に着いて、俺が、

「清士はね、水泳部の水着よりサッカー部の太ももの方が好きなんだって。」

礼治はなんか祭り風の制服みたいなヤツで足出てたから、清士は無事礼治の太ももを拝むことができて、触ったりもしてたから、ちょっとムッとしてたら清士が、

「ちょっとくらい、いいだろう?」

「よくない。」

そしたら清士が、

「なんでお前、父親は父ちゃんなのに、母親が母なの?」

って、聞くから、

「あのね、二度目の母なの。弟は二人とも今の母の子で、俺だけ違うの、で、俺中学二年で母が来た時、グレようかな、と思ったんだけど、母に初めて会った時、俺の手を握って、ちょっとその時ドキッとしたんだけど、こんなハンサムな息子を持てて嬉しいわー、なんて結構ノンキに言われて。で、すぐ上の弟が生まれて、俺もう可愛くてしょうがなかったから、母と二人で子育てして、グレるのも忘れて。」

「上の弟さんはどうしてるの?」

って、急に俺の家族に興味を持つから、いつも絶対聞かないのに、へえ、って思いながら、

「上のはね俺より独立心があるから、もう社会人だし、一人で住んでる。二十三だよ、もう。」

「じゃ、お前の生みの母親はどうしたの?」

俺ちょっと黙っちゃって、そしたら、

「いいよ、変なこと聞いたんだったらゴメンな。」

って、言ってくれて、

「俺よく分かんないけど、父ちゃんとは離婚したらしい。俺、子供の時はいつも俺が悪かったのかな、って思ってて、今思うとそんなわけないんだけど。で、しばらく叔母さんが面倒みてくれてたり、で、今の母が来てくれたの。明るい人でしょ?ほんとの母みたい、今は。」

そしたら清士が、

「お前の方が俺なんかよりよっぽど苦労してんだな。」

って、言ってくれて。

「でもね、大変だったのは今の母が来てくれるまでで、俺なんか中学でも高校でも、入る前にしっかり調べて髪伸ばしていいとこしか行かなかったから、俺、高校でも髪長かったでしょ?で、興味持つことも女みたいだったから、ドラマとかも二人で好きな俳優とか出てたらキャー、キャー言って、ま、仕事今でも服屋だし、だから母とは母と娘みたい、今でも。」

そしたら清士が意外な質問をしてきて、普段あんまりプライベートなこと聞かない清士だけど、きっといっぺんに聞いちゃおうと思ってんのかな、とか俺は思って、

「お前今なんで髪、普通に短いの?」

「これはね、俺のモデル会社との契約の一部なの。変でしょ、普通に短い方が仕事来るらしくて。ビジネス・スーツとかよく着るし。清士、俺の出てる雑誌とか見てないでしょ。今度見せるから、あ、オンラインでも見れるよ、今見たい?」

10

「え、これお前?」

「そんなに違う?」

そしたら突然礼治が背後から来て、なになにって来るから、これ俺だよって写真見せたら、

「別に普通にお前じゃん。」

とか礼治は言ってんのに、清士は他の写真も見て、まだショック受けてるから、なに、それって、そんなに俺ってビジネス・スーツ着るとショックなほど違うのかな、って思ったから、清士に、

「なにがそんなに違うの?」

って聞いたら、

「え、全然違う。」

「でも俺、お洋服好きで女の子みたいなとこあるけど、オネエ、オネエはしてないでしょ、言葉も男だし。じゃあ俺のモデル屋のプロフィール写真見せるから。年齢は少しごまかしてるからね。」

ワザとヒゲ伸ばしてメチャ男っぽくして、黒の革ジャン着てたりするヤツとかもあって、その写真撮った時、俺自身は抵抗あんまなかったし、まあその人達はプロだからって。でもそういうの自分じゃないみたいで、すごく楽しかったし。その革ジャンのヤツは自分でいうのもアレだけど、メチャイケメン。で、見せたら清士は絶句して固まってるけど、礼治に見せたら、

「別に普通にお前がヒゲ伸ばして革ジャン着てるだけじゃん。」

って、礼治は言ってんのに。俺が清士に、

「じゃあ、清士はどっちが好きなの?」

「どっちが好きって聞かれると、あ、でも。」

また固まっちゃって、で、俺が、

「清士ってそんなに俺のこと女の子みたいって思ってた?」

って、試しに聞いてみたら、なぜか礼治が割って入って、

「清士、サッカー部のすね毛の生えた太もも好きなんだったら、ヒゲ生えた七音だって好きなはずじゃん。」

そしたら意外にも清士が語り始めて、

「どっちの七音も好きだけど、ただその二つには隔たりがある、と思う。」

そしたら、俺が急に思い出して、

「こないだ革ジャンのカタログの仕事が入って、ヒゲは生やしてないんだけど、それメチャカッコいいから見せるね。」

見せたら清士はまた固まっちゃったんで、試しに、

「じゃあ、その男な俺と、今の俺の俺とだったら、どっちと寝たい?」

って、聞いてみたんだけど、なんにも言わないから、俺が、

「もしも、清士が、男な俺が好きなんだったら、俺、別にバリッと男なカッコしてもいいぜ。全然問題ないし、革ジャンもらったし、メーカーさんから。その時にね、その革ジャン屋の社長が俺のこと気に入ったから、ホテルに行こうとか言ってきて、参った。」

そしたらなんでか知らないけどまた礼治が背後にいて、

「で、どうしたの?」

「タイプじゃないから断った。」

「じゃあ、タイプだったらどうすんの?」

「いやあ、どうだろ?でもそん時まだ清士と付き合ってなかったし。」

「じゃ今までに、お前がモデルやってて、そういうことあった?」

清士が隣にいるからあんまり変なことも言えないから、

「いやあ、俺、高校出てすぐぐらいの頃からやってるから。」

なんか全然関係ないこと言ってごまかそうと思ったのに、そこでまた礼治が、

「あ、そんな頃からやってるんだ、で、一緒にホテルに行こうとか言われたらどうしてたの?」

って、聞くから、もう、いいや、っと思って、

「あ、でもね、それで真面目に付き合った人もいるからね。すごい年上の人だったけど、真面目だったし。」

そしたら意外にも清士が、

「え、どのくらい年上だったの?」

って、真剣に聞くから、本当は、自分が二十才で、相手が四十才だったんだけど、それってあまりにもあんまりだから、どうしようかなって思ったんだけど、もう、いいや、って思って、本当のことを言ってしまったら、今度は、礼治が、

「え、マジ、それすごいわ。二十才違うと親子?」

「でもあの時はね、ほんとに好きだった。」

「その人今どうしてんの?」

とか聞くから、さすがに俺も、

「礼治さ、俺にうらみある?」

「あるかもしれない。でもその人今どうしてんの、今でも会ったりするの?」

別に答えなくってもよかったんだけど、もう、いいや、っと思って、

「それが今の社長。会うけどそういう関係じゃないよ。社長、他に好きな人いるし。」

そしたら今度は清士が、ややショックっぽく、

「え、今働いてる服飾メーカーの社長?」

もう、いいや、っと思って、

「そう、俺がそこの服着て雑誌に載って、で付き合って、会社に入れてもらって。」

そしたら礼治が、

「でもその社長もさ、そんな年離れた子にどうやってせまったの?」

俺は、わー、そこまで聞く?って思ったんだけど、清士聞いてんのに、でも、もう、いいや、っと思って、

「あのね、俺そん時すごい振られ方して泣いてたの、撮影終わったあとね、で、社長がどうしたの、って。」

そしたら礼治が今度は、

「なに、すごい振られ方って?」

「だから泣く程の振られ方ですよ。」

マジでムッとしたらやっと礼治はどこか行ったんだけど、そしたら今度は清士が、

「泣く程の振られ方って?」

清士にはそんなにムッとした言い方はできなかったから、

「それはね、俺は付き合ってたつもりだったんだけど、向こうはそうじゃなかったらしくて、そいつのとこに行ったら、他の男がいて、一緒にヤろうぜって。」

「その社長、どうしたの、って聞いてきて、それからどうなったの?」

「でもそれ四捨五入するともう二十年も前の話しだからね。」

って、断ってから、

「で、ご飯食べに連れてってくれて、色々大人の手管でヤられたわけですよ。」

さすがに俺も、

「もうそれ以上は言いません。もう十分でしょ。俺の過去話し。」

「じゃあ、最後にひとつだけ。」

「なに?」

って、やや不機嫌に聞くと、清士は、

「その色々大人の手管でヤられたって?」

って、すごく真面目に聞くから、俺は、

「なんでそんなことが知りたいの?」

そしたら、意外な言葉が帰って来て、

「だって、もしかしたらそのうち、挨拶することもあるかもしれないだろ?」

って、大真面目に言うんで、

「逆にそんなこと知らない方がよくない?」

って、言ってみたんだけど、全然効力がなくて、

「いや、知っておきたい。」

とか言うから、俺も、もう、いいや、っと思って、

「で、ご飯食べに連れてってもらって、なんで泣いてるのか聞いてもらって、大人のアドバイスをしてもらって。」

俺がそこで一息ついてると、その間も惜しいみたいな顔をするから、

「それで俺も泣き疲れてボーっとしてて、少しお酒も飲まされてて、なんかカクテルみたいな感じで、その時はそんなに強くないように思われて、実はあとで来るみたいなヤツ、多分。」

また俺がそこで一息をついてると、また清士が真剣に待っているので、しょうがないから、

「で、その連れて行かれたバーっていうのがすごい、いいホテルの最上階にあって、ネオンとかロマンチックな感じで。」

で、また切るとうるさいから、すぐ続けて、

「そしたら俺の好きな感じのキスをしてきて。」

「え、好きな感じのキスって?」

すごい好奇心。でも全然笑ってなくて真面目なの、あくまで。

「あのね、こないだ清士がしてくれたのにある、実は。」

そしたら、すかさず、って言うか俺が言い終わる前に、

「え、どんなの?」

「あのね、こういうの。」

って、清士で実演してたら、向こうの方に酔払ってるオヤジ団体がいて、拍手されてしまったんだけど、まあそれはいいとして、ちなみに、顔90度にキスされんの、俺好きなの。

「え、他には?好きな感じのキスって。」

なんかまたあのオヤジ団体に拍手されそうと思ったけど、もう、いいや、っと思って、実演したんだけど、それは顔90度キスの応用で、顔をね、両手ではさんで持って、自分の方を向かせて、それで90度キスをするの。その時はオヤジ達はたまたま誰も見てなかったみたいで、よかった。そしたらまた清士が、

「え、それから?」

「二十年も前の話しだよ。」

そしたら清士は、意外なことを聞いてきて、

「じゃあ、今はどんなキスが好きなの?」

俺は結構ずっと笑ってんだけど、清士は真面目で、あくまで。そしたら俺が、

「さっきの二つは今でもすごく好き。清士やってくれたし。そうそう、あのさっきのヤツの応用編で、顎のとこ持って、自分の方に向かして、90度キスするの。」

「なんでそれが好きなの?」

知るか、そんなこと、って思ったんだけど、惚れた弱みであんまり変なことも言いたくなかったから、

「ほら、自分がなんか他のことしててとか、他のとこ見てて、それで誰かに俺の方を向けよ、みたいにキスされると、ドキっとする。」

「じゃあ、それを社長にやられたんだ。」

俺はもう笑ってるんだけど、清士は真剣で、

「そう。」

俺にしては短い返事で。

「でもね、社長のはね、またそれの応用編だった。」

「えっ?」

って、俺のと同じくらい短いセンテンスで。そこで、なんでか知らないけど礼治が久し振りに帰って来て、もう、いいや、っと思って、

「社長のはね、90度で来るんだけど、キスしてる間に、自分の唇で俺の唇をちょっと開けるの。で、時々、ほんの5㎜くらい舌を入れてくるの。でもね、5㎜っていうところが巧妙だったの、社長。5㎜とかだと、いやらしくないし、若干二十才の子を落とすには丁度いい感じ。」

ここで、礼治が、

「まだ社長の話ししてんの?」

で、俺が、

「今、丁度終わった。」

って、俺が言ってんのに、清士が、

「で、それからどうなったの?」

もう勘弁してよ。

「で、それから、俺とか庶民の子供だから、そんな高いホテルなんて泊まったことないじゃん。それでその舌がだんだん深く入って来るようになって。」

そしたら今度は令士が、

「で、それから?」

って、感じで乗り出して来るから、もう、いいや、っと思って、

「で、それから、なんか気付かないうちに服とか全部脱がされて。」

そしたらまた礼治が、

「気付かないうちにどうやって服脱がすの?」

とか、やや高度な質問をしてきて、俺が、

「それがね、また巧妙なの。トップを脱がす時は、ベッドに座らして、一生懸命キスしてますって感じにしといて、少しずつね。で、たまたま夏だったからそんなに脱がす服はなくて。」

そしたら今度は、清士が、

「え、じゃあボトムは?」

「俺ね、短いの履いてたの、それで下を脱がす時は、上を脱がす時とちょっとテクニックが違うの。」

そしたら今度は礼治が、

「へー。」

って、意外と短い感想を述べて、そしてまた俺が、

「下を気付かれずに脱がす時は、どうやるかと言うと、あのね、ここが巧妙なんだけど、ベッドに寝かせといて、足の出てる部分をまずいい感じで愛撫するの。で、だんだん上の方に来て、で、お尻の辺に来ると、身体をね、回転させるの、で、いい感じでまたお尻を愛撫するの、パンツの上からだよ、で、ちょっとずつ股間に手が行くんだけど、ここが巧妙なんだけど、うつ伏せで股間に触るの。で、ちょっとヤバいな、って思わせる前に、一気に脱がされるの。」

で、ここで清士が、

「四捨五入して二十年も前のことをこんなに細かく覚えてるわけない。社長と最後にヤったのいつなんだ?」

とか、なんか、いちゃもん的な動議を出して来るから、俺は、

「それはね、俺がファッション・ビジネスの学校を卒業して、あの会社に入った時点で終わった。そこはね、社長も心得た人だから。その辺は俺、尊敬してる。でも俺と社長は今でも仲いいから、お互いに恋愛感情は全然ないけど、時々あの時は巧妙だったよね、とか今でも謎解きというか、あれはああやったんだよ、とかあの手口を社長が俺に話すから分かるの。」

11

ここでやっと俺の過去に対する興味に一息ついた。で、俺が清士に、

「じゃあ今度、バリッと男らしいカッコの時にヤろうぜ。」

って、提案してやったら、清士は、困惑した顔をしているから、あ、そうだここで反撃に出よう思って、

「清士はバリッと男らしいヤツとヤってたことあんの?」

って、聞いてやったら、そしたら礼治が、

「あん時のあいつがそうだったじゃない。」

って、言い出して、

「あん時のあいつって?」

って、俺が突っ込んで、清士は黙ってて、そしたら礼治が、

「清士はな、一時ハード・コアだったもんな。相手もそんなヤツだったよな。」

で、俺が、

「えっ。」

って、別に俺、全然大した好奇心もなかったんだけど、なんかリアクションあった方が会話として面白いかな、と思って。で、俺が、

「絶対やろうぜ、俺が髪オールバックで、バリッと革ジャン、折角もらったし、あれ着て清士をベッドに押し倒してキス責めにして、それでヤろうぜ。」

そしたら清士が、困惑して頬杖をついて黙ってしまうから、俺がそれはどっちなんだ、ヤりたいのか、どうなのか?まあ、俺もそんなコスプレ趣味もないから、そんな面倒なこと本気でやるつもりもなかったんだけど、そしたら、突然清士が、

「俺、この感じ嫌いじゃない。」

オンライン・ファッション・マガジンの、俺が流行の感じのまあ、ビジネス・スーツと、カジュアル・スーツの中間くらいの感じのスーツを着て、髪は頭の上のとこだけ立ててる感じで、ちょっと高そうなヴィトンのバッグを持ってる写真。なるほどね。このくらいだったら無理しないでできるね。俺としても、この感じで清士に押し倒されたら燃えそう。っと思ったから、折角だから清士に言おうと思って、

「この感じだったら無理しないでできるし、俺としても、この感じで清士に押し倒されたら燃えそう。」

って伝えておいた。だってこれ髪型とちょっとカッコいいスーツがあればすぐできるし。そしたら清士は、

「燃える?燃えるっていいよな、いい響き。」

気に入っていただいて、よかった。そしたら清士が、

「それいつやる?」

って、興奮して聞いてきて、俺は、

「いつでもいいよ。」

12

しばらく俺も忙しかったのもあって、あれから全然清士とセックスしてなかったから、次は燃えるな、って感じで、試しに練習で営業に回る時にあんな感じのスーツに髪型して行ったら、結構好評で、さわやかな男と言われて、毎日練習してたら結構身に付いてきて、やった、今度はこれで清士を押し倒そうと、準備万端だった。なんでか知らないけど、清士はオフィス街に住んでて、きっとなにか仕事に都合のいいことでもあるんだろうけど、それがよく分からない。そんなわけで週末行っても周りは休みのとこが多いから、まず他でデートしようということにして、で、それを着ると俺がさわやかだと評判の上質のシルクウールのスーツを着て、それは取引先のかなり高級な服屋でタダ同然くらいで買わせてもらったヤツで、例の上のとこだけ少し立てた髪で、俺、モデル・エージェンシーのプロフィールでは年は犯罪に近いくらいごまかしてるけど、身長はマジで187㎝ある。で、例の写真撮られたホコ天の、あの辺を歩いていたら、おかしなことに、今んとこよりメジャーなエージェンシーにスカウトされて、興味あったから話しを聞いたら、今のとこと、そのメジャーなとこは、社長どうしが昔一緒に起業して、今の社長の方がそこから独立したんだって。その人が、俺にまかせろ、お前はなにもするな、みたいなことをカッコよく言うから、その時はそれで別れた。

13

それから待ち合わせのコーヒー屋に着いたらすごく込んでたけど、清士はしっかりテーブルも確保して座っていた。そこは他のチェーン店みたいなとこより高いとこだったから、家族連れなんかいなくて、清士は目も悪くないし、俺の方を見てるのに視界に入らないみたいだったから、俺、清士の真横に立って、

「ねえ、お兄さん、俺とデートしてくれない?」

って、言うと、ハッとして俺の方を見て、なんか恥ずかしそうに微笑んで俺のことを見上げてた。

「なに、俺のこと初めて会ったみたいに?」

って、からかったら、清士はまだなにも言わないで微笑んでて、忙しくて注文も取りに来ないのをいいことに、清士は俺の顎を引き寄せて、俺の好きな90度角度のキスをしてくれた。そこで俺の方も少し恥ずかしいな、っていう気持ちでボーっとなってたら、やっと清士が、

「可愛いよ。」

って、言ってくれた。

「俺っていつもどんなカッコしてんだろ?」

って、考えてたら、清士が、

「そこらにいるスケートボード・キッズみたいなカッコだよ。」

って、笑ってて、で、もう注文も取りに来そうもないから、俺達はそこを出て歩いていると、今度は俺達は手は繋いでなかったけど、またこないだと同じ新聞社の人がカメラを持ってキョロキョロしてて、俺が声をかけたら、向こうも気付いて、

「あの、こないだはすいません、俺もモデル・エージェンシーと契約あるってこと言ってなくて、なんかトラブったんでしょう、ちょっと聞いたんですけど。」

そしたら、清士が、なんのことか聞きたがるから、

「うちの社長、結局ここの新聞社から金取ったらしくて、そういうのって法律的にどうか俺も知らないけど、まあこっちもあんなに大きく載るって知らなかったから、でも貴方にも言わなくてすいません。」

って、謝ったら、その人は、

「実は私もフリーランスで、写真渡したらあとは新聞社でやるから、お金取られた話しも今初めて聞いて。」

そしたらその人が、

「今日も二人共カッコいいですね、どうです?また写真撮りますか?」

ってカメラを向けてきたんで、二人で、さよならを言いながら逃げ出した。で、俺が、

「さっきね、あっちの方で、大分メジャーなモデル・エージェンシーにスカウトされた。うちの社長せこいから移籍しようかな。」

って、言ったら、なぜか清士はホコ天の真ん中の、一番立ち止まったら人が嫌がるようなとこで立ち止まって、俺を少し抱き寄せて、俺の方が背が高いからちょっと背伸びをして、頬っぺたと髪の生え際みたいな変なところにキスしてくれた。

14

それからやっぱり少し高いから家族連れがいないレストランに行って、俺が何気なくテーブルに手を置いていたら、清士がなにも言わずにその俺の手の上に自分の手を重ねて、ちょっとだけ俺の手を愛撫する的な感じで、そこで俺が、

「それヤバイ、股間に来そう。」

って、正直な感想を述べたのに、清士は全然やめる気配がなくて、そしたら清士の手が俺の袖の中に入って来て、なんか言ってもやめそうもないし、そしたら俺が清士の目をじっと見ながら、清士の手を少し爪で引っかいてやった。もちろん、あとが残るほどのもんじゃないけど、でも少し痛めで、その俺の袖に侵入するのを阻止するに十分な感じで、そしたら清士はなぜか片目をつぶって惜しそうな顔をして俺を見て、

「ね、そのスーツ俺に脱がさせて。」

とか、変なことを言い出すので、俺が笑ってたら、清士が、

「ね、その髪どうやって立たせてんの?」

とか、また変な質問をしてくるから、

「これね、俺もよく知らないんだけど、ウォーター・ポマード。」

「なんでよく知らないの?」

って、変な突っ込みを入れてきて、

「それね、ヘアメイクさんにもらったの。俺の髪質はそれがいいからって。」

そしたらさらに、変な突っ込みを入れてきて、

「そんなのくれるのか?」

「あの人達、メーカーさんからサンプルもらうし、自分で使わないモノはくれるよ、時々だけど。」

そしたらまた、変な突っ込みを入れてきて、

「よく知らなくてもラベル見ればわかるだろ?」

「それはね、全部英文だから。」

で、さらに突っ込みを入れられないうちに、

「俺、清士みたいに英語できないし。」

って、言っといた。

15

俺が小声で、

「なんかね、さっきからあのカップルの男の方が俺のことチラチラ見てる。」

って、言わない方がよかったのかもだけど、俺もちょっとムカついたし、人のことあんな風に見んなよ、って思ったし。そしたら清士が、

「それ確かか?」

「うん、だんだん遠慮もなくなってきて、じーっと見てる。」

「女連れてんだろ?」

「うん。」

ここで清士は振り返ってそいつの方を見て、いきなり席を立ったと思うと、その男となにか静かに話をしている。何気なく、俺がもしかしてあの男の死んだネコに似てるとか言ってんだったら笑うよな、とか考えてると、また俺の悪い癖で笑いが止まらなくなりそうだったんだけど、そこは必死にがまんしていたら、意外と早く清士が戻って来て、そしたらなんとそのカップルがマジの口論になってて、俺が、

「え、なに、どうしたの?」

って焦って聞くと、清士が、

「俺の連れが、貴方に見られてるって言うんだけど、って言ったら、女の方がいきなり怒り出したから、俺もそれしか言わないで逃げて来た。」

で、女の方は外に走り出て、男の方は後を追いもせず、こっちに来て、俺に、

「すいません、失礼なことして。」

って、真面目な顔して謝ってんのが、なんとなく不憫だな、って思ったりしたし、近くで見たら思ったよりすごい若い子だな、って思ったから、俺は、

「俺、てっきり俺が君の死んだネコとかに似てるんじゃないか、って。」

そしたら、その子も清士まで笑い出して、で、その子が、外国で育ったから日本語より英語が得意だって言ってたみたいで、清士がしばらくその子と英語で喋ってて、もう一回俺に丁寧に、

「すいませんでした。」

って言って、店を出て行った。それで、あの子最初っから自分はゲイだから付き合えない、ってさっきの女に言ってたんだって、で、やっぱりいつも男見るんで、向こうが頭にきてああなったらしい、で男は俺を見てて、もう中途半端はやめてゲイとして生きていくことにしました、だって。俺が、

「このカッコしてると世間様に波風を立てるのかな?」

って、言うと、清士は、

「それは自意識過剰だ。」

だって。そうかな?

16

それからいよいよ清士のマンションに向かって行って、近付くほどに俺達口数が少なくなって、清士のとこに着いたら二人共もう全然なにも言わなくなって、なんにも言わないで、なんにもしないで、でも入った入口のとこでもうキスを始めて、これから清士とセックスするんだな、って思ったら、わっ、て感動して、そしたら清士が俺のスーツのジャケットを脱がして、そしたらまたさっきのキスを最初から初めて、清士も自分の着てたものを半分くらい脱いで、一回俺のことをしっかり抱いてくれて、俺の手を取ってベッド・ルームに連れて行こうとしたんだけど俺が嫌がって、清士がどうしたの?って、優しく聞いてくれて、俺が清士と一緒にいるだけで切なくて泣きそう、って、泣いてなかったけど泣きそうな顔をしていたら、90度と言うより多分60度くらいのキスをしてくれて、少し落ち着くまでお茶でも飲むか?って聞いてくれて、清士のとこで輸入してるバラとかの花びらの入ったお茶を入れてくれて、その時はもう俺は泣いてて、清士が頭なででくれたりキスしてくれたり色々してくれて、やっと泣き止んで、ベッドの中でもメチャメチャ清士に甘えて、清士は俺のことこの上なく大事なモノみたいな感じで抱いてくれて、俺は彼の胸に思いっ切り抱き付いて、俺の好きな清士の部分の背中に腕を回して、そしたら俺の身体のどっかに清士のペニスが当たって、それがすごくたってて、俺が清士のすごくたってるね、って言って、清士は俺の手を持って自分のモノに当てて、俺はその愛おしいモノを俺の口で味わって、清士の息が激しくなるのを聞きたくて、清士のモノの根元のとこをに少し強くにぎったまま亀頭を丸ごと俺の口に入れて、俺の唇と舌でいやらしい音をさせてなめまくって、そしたら清士がさっきのティーで俺の舌がまだ熱くて気持ちいいって、荒く息をしながら言ってくれて、そしたら清士が、じゃあ俺のもきっとまだ熱いからお前のヤってみるって、ヤってくれて、それは俺には刺激が強すぎて、俺がほとんど叫びそうになって、清士はよけいに俺のペニス全体を根元から先の一番感じるとこまでその熱い舌をはわせて、もう叫び声より泣き声みたいになっちゃって、それは結構恥ずかしくて、清士はセックス上手くて、俺がまだ清士の舌で泣かされてて、清士は中に入れて、って言ってくれて、そしたら清士の中も清士の熱い舌かそれよりもっと熱くて、また泣きそうになって、俺のペニスがしっかり根元まで清士の中に入るまで泣くのは待ってて、それで清士の中熱くてすごいって言ったら、じゃあ動かして、って言うからほんとに俺としては刺激が強すぎたんだけど、俺は清士ほどにはセックス上手じゃないから、清士の気持ちいいスポットがよく分からないでいると、清士が自分で動いでくれて、そこのところに俺のペニスの先のところとか、俺の太いところとかが当たるように腰を動かしてたら、清士は最初は気持ちいいよがり声を出してたんだけど、だんだんその声がしなくなってきて、もう感じなくなったのかなって思って、俺が自分のモノを出そうとしたら、だめだって言われて、また俺はさっきのをしたら、また清士はすごくいやらしい喘ぎ声を出してたんだけど、またそれが小さくなって、俺がもうイきそうって言ったら、やっと俺に清士の中から出してもいいって言ってくれて、そしたら清士が俺ん中に入れてもいいかって言うから、俺そんなことしたら、泣くか、叫ぶか、両方かだよ、って言ったんだけど、そしたら清士は黙って俺のケツに入れてきて、清士は俺の中よく知ってって、俺が泣き叫ぶスポットを最初から責めてきて、俺がほんとに泣き叫んでたら少しゆるくしてくれて、そしたら清士は、お前のケツなんでこんなにエロいの、ケツ見てるだけでイきそうになるって言うから、さっき少しゆるくしてくれたのにまた動きが激しくなって、どんどん俺の奥の方までそれ以上もう行けないのに奥まで入れてきて、そこで清士はイって、俺は覚えてないけど、清士が俺のモノをいじっているうちに、多分俺がイって、清士は自分がイっても、背を向けて寝ている俺のケツに自分のモノを押し付けてきて、それは短い時間みたいなんだけど、実際俺達、何時間もヤってて、俺はもう出すものは出したから寝てるのに、清士のペニスはま元気で、でも俺は寝てたら、結局、俺達また朝ヤって、それから清士が車で会社まで送ってくれた。別れる時、清士はなぜか俺のシャツのボタンを三つくらい開けて、そこの辺の俺の胸にキスしてくれて、またボタンをはめてくれた。俺が笑いながらなんでそこなの?って聞いたら、そこが一番俺の匂いのするとこなんだって。

17

営業部でずっと清士とのセックスの想い出に酔いしれてため息をついていたら、うるさいからあっちに行けと追い出されたんで、PCと資料持って空いてた会議室で仕事した。ま、当然大した仕事はできなかったけど。そしたら社長が入って来て、

「社長、部屋使うんならどきますよ。」

「いいよ、そこに座って。」

「はい、すいません。」

仕事をする振りを続けようとすると、社長が、

「あの新聞の彼、真面目に付き合ってんだろ?」

とか、意外な話題を振ってくるんで、その質問に答えるより先に、

「え、なんでですか?」

って、聞いてみた。

「真面目に付き合ってるんなら、ちゃんと紹介しろ。一緒に飯でも食いに行こう。」

「なんでですか、仲人でもしてくれるんですか?」

「じゃあ金曜日。」

勝手に決めて出て行った。清士が前に礼治の店で言ってた、社長に挨拶する機会、というのが意外に早くやってきた。

18

清士と俺は、超あらたまった料亭に連れて行かれた。綺麗な中庭があって、ライティングも凝っていた。俺が、

「社長、こんな高いとこ、いいんですか?」

周りをキョロキョロしていると、清士が名刺を出して、

「貴方のことは七音から色々聞いてます。」

ここで俺と清士まで笑い出してしまい、社長が、

「なんだ?」

って、変な顔をするから、清士が続けて、

「七音と俺は高校の同級生ですが、真剣に付き合い始めたのはつい最近で。」

という、父ちゃんに言ったのとほぼ同じフレーズだった。違うのは、所々に入る妙な笑いだ。社長が、また、

「なんだ?」

って、言うんで俺が説明すると、社長も、

「あれねー。」

って、言って、一緒に笑い始めた。で、社長が、

「あれはね、俺としてもよく考えられた手管だったんだよ。」

そしたら清士が、

「その手管は何人ぐらいの若者に試されたんですか?」

という、俺も知らなかった事実に迫る質問をして、それで社長が、

「まあ、45人かな。」

そしたら清士が、

「そのうちの何人が七音みたいに引っかかったんですか?」

という、また真実に迫る質問で切り返す。で、社長が、

「そりゃあ、百発百中ですよ。」

すると俺が、

「たった45人ぐらいで百発百中という言葉を使っていいんですか?」

そしたら清士が、

45人引っかけたら大したもんだろ。」

と、社長の肩を持つ。そしたら社長が俺に、

「お前んとこのご両親、さっさと二人にしてあげて、お前はこのジェントルマンと一緒に住めばいいじゃないか。」

って、言うから、俺は、

「社長ね、その変に英語混ぜるのやめないと、清士マジで英語できますよ。」

そしたら、清士が、

「親が貿易の仕事をしてて、跡を継がせようとして、英語やらせただけですよ。」

で、社長が、

「だから、今もその仕事されてるんですね。どんなモノを扱ってらっしゃるんですか?」

清士は、

「食品が多いですね。それが80%くらいで、本が10%」

そしたら俺が素朴な疑問を。

「英語の本を輸入して、誰が買うの?」

清士は、

「洋書屋さんってあるだろ、あれほとんどうちで輸入してるから、ま、シェアの問題。画集なんて昔は翻訳してまたヨーロッパで印刷して輸入してたこともあった。」

そしたら社長が、

「オンラインでモノが買えるようになって、大分仕事も変わったんじゃないか?」

清士は、

「実はうち海外のオンライン・ショッピングの仲介とか苦情処理とかやってて、その手数料が会社の売り上げのかなりの部分になりますよ、今。」

そしたら社長が、

「優秀なビジネス・マンだな。時代を読んでいる。よかったな、七音。これで俺も安心して・・・」

俺が、

「安心してなんなんですか?」

社長が、

「これでも俺、お前のこと親みたいに心配してたんだから。いいじゃないか、心配くらいさせてくれても。」

清士が、

「七音のことは心配いりません。俺がしっかり守ります。」

ここで俺は、わー、清士カッコいい、と思っていたら社長が、

「七音がほくそ笑んでいる。お前もこれで年貢の納め時だな。」

俺が、

「年貢の納め時なんて言うほど俺、遊んでませんし。社長と違って。」

そしたらなぜか清士が社長に、

「七音って今までどんなヤツと付き合ってたんですか?」

俺が、

「なんで今社長にそんな質問?俺、清士の過去の男についてもなにも知りませんけど。」

清士は、

「でも社長が一番お前の側にいたじゃないか。」

そしたら社長が、清士に、

「いや、七音の相手で君が心配するようなヤツはいなかったよ。ただ・・・」

俺が、

「社長、なにが、ただ・・・ですか?なんなんですか?」

社長が、

「ただ、チャラチャラしてんのは多かったな。」

俺が、

「今はね、チャラいって言うんですよ、それ。」

そしたら清士が、

「チャラいヤツ?」

って、まだ質問の答えを聞いていないことをアピールしつつ、

「チャラいヤツってどんなヤツですか?」

で、社長が、

「あれだろ、お前のモデルクラブのヤツ。まあ、俺が知ってる範囲だとな。」

そしたら俺が、

「どういう意味ですか、それって?俺、付き合うと長いからみんな社長に会ってますよ。」

19

その日は金曜だったんで、清士と新宿の二丁目を見物に行った。俺達どっちもここ数年行ってなかったから、面白いかな、っと思ったらそうでもなくて、手繋いで歩いても平気だし、通りでキスもできるから、それはいっぱいしたけど、変な女が増えててそれには辟易した。清士が昔、行ってたという店の前を通ったら、ほんとに礼治が言ったみたいに、本物のハード・コアより気持ソフトなところだった。俺はその時また爽やか系のスーツを着てて、髪もまた少し固めてて、清士は社長に会うからだかなんだか、黒いスーツを着てて、ネクタイまでしてた。俺が、

「ここさー、俺達入れるかな?」

「え、入りたいの?」

「面白そうじゃん。」

「まあ、追い出されやしないと思うけど。」

「入ろうぜ。」

って、俺が清士を引っ張って中に入ると、意外と年齢層が低くて、ていうか、俺が年取っただけか、とか考えながらテーブルに座って、観光客みたいに俺がキョロキョロしてたら、ちゃんと注文を取りに来て、ビールを飲んでると、清士の視線が泳いでいる。清士ってこういう感じの男が好きなの?俺も少し男達のスタイルとか研究しようと思って見てたけど、やっぱり俺はあんな風にはできないけど、全身黒くらいだったらできそうだな、って思って、黒のスーツに中まで黒はやだから、じゃ黒いスーツに中がグレーとかで織柄があったりして、って俺もファッション業界だから、色々頭の中でコーディネイトしていると、清士は、まあ音楽がうるさいってこともあったんだけど、黙って男達を見ている。で、俺は清士がこんなに俺以外の男を見てる場面に遭遇してないんで、ちょっと面白かったんだけど、

「清士はどの人が好み?」

って、音楽がうるさいから耳元で言ったら、俺のことを横目で、怪しげな目で見て、ペーパーナプキンに、あの腰にチェーン付けてるヤツって書いて、俺が、ふーんって面白くて笑っていたらまた怪しげな横目で俺のことを見て、で、そのチェーン付けてるヤツって若いんだけど、身体からムッとするようなエロい感じが出てて、セックス始めたら一晩中みたいな、知らないけどほんとのところは。で、俺が、エロいねって、その清士が書いた下のとこに書いて、そしたらなんかそのチェーンの男、清士の視線に気づいたのかなんか、清士のところに来て、なんか言ってるんだけど、とにかく音楽がうるさいから俺には全然聞こえなくて、でもその男はすぐどっかに行っちゃって、俺がシリアスに清士の方を横目でにらんだら、清士がまたペーパーナプキンになんか書いてて、で、俺は平静を保つためになにか考えようと思って、清士っていい万年筆持ってんな、ってことを考えてて、そしたら万年筆って使ったことないけど、結構にじむみたいでよく読めないし、それに清士の字も普段でも俺上手く読めないから、で、読んでるとさっきの男、清士に俺のことお前の男かって聞いて来たんだって、それは俺が気に入って言ったの?それとも清士を気に入って言ったの?って、難しかったけど書いたら、それは清士にも分からないって。そしたらなんか、清士がトイレに立ったスキにそのチェーン付けた若い男が俺に、俺とどっか行かない?って聞くから、ゴメンね、って言っといた。清士には言わなかったけど。考えたんだけど、俺って慎重なんだな、清士だって俺、高校ん時から知ってるもんな、社長が言ってたみたいに同じモデル・エージェンシーのヤツとか身元の分かるヤツとしか付き合ってないもんな。そしたら、その男トイレに行った。俺パニックで、多分あの男ほとんど誰にでも声かけてんのかな、とかでも清士もなかなか帰って来なくて、でもあれだけ社長とかに、七音のことは俺が守るとか言っといて、酔ってるわけでもないし、って考えてたらなんか脳の中の酸素が少なくなっていくような気がして、外に出たいなって思ったんだけど、それもなんか大人気ないなって思ったし、で清士とその男が一緒に出て来て、男の方はまた友達みたいなグループに紛れて、清士は俺をうながして表に出て、何を言うのかなって、待ってたんだけど、なにも言わないしそれでどうしようと思ったんだけど、なんかこっちから聞くのも悔しかったからなにも言わなかったんだけど。そしたら清士が、

「どうしたの?」

「なんで?」

「黙ってるから。」

そこで俺は泣きそうになって、いい年の男がって、俺しょっちゅう泣いてるけどそれは棚に上げて、

「清士はああいう子が好きなの?」

言うつもりはなかったんだけど、つい言っちゃって、そしたら清士は、

「あの男、お前のことを色々聞くから、聞いてどうするんだって、言ってやったんだけど、それでもしつこいから、俺はアイツの彼氏でなんかあったら俺は命がけでアイツのことを守るから、って言ってやった。それだけ。」

「なにを聞かれたの、俺のこと?」

「お前のこと誰って、俳優さん?モデルさん?ってそんな感じ。日本人なの?ハーフなの?背が高いねって。」

そこで俺、急に思い出して、

「俺、生みの母知らないから、自分のことも知らなくて、俺小さい時、目とかもっと茶色くて、今は黒いけど。」

って、不安そうに言ったら、

「いいよ。七音は七音で。」

清士が俺の頭なでてくれて、そん時、俺、別に母親のことなんて親戚の人どころか、父ちゃんに聞けば分かることなんだから、今度聞いてみよう、って思った。その日が金曜日で、土曜日も日曜日も清士と一緒で、俺なんか料理もできないし、なんにもできないのに、社長が言ったみたいに清士と暮らすのは難しいかな、って思ったんだけど、そう言えば上の弟が一人暮らしする時に、みそ汁の作り方とか、ドレッシングの作り方まで母が教えてたの側で聞いてたんだけど、自分は興味がないから全然覚えてない。でももし料理ってそんな短時間で覚えられるんだったら覚えたいな、って思った。

20

すっかり忘れた頃に、例の俺のことスカウトした、今のとこよりずっとメジャーなモデル・エージェンシーの人から電話がかかってきて、その人の名前は、剣で、あの時会った人で、社長に会わせたいから来てって言われて、もう仕事終わってからだったから大分遅かったんだけど、いいから来てって言われて行ったら、社長とその人と、もう一人なにする人か知らないけどオフィスにいて、俺、その日も外回りの営業だったからスーツ着てて、考えてみたら清士が俺のこのカッコが好きだ、って言った時からトラブルに巻き込まれるよな、って考えてると、なんか急にマジな面接みたいになってて、しょっちゅう仕事のオーディションはあるから慣れてたけど、笑顔で営業スマイル。そうだ、俺、仕事も営業スマイルだし。でも今日のはマジのヤツだから、一応ほんとの年とかは言っておいて、身長はほんとでって。で、日本人か?っていう質問があったから、今までは日本人です、って言ってたんだけど、よく考えてみたら知らないんだよな、と思って、どっちにしろ正直に物事言えないような会社に入ってもしょうがないし、って思ったんで、その日本人かっていう質問には、親が小さい時離婚して母親のこと知らないから、分からない。でもそんなに大事なことなら今、父に電話して聞いてもいいですよ、って言ったら、それはそのうち教えてくれればいいって。なんでそんなこと聞くのかっていうと、プロフィールで日本人とその他の人と分けてあるし、ギャラが違うとこもあるからって。そしたら俺が、じゃあ日本人じゃないって言っといた方がいいですよねって、冗談言ったり。質問があるか、って聞くから、うちの社長とはなにか話しされたんですか、って聞いたら、こっちの社長は、

「君んとこの社長とは長い付き合いだし、君にとってプラスになるように決めよう、ってことになって。」

あのせこい社長にしては気の利いたこと言うなって思って、で他の質問だけど、

「僕もういい年ですけど、仕事あるんですか?」

そこの会社の方が大きいんだからそんなこと聞くの失礼だったかな、って。そしたら、今レギュラーなのは?って聞かれて、雑誌がひとつと、服飾メーカーの宣材の写真って、でもそれは自分が働いてる会社だからって、ちゃんと正直に言っておいて、そしたらその仕事はフルタイムか、って聞かれてそうですって。営業だから自由になる部分もありますって。そしたら、レギュラーがそれだけだったらうちの方が仕事は多いよって。そしたら俺が、今、年五つもサバ読んでますけど、って言ったら、まあうちでもそれでいこう、って言われて、え、じゃあ俺ってこっちに移籍決定なのかな、なんて思ったけど聞かなかった。

21

家に帰ったら、父ちゃんがいたんで、いつものように隣に座って晩酌のおともをしつつ、母が帰って来ると聞きづらいから早く聞こうと思って、

「今日、別のもっと大きいモデルの会社で、俺が日本人かハーフかって聞かれたんだけど、俺ってなに?」

ってストレートに聞いてみたら、父ちゃんは意外とあっさり、

「本人はなんか混ざってるって言ってたけど、俺も確かめたこともないから分からんけど、聞くとしたら、お前の母親の兄弟っていうのがいるから聞きに行くといい。」

「いきなり行っても変じゃない?」

「お前の母親のすぐ上の兄が俺とかの釣り仲間だから、清士さんのお父さんのこともその人よく知ってるし、一緒に行ってくれば。」

って、結構軽いノリだった。上手くいきそうな感じ。で、その月の内にそのお兄さんっていう人に会ってもらうことになって、清士も興味あるとか言って、俺なんかもうそんな話しすっかり風化してたから、面接で聞かれる、なんてことでもなかったら、聞きに行くこともなかったろうし。だから清士の方がよっぽどエキサイトしてて、そこはちょっと田舎の方で、清士のカッコいいグレーのBMWに乗って会いに行った。そしたらその人、やっぱりすごく背が高くて、顔もなんて言うか、日本人離れした顔だった。大きな和室でコタツがあって、その人のこと、伯父さんって呼んで、なんかちょっとくすぐったいなって思われてるかな、って。伯父さんは、

「人間って五十くらいになると自分のルーツが知りたくなるんだって、もっと若い時に人に言われたんだけど、ほんとにそうだった。それで自分も調べてみたんだけど、結論から言うと、やっぱりよく分からない。もし日本人以外の人が先祖にいるとしたら、五代以上前の人だって。すごい昔の話し。今、DNAとかあるじゃない、あれで調べてみようか、って思ったりしてるとこ。」

俺が、

「僕の本当の母親って生きてるんですか?」

って、聞いたら、

「なんだ、それも知らないのか。」

伯父さん気さくでよく喋る人だから、聞きやすくて聞いた。

「生きてるさ。」

清士が、

「え、そうなんですか。」

って、俺の代わりに驚いてくれて、

「会いたいなら、向こうと連絡取ってあげるよ。」

って、言ってくれたんだけど、俺が、

「でも、自分は今の母がほんとうの母だって思ってるから。」

って、言ってしまった。清士が、

「ほんとうにいいのか?俺の親父みたいに早死にしたらもう会えないぞ。」

とか言い出して、そしたら伯父さんが、

「あいつは身体は丈夫だからそういうことはないと思うけど。」

そしたら清士が、

「あの、その方は再婚されてるんですか?」

「再婚してる。子供もいる。孫もいるよ。」

清士がまた、

「どこに住んでらっしゃるんですか?」

伯父さんが、

「遠い。日本海側。」

清士が、

「七音に会いたいとかそういうのないんですか?」

そしたら伯父さんが、

「七音が小さい頃、別れてすぐくらいの時は、なんで一緒に出てこなかったんだろうって、泣いてた。でも離婚とかで、もう神経も擦り減ってしまって。今はどうだろう?」

そしたら、清士が、

「七音にこんな珍しい字を当てるくらいだから、なんか芸術関係の方ですか?」

伯父さんは、

「それはね、自分がピアノを習いたかったんだけど、できなかったからって。」

22

それから食事を出されたりとか、色々で、伯父さんが、

「君は、子供の頃はお人形さんばっかり好きで、男の子のおもちゃ持ってっても見向きもしないで。」

今更だったけど、

「すいません。」

で、清士に、

「水上さん、俺はかなり親しかったよ。君にも何度も会ったことあるよ。」

清士が、

「そうですか。俺が高校の時に亡くなって。」

伯父さんが、

「お葬式でも会ってる。」

で、ここで、清士が、

「こないだ七音のお父さんにも挨拶して来たんですけど、僕は七音と生涯を共にして、絶対幸せにします。」

って、伯父さんは三回くらい聞き返してたけど、やっと意味が分かってくれて、

「よかったな、七音。」

って、言ってくれて、清士には、

「水上さんの息子さんが付いててくださるなら、俺達も安心だ。」

って、言って、それから、

「やっぱり小さい時お人形さんごっこをしてると、こうなるのかな?」

だって。

23

そのあと、また礼治の店に行って、店も週末で忙しいのに、必ず俺達の会話を聞いていて、変なところで相槌は打つし、聞いてないのに意見は言うし、で、俺が、

「じゃあ、俺って結局日本人なんだ。なーんだ。」

って、言うと、礼治が、

「え、なに、なに人だと思ってたの?」

清士が、

DNAでほんとに分かるのかな?」

って、またiPhoneで検索したりとか、俺が、

「礼治あれからいい男見付けた?」

って、聞くと、それには答えず、なぜか厨房に消えた。清士と、じゃあ礼治がうっとうしくなったら、その話を振ればいいんだね、と、傾向と対策をして、で、清士が、

「お前の周りでまだ挨拶してない人っているかな?」

俺は清士って挨拶するの好きだよな、って謎の気持ちになりながら、考えてみたけど、

「俺の上の弟は?今度会おうよ。」

それより、俺もっと大事なこと思い出して、

「あれっ、じゃあ俺は?誰かに挨拶しなくていいの?」

「俺ん家の方は、正月にでも連れてくよ。」

だって。ま、いいけど。

「ここで清士が俺のスーツ着てる写真が好きだって言って、あれからあのカッコのせいで、いいこともあったけど、トラブルの方が多いよね。」

そしたらもう礼治が帰って来てて、なんだあの傾向と対策にはあんまり長い効力がないな、と思いつつ、礼治が、

「トラブルってなに?」

「なんかね、カップルを別れさせたりとか。」

もちろん礼治はそんなくらいのことでは我慢できず、根掘り葉掘り聞いてきたけど、それから、

「バーでなぜか若い子にからまれたりとか。」

で、俺まだ清士に言ってなかったけど、

「俺ね、結局モデル・エージェンシー移籍することになって、その第一弾の仕事が、まあ、いいやできたら見せるから。」

って、言ったんだけど、めんどくさかったから。そしたら今度は二人で突っ込んできて、礼治が、

「そこまで言ったんだったら言えよ。」

で、俺が、

「ローカルな仕事なんだけど、なんかリゾートのポスターで、俺がお父さん役で、あとお母さん役の人と、小さい女の子がいて、俺が肩車とかしてんの。」

礼治が、

「俺達には縁の無い風景だな。」

と、吐き捨てるように言って、また厨房に消えて行って、清士が黙ってるからどうしたのかな、と思って見たら固まってるから、俺が、

「え、どうしたの?」

「お父さん役で小さい女の子を肩車?」

「え、なんで?楽しい仕事だったよ。その子可愛くて、ずっと一緒に遊んでた。でね、俺の衣装もパステル・イエローのVネックのセーターでいい感じだった。ギャラもよかったし。」

で、清士がまだ固まってるから、

「今度の土曜日もまたそんなヤツだよ。空気清浄器の宣伝のパンフレットとポスター用で、また俺お父さん役で、子供が何人かと、あと犬が出るんだって。あー、楽しみ。」

清士がまだ固まってるから、

「俺、今のエージェンシーでも年齢詐欺してるから、今32で、そのくらいの年だと、お父さん役が多いんだって。俺、子供好きだから楽しいし。テレビのCMとか出たいな。」

そしたら礼治が知らない間に帰って来てて、

「俺、絶対それ見に行く。」

そしたら、固まってた清士が久しぶりに氷解してて、

「じゃ、俺も行く」

「関係者以外立ち入り禁止ですよ。」

そしたら礼治が、

「じゃ、俺、お前の父兄で参加するよ。」

そしたら清士が、

「俺も。」

24

俺達は弟に会いに行くことにして、弟の住んでる近くのファミレスに行った。俺達は、

「俺達、ファミレス似合わねーなー。」

とか言いながらも、弟と会うのかなり久しぶりだったから嬉しくて、弟の方が少し遅れたから来るまで二人で楽しくメニューを見ていた。そしたら弟が来て、何カ月も会ってなかったから気のせいかもしれないけど、前より男っぽくなった。弟は、

「兄ちゃん遅くなってゴメンね、もう一人来るから。」

って、言うんで、え、もう一人って誰?って、思ってしばし固まったんだけど、話しているうちになんか忘れたわけじゃないけど、まあ、いいや的になって、そこへほんとにもう一人来たからびっくりした。で、そのうち会話が、俺、対、その子で、清士、対、弟みたいな感じになって、その子はまあ、俺も人のこと言えないけど、よく喋る子で、

「お兄さん達の載った新聞見ましたよ。」

俺が、

「えー、なんで分かったの?」

その子が、

「なんか陸斗のお父さんが電話してきたらしいですよ。」

「父ちゃん、そんなことするんだなー。家では、俺がモデルとかやってるから写真写りがいいなー、しか言わなかったって、母が言ってた。」

「え、なんでお兄さんは父ちゃんが父ちゃんで、お母さんが母なんですか?」

って、初対面にしては鋭い指摘で、

「なんか習慣で。」

って、初対面の人だったし、弟がどこまで言ってるのか分からないから、詳しくは言わなかった。そしたらその子が、清士の言うところのスケートボード・キッズなカッコをしてて、俺もそんなカッコをしてて、清士に、俺だけじゃないでしょ、って言ったら、問題はお前がいい年で、その子は若いからいいんだ、だって。そこでちょっと心外だったから、その子に、

「ねえ、今いくつ?」

「あと二週間で十八。」

「え、そんなに若いの?」

って、俺が言ったのはいいけど、そうなるとこの子と弟の接点ってなんだろ?と思って、そこまでは弟の大学の後輩で、ただ便乗してランチ食べに来ただけのノリもありうるかな、と思ったんだけど、なんせ弟のこと生まれてから、大学に行くんで、家出てった時まで毎日一緒だったのに、全くその気も見せなかったのに、って、こっちも根掘り葉掘り向こうがなんにも言わないのに聞くのもやだな、って思ったから、

「そう言えば名前なに?」

って、その子が遅れてバタバタしてたんで言うのも聞くのも忘れてたから、俺が聞くと、海って書いて、かい、だって。そしたら海が、

「俺達半年前から一緒に住んでるんですけど、お兄さん達は?」

って、聞くんで、俺が、

「俺には独立心が欠けてるんで、まだ家にいて。」

そしたら海が、一緒に住めばしたい時にできますよ、みたいなことを言うから、弟にその気は全くなかったから、少し固まってたら、弟が、

「ゴメンね兄ちゃん、と言うより海、喋り過ぎ。急だったんで自分もびっくりしてるんだけど。」

で、俺が、

「大変だったね。」

って、少し間抜けなコメントで、そしたら変なところで好奇心を出す清士が、

「君達どうやって知り合ったの?」

弟が、

「バイト先。」

ま、ありうるか。あとで清士から聞いたけど、俺の弟、

「兄ちゃんは確かに俺の小さい時は、一緒に遊んでくれて、お風呂に入れてくれて、パジャマを着せてくれて、面倒見てくれたけど、既に俺の小学校高学年でそれが逆転して、俺が兄ちゃんがちゃんと食ってっか、夜更かししてないか、泣いていれば慰め、俺が見張ってきたんだけど、兄ちゃんは自分が大学に入って家を出て行くまで俺の面倒を見たつもりでいる、なんでか知らないけど。」

て言ってたって。それから、弟は、

「そろそろ母とか自分の弟とかの世話にならないで、とっとと自立するといい。」

みたいなことも言ってたって清士は言ってた。それうちの社長も言ってたな。それで俺は少しずつ清士と住むってどんな感じなのか考えたりしてたけど、結局自分の気付かないところで弟や母に面倒をかけてきたんだったら、清士にも面倒をかけるかもしれないし、って思ってるうちに忙しくなったんで、それは今は保留になってる。で、なんで忙しいかと言うと俺の新しいエージェンシーが頑張ってくれて、一年間あるメジャーな鉄道会社がやってるキャンペーンの専属契約が取れて、それで雑誌以外の他の会社の仕事は一年できないけど、それで念願のテレビCMにも出たんだけど、それは関西だけだから、まあ、ネットでは観られるんだけど。またお父さん役、さわやかな。俺すごく楽しんでやってるから、なんでゲイなのに家族モノが楽しいのか、考えてみたらうちの家庭がちょっと複雑だから、かな。普通のシンプルな家庭に憧れてんのかな。小さい子供とかと仕事すんの楽しくて、それが表情にも出るらしくて、スポンサーさんの評判もいいって、こなだ言われた。今は昔みたいにロケにあんまり行かなくていいから、CGだからね、そんなに忙しくなさそうなのに、俺まだっていうか、辞められる当てもないけど、服飾メーカーの営業の仕事もフルタイムでやってるし、社長が接待とかあんまりしなくていいようには計らってくれてるけど、それでも季節的に忙しくなるから、あっちはあっちで大変で、清士ともヤることはヤってたけど、少しスローダウン。

25

こないだ清士に会った時、俺達バーのカウンターにいたんだけど、俺がボーっとしてたら、清士は、

「どうした?」

って、聞いてくれて、

「頭の中の整理ができないような。」

「それってストレスじゃないのか?」

「なんにも考えることなんてないのに、考えないといけないようなプレッシャー。」

「なにを考えないといけないんだ?」

「分からない。」

「それは、やっぱストレスだね。仕事二つしてんの大変なんだよ。」

そしたら清士が、

「うちから通えば両方の仕事に近くなるんだから。」

って、俺がしばらくボーっとして言われたことに気付いてなくて、で、それを清士がどう解釈したのか知らないけど、勝手に決めちゃって、その週末俺は一週間分くらいの服とか詰めて、確かに都心に住んだ方が大分楽で、清士なんて俺が帰ってもボーっとしてたらジャケット脱がしてくれて、シャツのボタンまで外してくれて、俺の面倒みてるって気持ちなのか、そこからセックスに移行していくから、それがセックスの一部なのか、確かなのは俺が清士にボタン外してもらうと、馬鹿みたいだけど、すごいいやらしい気持ちになって、ボタン外してもらうと、わって燃えてくるんだよ、って言うとそれが清士にはすごく可笑しいらしくて、ということは、彼にとってボタン外しの儀式はそれほどセクシーなものではないんだな、って。結局、清士は食事作ってくれてお風呂わかしてくれて、時々いやらしく二人で湯船に入ったりするけど、日々そういう、いやらしいことをこなしていると、俺のストレスもよくなって、ボーっとすることもまだあるけど、大分減っていった。清士が、

「なんでボタン外されるとそんなに燃えるの?」

って、なんか真剣に知りたいみたいに聞くから、

「分かんない、清士がいつか会社まで車で送ってくれて、着いた時に車の中で俺のシャツの上からボタン三番目まで外して、そこんとこにキスしてくれて、またボタンとめてくれた時があって、その日一日中ため息ついてたら、うるさいってみんなに営業部の部屋追い出された。」

そしたら清士は意外にもそのことを忘れてて、っていうか、ボタン上から三番目のとこには今でもキスしてくれるんだけど、そういう時は服脱いだあとだったりするんで、ボタン三つ外してしかもまたとめるなんていう機会がない。あ、分かった、それってね、多分着せ替えごっこのノリなんだ、って清士に言ったら、再起不能なくらい笑ってて、え、じゃあお医者さんごっこは?って聞かれたんだけど、

「俺、お医者さんごっこはやったことない。」

「そっちの方が主流じゃない。」

「そうかな?それのなにが面白いの?」

「あれもね、結局服脱がして、でも違うのはそのあと診察をするところ。」

でも俺は、なんか楽しいいやらしいより、いやらしいいやらしさを感じたので、黙っていたら、

「なに?」

なんて言っていいのか分からなかったけど、なんか言った方がよさそうだったんで、

「それ、いやらしい。」

「じゃあ着せ替えごっこは?」

「それは、いやらしくない。仕事でマヌカンに着せてるし。」

「お医者さんごっこはいけないんだ。」

「そう。」

「今度やってみようぜ。」

「やだ。」

「一回だけ。」

「絶対やだ。」

「そう言わないで。」

「だめ。」

「じゃ、なんならいいの?」

「ボタン外してまたとめんの。」

「それって着せ替えごっこ。」

「そう、いわゆる。」

「じゃあ、俺の誕生日に。」

「やだ。」

「クリスマス?いいじゃん、一回ぐらい。」

「それってなにをどうすんの?」

「じゃあ、教えてあげるから。」

俺の服脱がして、また椅子に座らされて、ノドの中から見て行って、結局下の方に行って、そんなつもりはなかったんだけど、俺の感度のいい乳首に行って、そこでもう俺かなりいやらしく、たってきて、清士はお医者さんだから脱がないじゃない、だからそれがまたワイセツな感じで、って言ったら、それが結構このお医者さんごっこのお医者さんごっこたるゆえんで、あるらしい。それで清士は結局フェラしてくれて、あとでだけど聞いたんだけど、それが治療なんだって。なんかそれよく分かんないし、俺にとってはやっぱり着せ替えごっこだし、それから清士は俺をベッドに連れてって、自分も結局は全部脱いで、その俺の好きな上からボタン三つ目のところにキスしてくれて俺はドクターのモノもフェラしてあげて、清士はマジでお医者さんごっこ好きみたいで、ペニスが今までにないくらい、なんで?ってくらい硬くなってて、そんなに好きなんだったら、たまにはやってもいいな、お医者さんごっこ、とかボーっと考えているうちに、清士が俺のバックに入れてきて、それがあんまり硬いんで、だから、普段だと俺の中の形に添って入って来るけど、それが硬いと、中の形に関係なく入って来るからそれがあんまりよくて、不覚にも大きな声を出してしまって、それが動き始めるとその硬いものに逆に自分の内部を添わせていかないとなんなくて、それがあんまりよくて、だんだん速くなってきたくらいで清士も少し声を出してて、だから逆に言えば、清士のモノも俺の中の壁のあちこちに当ってて、すごい気持ちよかったと思う。清士は中にいっぱい出して、俺の中の壁とかそのもっと奥とかが、痛いくらいになって、清士は俺のペニスをヤってくれたんだけど、俺のはあっけなくイって、二人共いつもより早くイったんだけど、満足は半端じゃなかった。このことがあってから、またちょっとずつお互いの身体にのめり込むようになって、俺もどんどん恥ずかしい大きな声を出すようになって、清士はもともとセックス上手いし、俺に会う前から。それで清士が俺も知らなかった、俺が声を出すスポットを見付けて、そこを突いてくれてイく時の、それってなんて言うの、身体の震え?痙攣?も半端じゃなくて、イく時、清士は俺の震えの収まるまでしっかり抱き締めてくれて、この痙攣って女みたい?どうなの?だからお互いの身体に無茶なくらいの欲望が増していって、それが理由で俺達が一緒に住むことになって。清士は優しくて、毎朝俺が出かける時、俺の好きな90度キスをしてくれて、俺のことを王子様だか王女様だか知らないけど、そんなのになったみたいな気分にしてくれる。それで寝る時はセックスしなくても俺の身体に触ってくれて、髪に触れてくれて、俺のキスして欲しいところにキスしてくれて、清士だって仕事してんのに悪いと思うから俺も色々やろうとするんだけど、上手くいかなくて、上手くいくのは熱帯魚の世話ぐらいで、っていうかそれはもともと俺のだから別に。今週、年二回の服の展示会があって、営業の仕事なんて、結局なにからなにまでで、これって誰の仕事なの?って、押し付け合えばきりのない仕事。週末休めそうだったのに撮影入ってもうダメ。目の下にクマ作って撮影に行けないからゆっくりお風呂入って、清士が肩もんでくれて、ベッドに入れって言ってくれて。

26

それは少し久々のファッション雑誌で、フォトグラファーとかスタイリストとかいい人で、俺のこと上手く笑わせてくれて、清士が送り迎えしてくれて、面白いね、って好奇心丸出しで、ポーズってあんな風につけるんだ、とかメンズマガジンなのになんでメイクさんがいるんだとか、色んな発見があるらしくって、俺のコーディネイトは大したことなくて、5パターンくらいで、清士がずっといてくれたからか知らないけど、フォトグラファーに表情がよかったって、今度もっと俺のページ増やすように言っといてあげるよー、とか言われて嬉しかった、ほんとにそうなるかは知らないけど。終わってから清士が俺のことをあの中で一番イケメン、って言ってくれて、やっと帰って、そこで俺は死んだように寝て、あとで聞いたらほんとに死んでんじゃないかと思って何回も見に来たんだって。清士に言われたんだけど、一緒に住んでると俺がどういう時に、ストレスなんだな、とか元気なんだな、とかよく分かるようになったって、でも俺、清士見てても全然分かんない、それってありうる?って聞いたら、いいよ、気にすんな、って言ってくれたけど。これが俺の弟の言う、俺が面倒みてもらってんのに気付かないというゆえんか。それから数日有給取って、それも初日は一日中寝て、起きて、寝て。清士によく眠れるな、うらやましいとか言われて、それから久々にいっぱいエッチなことをして、また寝た。

27

それからしばらく平和な日が続き、なんとこないだのフォトグラファーはほんとにページ増やして、って雑誌社に言ってくれて、あの一月後だったんだけど、俺のコーディネイトは10パータンに増えてて、しかも清士の好きそうなスーツで髪は立ってなかったけど、横に流してちょっと固めた感じ。俺ああいうスーツ着ると似合うんだよね。年齢詐欺はしてるけど、その雑誌のターゲット、30代、40代だから全然平気で、ああいうスーツ着ると背は余計高く見えるしスタイルも余計よく見えるし。そしたらそのスーツのメーカーさんが来てて、タイアップ記事でもないのになんで?って思ったんだけど。よく似合うねー、とか言ってくれたから、あ、くれるんですかー、ありがとうございます、とか冗談言ったり、上手くかわそうと思ったんだけど、上手くいかなくて、君ハーフなの?とかって聞かれて、分かんなかったことがこないだ分かったから、日本人なんですよー、って。なんかナーバスになったから清士に迎えに来てもらうと思ったんだけど、あんまり面倒かけるのもな、って。そしたらどこまで行くの?送ってってあげるよ、ってありがちなシチュエーションで、なんで俺っていい年してこういうのを刺激するような、優柔不断っぽく人から見えるのかな?その日はビジネス・スーツの撮影だったから、ビジネス街で、ほんとにうち近かったから、うちすごく近いんですよ、変なとこに住んでるでしょ、とか言ったり、で、どうせこういうタイプには全然効力ないの知ってたけど、清士に電話して、「今、終わったから、真っすぐ帰るから。」とかわざとらしくない程度に、でかい声で言ってみたりとかしたんだけど、やっぱり思った通り効き目なくて。で、そのメーカーさんが今度うちのなんて言ってたっけ、うちのなんだか知らないけど、ポスターかなんかに押してあげるよー、とか言うから、俺が、あ、実は俺一年契約あって他の企業さんのできないんですよねー、ってほんとのことだし、とか、やったー、と思っていると、大体この人今日なにしに来たの?って考えてるうちに俺のいつもの悪い癖で、頭ぼーっとなっちゃって、結局押し切られてお茶してたところに清士に迎えに来てもらった。

28

「ゴメンね、俺ってティーンエイジャーの女の子みたい。すぐ押し切られて。」

「気にすんな。」

「って、言うか女の子の方が強いよね。」

「俺、言っただろ、どんなことがあっても七音さんを守りますって。」

ついでに飯食って行こうぜ、っとなって、フォトグラファーさんにその場で内緒で数枚もらった写真見せて、やっぱり清士が好きそうなスーツで、お前がすごくホットに見えるって言ってもらって、嬉しかった。その次の月もビジネス・スーツの撮影だったんだけど、またそのメーカーさんがいて俺の顔が少し暗かったら、フォトグラファーさんに、これはビジネスが上手くいって、やったー、みたいなショットだって説明してもらって、だったら俺の営業職そのまんまじゃん、と思って、過去の俺の輝かしい営業実績のこと思い出しながら撮影が進むうちに、なんか、思ったんだけど、俺って営業やってて誘われたりとか色々今でもあるけど、なんでああいうのは平気なの?なんか、ついこないだ俺、大手小売店の応接室でキスされそうになったけど、全然平気だった、なぜ?え、なぜ?会社がバックに付いてるから?あ、でも今だってモデル・エージェンシー、結構でかいとこ付いてるし、経験?俺、モデルの方が会社より長い、え、じゃなんで?自分が売り物だから?商品じゃなくて?なんてどうでもいいようなことを考えてると、そのメーカーさん今度は今日初めての新人モデルさんにびったりくっついてて、ま、どうでもいいや、って思ったんだけど面白いから見てたら、なんか、帰り一緒に帰ってった。仕事欲しいのかな、分かんないけど、でも付いてっちゃうのがいるからやるんだろうな、って。清士に頼らないでやってくのが当面の目標かな。で、帰って清士に、そんなこんな考えたんだけど、なんで会社の営業ならキスされそうになっても全然笑ってかわせるのに、なんで?そしたら清士は、

「やっぱりそれとあれはちがうでしょ。」

「なんで?」

清士が言うのは、

「モデルってやっぱりセックスが売り物だからだよ。」

ビジネス・スーツでビシッと決めても見る方は、俺の身体見てるんだって。ゲイじゃなかろうと。

29

清士がまた、お医者さんごっこがしたい、ってマジに言ってる。俺が笑って、

「俺は着せ替えごっこがいい。」

「じゃ、その中間ぐらいのは?」

「中間ってなに?」

その清士の中間ぐらい、っていうのがかなりクリエイティブみたいで、

「だから、ドクターは患者の服を脱がすだろ、そして色々するだろ。」

「俺は色々の中身を知りたい。」

「ドクターは、患者を診察して、治療をする、そして最後に違う服を着せれば、着せ替えごっこだろ?」

最後まで聞いてみたら、さしてクリエイティブでもなかった。俺が、

「そうだ分かった、今度は俺がドクターになる。」

そしたら清士はかたくなに、

「それはダメ。」

「あのね、俺がお医者さんごっこと、着せ替えごっこの違いを説明するから。」

「はい、どうぞ。」

「着せ替えごっこは、脱がしたらすぐ着せるじゃない、でもお医者さんごっこは、すぐには着せないじゃない、そこが違いでしょう。」

「そうかな?」

「でしょ?」

「いや、そんなことない。」

「え、なんで?」

「着せ替えごっこでも、脱がせてから着せるまで、時間がかかることもある。」

「なんで?」

「脱がせて着せるまでに色々する時間があるだろ?」

「だからそれは、ただのお医者さんごっこでしょ?もう知らない。お風呂入って来る。」

「じゃあお風呂の中でしよ。」

「なにを?」

「お医者さんごっこ。風呂なら、脱がせてから着せるまでに時間をおいても不自然じゃないだろ?」

「じゃあ、脱がせてくれて、着せてくれるの?」

「うん、うん。」

「その脱がせて着せるの間は?」

「それは、色々だろ。」

「俺はね、着せ替えごっこは好きなの。ただ、間で色々っていうのに、疑問を感じるだけ。」

「やってみようぜ、その風呂バージョンを。」

そして清士は、俺の服をゆっくりいやらしく脱がせてくれて、俺の好きな90度キスと、上から三つ目のボタンのところにキスしてくれて、で、お湯に入って、後ろから抱いてくれて、まだ清士には言ってなかったけど、俺、実は後ろから抱かれて首の横にキスされると、もうなにされてもいいモードに入ってしまうの。この際その俺の秘密、ささやかな、を告白すると清士は、

「それってどっちの首でもいいの?」

って、いい質問をくれたので、

「それはね、左側だけ。」

「で、どの辺?」

「あのね、耳の下と肩のあいだくらい。」

それで清士はちょっと、ここんとこヒゲ伸ばしてて、俺はそれに関してはなにもコメントしてなかったんだけど、そのひげで首にキスをされたら、身体から力が全部抜けて、ため息と喘ぎ声の中間が出ちゃって、清士が、

「どうしたの?」

「言うのが恥ずかしい。」

「なに?」

清士がまた、後ろから俺の首にそのヒゲのキスをして、俺は清士の肩にくずれ落ちちゃって、

「大丈夫?」

って、聞くから、もう、いいや、と思って、

「清士のヒゲが首に当る。」

「え?」

「すごい感じる。」

清士はちょっと笑いながら、俺の身体を抱き締めてくれて、そしたらその時、清士のヒゲが俺の背中に当って、小さな悲鳴のようなため息が出て、清士が、

「背中も感じる?」

「身体中。」

俺が死にそうな声で言ったら、清士が後から俺のペニスに触ってきて、

「あ、ほんとだ。」

それからが、服を脱がすのと着せるのの、間の色々の部分で、今日の撮影用で俺の髪すごく短く刈ってあって、それを清士が洗ってくれて、それからまた首の横のところを後ろからキスしてくれて、なんかすごく、俺、たってて、それを清士に触られて、それで石鹸で首のとこから肩、背中、そしたら、清士が俺のこと立たせて、乳首にキスしてくれたんだけど、そこで俺もうダメ、ってなって、でも清士は丁寧に俺のお尻とか、足とかまできれいに洗ってくれて、そこでもう一回湯船につかっていると、清士は、

「大丈夫?」

って、言いながら、俺の身体中感じ過ぎの必死の顔をちょっと笑いながら、人の気も知らずに俺の目をのぞき込みながら、

「本物のドクターが必要なんじゃない?」

だって。それで遂に俺のことベッドに寝かしてくれたんだけど、体中が思いっ切り敏感になってるところに清士がまたキスしてくるから、

「もうダメ。」

俺がマジで泣きそうになってると、清士が、今度は首の横のところを、ただのキスだけじゃなくて、そのくちびるだけじゃなくてヒゲのとこで、俺の耳の下から首の下までなぞるの。

「もうダメ。」

って、もう一回言ったんだけど、今度は俺の好きな上から三つ目ボタンのとこから乳首まで、ただのキスじゃなくて、くちびるとヒゲのとこでなぞられて、もうダメだなって思ったから自分で自分のモノを触ろうとしたら、手をどかされて、そしたら清士が口と手でしてくれて、俺のペニスの根元から上方になめてくれて、それは大丈夫だったんだけど、俺のカリのとこに行くとこの段差のとこにヒゲが当って、俺は、わっ、て泣いちゃって、どうにもならなくなったから、清士の裸の胸に抱き付いたらさすがにその時は俺のヤバイ状況を分かってくれたみたいで、そして、清士は少し考えてたみたいなんだけど、俺がまた自分のを触ろうとしたから、またそれをどけて、上手に俺のことをイかせてくれて、そしたら俺は半分くらい大丈夫になって、清士はまた俺の顔をおもしろそうにじっと見て、キスしようとするから俺は当然よけて、そしたらやっと着せ替えごっこだかお医者さんごっこだかが終わったらしくて、パジャマを着せてくれて、そこで大分息苦しさがなくなってきて、そのかわり自分で気が付かないで、気が遠くなっていって、やっと少し眠れて、でもまたすぐ起きて、そしたら清士が椅子に座りながら俺のことをじっと見ててくれて、額とか触ってくれて、

「大丈夫?」

「・・・疲れた。」

そして俺が、背中が少し痛いって言うと、清士がさすってくれたんだけど、そうすると余計ひどくなって、あ、これは清士に反応して背中が痛いんだな、って思ってそう言うと、やめてくれたんだけど、でも痛いのはおさまらないから、しょうがないから痛み止めを飲んで、大分落ち着いたからやっと朝まで眠れた。その日は日曜だからよかった。清士が心配して、

「あんなこと前もあったの?」

「ない。」

「背中は?」

「まだちょっと痛い。」

それで、なにが食べたい?とか、色々病気のお姫様みたいな気分にしてくれて、うれしかった。そして清士が、真面目に、

「俺、ヒゲ剃った方がいいかな?」

って、言うから、俺は、

「ちょっと待ってて、多分慣れると思う。昨日のは心構えができてなかった。」

「別にいいよ。そんな大したことじゃないし。」

「あのね、でもね、ほんとのこと言ってね、俺ね、清士のヒゲ好きなの。」

って、言ったら、清士笑って、

「お前はクレージーだよ。」

その日曜は疲れてたからずっとうちにいた。夕方くらいになって、清士に試しに後から抱いて首の横に特別熱いキスをしてもらった。微妙だったんだけど、また気が遠くなりそうな気がした。でもなんで俺の身体って急に敏感になったの?ヒゲのせい?でも、そうじゃないことが分かった。だってさっき清士が俺の手を触ってたの、なにげなく。そしたらやっぱり手が敏感になってて、わっ、どうしよ、って感覚が走ったから。もうダメ。清士の裸とか見たら多分失神する。

30

次の週末、清士のお母さんがたまには会いに来いと言ってると、いうことでまだ正月には遠かったんだけど、俺も一緒に行くことになった。清士に、俺は清士みたいに上手く挨拶できないと思うよ、って言ったんだけど、清士が言うには、お姉さんもお母さんもよく喋るから、こっちからあんまり喋るチャンスないから大丈夫だよ、って。清士のお姉さんは二つ上で、高校の時、俺のファンクラブっていうのがあったんだよ、って話をしてくれて、髪長くてほんとに可愛かったわー、なんて。ほんとう?って俺は笑ってて、今はこんなに短いのにねー、って、そしたら清士が、お前もしモデルの会社との契約がなかったら、どのくらいの長さにしたいか、という清士のいつもの好奇心で聞いてきて、俺はまあ耳の下くらいじゃないかな、って。そしたら清士のお母さんがいきなり例の新聞の話しを持ち出して、あの写真はほんとにいい写真だって。なんかタンスに大事にしまってあるらしい。だから俺はあらたまった挨拶はしなかったけど、十分清士との仲のよさは分かってもらったみたい。それからちょっと俺んちによって弟と喋ったりして、いつものように礼治の店に寄った。礼治はあのサッカー部の太ももで遂に彼氏をゲットしたという本人の談だが、どんな人と聞いても厨房に潜ってしまうので、なんだか眉唾。礼治が俺の出たCMを観たいと言うので、俺のさわやかなお父さん役の笑顔をみせてあげた。礼治は、

「自然でいいな。お前お父さん役向いてるわ。」

「またCMやるよ。今度のヤツはね、遊園地だって。」

そしたら礼治が、

「お前らさ、自分がもし女とヤれて子供とかいたらどうだったと思う?」

って、言うから、清士は、

「俺は全然そういうことは考えたこともない。」

で、俺は、

「弟二人いるし、上のは俺が十四の時生まれて、下のは俺が二十三の時、自分の子供みたいなもんじゃん。子供は全然抵抗ないけど、女はねー、謎だね。そのCMの時お母さん役の人、女優さんで綺麗な人だったけど、なに考えてんのかさっぱり分からなかった。」

そしたら礼治が、

「お前等ってここんとこ、どんなセックスしてんの?」

別に答える義務ないよな、って思ったけど、まあ、いいや、と思って、

「着せ替えごっこ。」

「なにそれ?」

「でもね、清士はお医者さんごっこの方が好きなの。」

「着せ替えごっこって、人形みたいに動いたらダメって感じのヤツ?」

「えっとね、そこまではしてない。」

そしたら清士が、

「でもそれいいな、動いちゃだめなやつ。今度やってみよ。」

で、俺が、

「それで俺が着せ替えごっこ好きで、清士がお医者さんごっこでしょ、だから、その中間っていうのを作ったの。」

礼治が、

「なにそれ?」

「それはね、最初脱がすでしょ、それで間になんだかんだがあって、最後に違う服を着せてあげるの。」

「間になんだかんだって?」

「あ、それは、なんだかんだお医者さんごっこみたいに、診察したり治療したりすんの。」

「診察とか治療したりって?」

「あ、それはね、色々その時によって。」

「いいな、それ。今度俺もやってみよう。」

そしたら、清士が、

「え、誰と?」

って、聞いたら、また礼治は厨房の中に消えて行った。

31

清士がヒゲ生やしたところぐらいから、変な話し、俺達の心のつながりもそうだけど、身体のつながりがマジで半端じゃなくなってきた。例の後ろから首の横にキスしてもらうと、今だにその瞬間、わっ、て身体が熱くなるんだけど、前の時みたいにならないように、そのキスを受ける時にあんまり感じ過ぎないように、ちょっと頑張って感覚を押し殺すみたいにして受けるんだけど、そしたら清士がそれを察して、ワザと俺の耳から首から肩にきて、俺の三つボタンのスポットから乳首にきて、それから俺の唇にきて、普通ぐらいのキスから、ディープ・キスになって、二人でベッドに行って、また俺の首の横から始まるんだけど、そこまで色々に清士のヒゲのキスをされたら、俺はもうなにも抵抗できないようになってるから、で、首にキスされながら考えたら、これだと俺のモノたち過ぎてつらかったから、清士の顔の耳の近くの所に俺がキスして、そしたら清士が俺の目を上からのぞき込んで、俺がもうマックスでヤバイようなサインをだしたら、そしたら余計ヤバくなるように俺の身体を愛撫し始めて、首の横の中間くらいから腕の中間くらい、それから身体のワザと乳首のところを通るようにして、それからももに来るんだけど、俺も自分でそこ感じるって知らなくて、少し声を出したら清士が少し笑って、俺のペニス触ってもらいたくてしょうがなかったんだけど、清士は俺を横向きにさせて自分のたったモノを俺のお尻の丘に押し付けながら髪に触ったり。そしたら清士は自分の手を俺の背中に強めに押し付けるように動かしてそれを腰からお尻までそしたら、後ろから前に手を出して、俺のペニス握ってきて、それは一番たってる時くらいにたってて、それからもっと強く握ってきて、だんだん俺をまた仰向けにして、ももを持って足をだんだん開かせて、そして俺のアヌスをのぞき込んで、そこを清士のヒゲでキスして、俺のアヌスのとこからずっとずっと長い時間かけて俺のペニス裏側の根元に来て、それから俺のたってるペニスの裏側をずっと這わして、とうとうてっぺんのところまでいって、でもそれはそこで終わりで、清士は俺の足をもっと開かせると、自分のモノを俺の中に入れてきて、でも清士のが大きいから上手く入んなくて、清士がローションかけて、そしたらそれが俺の身体に触れた時、冷たくてちょっと声を出して、清士のが俺の中にまた入ってきて、清士が腰を動かしながら時々俺の目を見るのがセクシーだなって考えてると、清士が俺を四つん這いにさせて俺の奥を突いてきて、俺がベッドの枠のとこに両手でつかまって、なんかそれが俺はセクシーなことのように思って、そこで清士がイって、俺は清士に入れたかったんだけど、そう言ったら清士が俺の足の片方を立てひざさせて、もものところをキスして、そして我慢できなくて大きい声の出るようなフェラをしてくれて、俺のがどんな風に清士の口に入っていくのか見たくて何回ものぞき込んでたら、清士と時々目が合ってそれがセクシーだなって思ったから、いつもより早く俺もイって、そしたら清士が俺のことを愛おしそうなハグをしてくれて。清士が、

「お前、俺といるとどんどんエロくなる。」

「分かる、自分でも。清士が触ってキスしてくれただけで震えそうになる。」

「セックスの時の顔が違うし、目も違う。」

「イく時ももっと感じるし。前よりずっと。」

32

それから、しばらくたってなんだけど、俺の髪がだんだん伸びて来たところに、ウォッカの雑誌広告の仕事が入って、じゃあ髪染めましょう、ってなって、ブロンドよりプラチナブロンドに近い色とか言われて、出来上がったら確かにかなり白に近いブロンドになった。うちに帰ったら清士が、おー、ってなって、俺が、

「それの撮影終わるまでだから。」

「その頭の時セックスいっぱいしたい。」

「え、なんで?」

「北欧の男とヤってるみたいな気分になるじゃん。」

「妄想。」

それから清士と出かけた時、俺の髪のトップが大分伸びてて、トップだけ立たせて固めてたんだけど、それがすごい派手な感じで、何回か観光客に英語で話しかけられて、清士がいたからよかったけど。撮影はその数日後だったんだけど、そこにもメーカーさんっていうのがいて、別に身体は求められなかったんだけど、その人がいろいろ捜して俺に決めたんだって、だから、選んでくださってありがとうございますとか、言ったりとか。国産のウォッカでその人が三代目なんだって。それで、なんで僕だったんですか?って聞いたら、年齢が若過ぎも上過ぎもせず、なんかエロい感じのとこがよかったんだって。僕って、エロいですかね?って聞いたら、そこにいたメイクさんとかまでうなづいていたから、そうなのかな。そしたらね、最終的に決まったショットが、いつも俺がキスしてもらってる耳と肩の間の首んとこを見せてるヤツでだから顔は横顔じゃないんだけど、正面でもないみたいな。で、それ自分でやったんじゃなくてポーズ指定されてやっての。不思議なの、だから。あれかな、そこがエロいスポットだったのかな?帰って清士に言ったら、

「お前が感じるところは人にも分かるんじゃない?」

「不思議じゃない?でも。」

「それよりその髪のうちにいっぱいヤろうぜ。いつ染めるの?」

「今度の雑誌の撮影までだけど。」

「それいつ?」

「来週末だけど。そうだ、雑誌の人に聞いてみよう。もしかしたらこれで撮りたいかも。」

「来週末か、まだ時間あるな。」

「エロいとか言われたことないのに。」

「変わったよ、お前。今のその視線だけでもエロいもん。」

「じゃあ、俺、清士によってエロく改造されたの?」

「・・・ほら、今の唇をちょっと噛む感じがエロいもん。」

「じゃあ、俺って自分で知らないうちにエロいことしてんだ。メーカーさんの前ではやらないようにしないと。」

33

そのあと、清士の知り合いがバーを始めたって言うんでそこに行ってみた。繁華街の中で経営大変だろうな、って思ってたら、常連さんがいるみたいで、夜中近くになるほど混んできた。それで清士の知り合いっていう人はただの経営者で店には出てなくて、清士としばらく表で話してて、こういうバーにいるにしては若い男性が俺のところに来て、興味あったら電話して、って名刺くれて、その人はすぐ店を出て行ったんだけど、そしたらなんと、ゲイのビデオ作ってる会社で、えっ、て、びっくりしてたら清士が帰って来て、それを見せたら、最初は怪訝な顔してたんだけど、それから笑い出して、

「電話すんのか?」

「するわけないだろ?」

「どうして?」

「するわけないだろ?」

「じゃあ、帰ったらそこのビデオ捜して観ようぜ。」

「いやです。」

「なんで?いいじゃないか?」

「どうしよう。俺のエロさはとどまることを知らないみたい。」

で、その晩は、清士にしては結構飲んでいたにもかかわらず、俺に手が出てきて、金髪とやりたいとか言ってたけど、俺は撮影もあったし結局疲れて寝ちゃった。

34

朝起きて清士に、その金髪ファンタジーはなんなの?って聞いたんだけど、それは金髪でも北欧の金髪だから、それは全然違うんだって。さらに踏み込んで聞いてみたら、昔いたんだって友達に。

「で、その人とヤったの?」

「昔の話しだから。」

「っていうことはヤったんだ。」

「・・・」

「俺、清士の過去の男って全然知らない。」

「そんなこと言ったらお前の男だって社長と、社長の言ってたモデルのチャラいヤツ等とかいうのしか知らないぞ。」

そして、洗濯でもしよー、と思って起きようとしたら清士に腕をグッとつかまれて、ベッドに倒れたら今度は後ろからきつく抱き締められて、それでパジャマのボタン外されて脱がされて、そこで既に俺の着せ替え人形ファンタジーが始まっちゃって、それから清士の北欧ファンタジーが加わって、俺の髪の長いトップのとこ昨日立ってたけどもう大分寝ちゃってて、清士が俺の顔にかかってる髪をかき上げて、額にキスしてくれて、その時目が合ったら可愛いって言ってくれて、俺が清士のをフェラしてて、その髪でそれやられたらたまらんと言って、なぜか俺の口から抜いて、俺のケツ見て、エロいケツでまたたまらんと言って、俺の好きな角度で入れてくれて、清士が入れて動かしながら俺のケツ触ってくれて、ちょっとくすぐったくてちょっと俺がケツを動かして、それがたまらんと言って、ますます動きが速くなって、もっと中に入れるために清士が俺の両ももを自分の方に引っ張って、それやられた時に俺はほんとに清士とのセックス好きだなって気付いて、それから清士が俺の背中でイった時も清士のことがすごく愛おしいと思って、それから俺を仰向きにして、俺のウエストのちょっと上の身体の側面のところをギュッとつかんで、お前の身体本当にエロくなった、って言って、痛いくらい頭を押さえて舌を口の中まで入れたキスをしてくれて、俺が痛いよって言うまでしてて、俺がまた清士に入れたいって言ったんだけど、また清士は俺のペニスをまるでなんかおいしいモノでもなめるみたいになめて、それで俺が感じてたまらなくなって、お腹を動かしたらそれがエロいんだよ、って清士が言って、自分のモノにも触り出したから、またたってんのかなって思って、清士はまだ俺のに触ったりしながら自分のペニスを俺の口に入れてきて、清士がさっき一回イってる割にそれがあんまり硬いから少しびっくりして、俺がしゃぶりながら舌を使ってると清士の息が少し早くなって、気持いいのかなって思って、清士の顔を見上げて、そうやって見上げる目がたまらんと言って、清士の息が深くなっていって、清士のお腹が動くのを見てて、でも自分でもどうしてなのか分かんないけど、清士の顔を見たかったからチラッと素早く見たら清士がペニスを俺の口の奥の方に入れてきたから、先の方が感じるのかな、って思ってあんまり奥の方に入れられると苦しいしそれで少しだけ清士のを俺の口から出して、今度は根元をつかんで先の方だけ音が出るほど俺の口で吸ったら、清士は俺の口に出して、それが俺の口から流れて落ちて、清士がそれを手で払ってくれて、そしたら後ろからじゃなくて前からだけど俺の好きな首のとこにキスしてくれて、それから俺のたってるペニスをなんか考えてるように見て、お前のヤっててお前の腹動くの見たら俺またしたくなるって言って、それで俺が清士に入れて、入れながら俺は清士のことがほんとに好き、って思って、清士の背中も俺に触れてる清士のお尻も足もみんな好きって思って、清士もすごく気持ちいい声を出して、それから自分の気持ちいいとこに当ててたら、清士もそこが気持ちいいみたいで、俺は抜こうと思ったんだけど中の気持ちいい場所でイっちゃって、清士のアヌスに舌入れてなめ取ったんだけど、そんなもんじゃだめで、ゴメンね、中でイっちゃって、って言ったら、いいよ、ってちょっと笑って。

35

日曜だから、掃除しながら洗濯とか、最近覚えた技でやってたら、清士がなんかPCでやってんな、と思ってたら、

「ほら、これ観ようぜ。」

「なに?」

「あの名刺の。」

「マジで?」

「ほらこいつのケツ、お前のケツ方が何十倍もエロいぜ。」

「そんなん観てどうすんの?」

「いや、ちょっとどんなかな、って。」

「こいつのでかい、でもグロい。」

「ちょっと可愛いのもいるな。」

「どれどれどれ?」

「これこれ。」

「これ清士の好み?」

「太ももがいいし。」

「ふーん。」

「お前の身体のほうがこん中の誰よりエロい。」

で、その次の月曜日。営業で得意先回ってたらいつもより帰るのが遅くなって、地下鉄で帰ろうと思って、その時間の地下鉄ってそんなに混んでなくて、周りにいっぱい席あいてんのに俺の隣に座って来る男がいて、やだな、さりげなく場所移動するしかないなって思って、立とうと思ったら、兄ちゃんエロいな、って言われた。なんにも言わない方がいいと思ったから、黙って立って人の多い車両に移って、エロいってなに?なんかの病気?って悲しくなった。帰って清士に、さっき地下鉄で、兄ちゃんエロいな、って、言われた、って。

「エロいってなに?なにかの病気?」

悲しそうに言ったら、清士は、

「慣れるんじゃないか?そのうち。」

って、なんかちょっと的外れなことを言うから、

「エロいって、いいこと?それとも病気?」

「お前、言ってたろ。痴漢にはもう慣れたって。」

「うん、慣れた。ついこないだもケツもまれた。でも全然平気。」

「だろ?慣れるよ。」

「清士は?俺がエロいの好き?」

「俺は好きだよ。」

「だったらいいけど。」

「こないだあれだろ?仕事来たんだろ?それで。」

「そう、ウォッカのやつ。」

「いいじゃん、それで。」

36

例の雑誌の撮影だけど、あの髪の色で行ったらヘアメイクさんが喜んでくれた。よく似合うって。その週は珍しくビジネス・スーツじゃなくてカジュアルなタウン・ウエアって感じの、五パターン。スタイリストさんに、

「なんか最近色んなとこで、エロい、って言われるんですけど。」

「ふーん。」

「あんまりいい気持ちしないんですよね。」

「いいことだ、って思うしかないでしょ。」

「エロいのって不治の病なんですか?それとも治療の方法があるんですか?」

「七音さん、それ喋ってんのすごいエロいですよ。」

「どういうところが?」

「なんかね、スキのあるとこ。」

「スキのあるとこ。それがキーワードなんですかね?」

「個性のうちですよ。モデルでも全然スキない人もいるし。」

「じゃあ、俺はスキだらけ?」

この日の撮影なんだけど、面白いことに、例のホコ天に行ってワザと人の多いとこで撮ったり、俺は人より頭一つ出るから、プラス髪の色が薄い金髪でよけい目立つし。人の流れが切れる一瞬で撮影。着替えて終わったらまだ早い時間で、清士と待ち合わせして、

「もう大分根元に色出てきたから染めるよ。」

って、言ったら、

「またその色にしろ。」

だって、

「でも無理だよ、契約あるから会社に聞かないと。」

「じゃ、聞いてみて、彼氏がどうしてもって言ってるって。」

「彼氏が、って言うのね、分かった。」

「そう言えば遊園地のCMどうなったの?」

「あ、あれね、残念なことに、その会社業績が落ちて、ヤバいらしい。」

「なーんだ。」

「だからこないだウォッカの宣伝やったでしょ?」

「契約も終わりなんだ。」

「さっき、スタイリストさんに聞いたんだけど、俺がエロいと言われるのは、スキがあるからだって。でも悪い事じゃなくて、個性の一つだって。」

「確かに、お前は身体にスキがある。」

「え、どういうとこ?」

「さっきからお前、俺と喋ってんのに、集中してない。自分の足見てるだろ?なんで足見てんの?」

「この靴にこのパンツ合わなかったかな、と思って。」

「ほら、それに目が左右に泳いでる。俺と喋ってんのにどうして目が違う方見るの?」

「癖でしょ。」

「そうだな。」

「でもそれって、視線でしょ。身体にスキがあるって言うのは?」

「だから目が違う方見ると、身体に触れるだろ、ほら、こんな風に。」

清士は、俺の目が泳いでるうちに、俺の胸に触った。俺は全然気付かなかった。

「これがスキか。ほんとだ。清士に触ろうとしてもスキがなくて触れない。」

「だろ?」

「頑張っても、どうしても目が泳ぎたがる。」

そしたら、清士が笑って。

「ま、だんだん泳ぐ範囲を縮めていけばいい、っていうより、そんなこと気にすんな。個性の一つなんだろ?」

「うん。」

「お前のその意味もなく唇をちょっと噛むとことか、首とか鎖骨とか腕とか触るの、それなに?」

「あ、それはね、多分、自分の存在を確認している。」

「自分が生きて存在していることを、確認してるんだ。そうだったんだ。」

「変ですか?」

「あれがね、結構エロい。」

「なんで?」

「あの触ってんのが俺の手だったらって、思うじゃない。唇はキスしたいって、思うじゃない。」

「なるほど。」

「またやってる、その唇。無意識なんだな。」

清士が、俺の好きな顎を引き寄せて90度キスをしてくれた。俺達はカフェの中にいたんだけど座るところがないから立ってて、素早かったから大丈夫だと思ったら例の新聞社のフォトグラファーがいて、

「ありがとうございますー。」

という、謎の挨拶をして、走って行ってしまった。俺はすぐに俺のエージェンシーに電話したんだけど、そしたら俺をスカウトした剣が日曜なのにいて、説明したら、いいですよ、別にプライベートの時間に起こったことはうちはなんにも言いませんよって、やっぱりあれは前の社長がせこかったんだな。それから席が空いたんで座ってて、俺がテーブルに45度の角度に座っていたら、清士が、

「それもあれだぞ。スキだぞ。」

「なにが?」

「真っすぐ座れるのになんでわざわざ横向いて座るんだ?」

「もしかしたらこれはね、モデル学校でみっちりポーズの練習したから、ポーズなんじゃないかな。そうだ、視線だってモデルって、真っ正面って見るけど、あんまり見ないじゃない。分かった、だからだ。職業病。」

37

それから清士が時々、今の営業の仕事辞めて自分の貿易の会社を手伝え、って言うようになって、でも俺、全然英語できないし、って言ったら、英語関係ない仕事もあるから、って。三回くらい言われた時から俺も少し本気で考えるようになったんだけど、俺、服好きでやってる仕事だから、って言ったら、じゃあ服、輸入するか、って本気だかなんだか分かんないけど。清士が言うには、今清士がやってる百貨店とか本屋とかの営業やってくれて、今外に出してるペーパー・ウォークやってくれたら、俺の今の給料ほどは出せないけど、少しずつ服、輸入したりとかして、それが利益出ればもっと給料出せるし、って。もう十五年近くいる会社を辞めるのは度胸いるし、服のビジネスはプロだけど、ゼロからなにかスタートさせるのって自分にできるのかな?

「服、輸入すんなら、俺、子供服がやりたい。今の会社にはないけど、俺ずっとやりたかった。」

って、俺が言うと、

「いいんじゃない?輸入のノウハウはあるし、お前には知識も人脈もあるし、もし何件か独占契約が取れればもっといいんじゃないかな?」

「父ちゃんが言ってたでしょ。俺、小さい時デパートで、女の子のドレス売り場から離れなかったって。」

まだまだマーケティングとか色々あるし、独占契約なんて取れるの?って。それから例の、どうもありがとー、って言って去って行ったファトグラファーだけど、モデル仲間の子がファッション雑誌で見たって教えてくれて、ストリート・ショットの一つで、写真はそんなに大きくなかったんだけど、俺の顔はバッチリ写ってて、清士は90度キスしてたから顔は写ってなくて、俺の髪、派手だから結構目立ってた。清士は清士の母親がタンスにしまっておく用にその雑誌を買ってたらしい。顔写ってないのにね。分かんないけど。

38

その辺あたりからなんか清士が変、と言うか、ずーと黙っててみたりとか、ずーと明るく喋ったりとか、よく外に出かけて行ったりとか、清士が普段とらない行動をするようになって、そしたら清士に会ったことのあるヘアメイクさんが、言っていいのか悩んだけど、清士さん他の人と一緒で、友達と言うよりもっと親密だったって。それからその人東洋人だけど二人で英語喋ってたって。その辺から変な清士よりもっと俺の方が変になって、言ってみれば、俺の方はうちにいる時も絶対清士にスキを見せずに警戒している。清士の方は目が泳いでいて俺の方をちゃんと見てない、って言うことはスキがある。で、その晩に俺が先にベッドに入って、そして清士が来て俺の頬にキスして、首の横にキスしてきた時、俺が、

「やだ。」

って、ベッドの端の、ほとんど下に落ちそうなくらいまで離れたら、清士が少し笑って、

「なんだその、やだ、って?」

って、大きなため息をついて、結局二人ともそれで寝ちゃって、俺もベッドから落ちなくてよかった、みたいな。それから次の晩も俺が、清士と反対側を向いて寝てたら俺の腰に手を回してきて、俺なんか悲しい気分になって、泣きそうになっていると、俺のパジャマのボタンをなんかちょっといやらしい感じでゆっくり一個ずつ外して、俺も性欲には勝てなくて、それがまた悲しくて、そしたら清士が、

「なんでそんに緊張してんの?」

って、余裕な感じで言って、俺のパンツに手を入れて、

「なるほど。」

って。俺の、馬鹿みたいにたってたから。俺の腕と胸の中間っていうか腕か胸か分かんない微妙なスポットに優しくキスしてきて、清士のヒゲの口でその微妙な地点から首をつたって耳の下まで、キスとなめてるの中間ぐらいを優しく、ゆっくりそれをやられて、そしたらエッチな感じのため息が出てしまって、不覚にも。自分でそれが嫌だったから清士に背を向けて寝た振りしたんだけど、清士が俺を上向きに倒してそれで俺に覆いかぶさってきて、でもそれもすごく優しい感じで、泣きそうになってる俺にキスしてきて、また、

「そんなに緊張して、なんで?」

って、俺の乳首をなめてきて、また俺、不覚にもあえぐのとため息の中間くらいの声出しちゃって、ヤバいと思ったからかどうか知らないけど、涙が出てきちゃって泣いてるの声には出してないんだけど、清士にはすぐ分かっちゃて俺をベッドに座らせて、清士が、

「俺とすんのやなの?」

って、馬鹿みたいに優しく言って、

「やだ。」

って、俺のまだ馬鹿みたいにたってたから説得力なかったんだけど、あんまり。そしたら清士が俺の涙を手で払って、その涙のあとに、なめるのとキスの中間をしてくれて、それはすごくよかったんだけど、俺はもうこの人を失うんだな、って思ったら折角払ってくれたのにまた新しい涙がぽろぽろと、少女漫画みたいに馬鹿みたいに出てきて、さすがに清士も困惑してそうな感じで、でもずっと優しくて、優しくされるとまた涙が出て来るからって、そう俺が言ったら、清士が、

「なんで泣いてんの?」

って、それは疑問文なんだけど、あんまり答えを要求してないような聞き方で、

「お茶でも入れる?」

って、言ってくれて、俺もそしたら落ち着くかなって、上半身裸だったけど脱がされたパジャマは着ないで、それはその男より多分俺の身体の方がいいだろうと、あ、でもマッチョっぽいヤツだとかなわないかもしれない、っと思ったらちょっとクスってなって、そしたら清士が、

「大丈夫?」

この疑問文は、ほんとに答えを要求してたから、俺はでも言葉に出して言うのはなんか負けのような気がしたから、ただ、うなづいてごまかして、そしたら清士が俺の好きなバラとかなんとか色々の花びらが入ったお茶を入れてくれて、こんな優しい人がいなくなるんだな、って思ったのと、どうせこの週末は撮影ないしいいや、もうこの際泣こうと思ってマジに泣き始めて、こういう泣き方を始めると当分泣きやまないな、って清士も知ってたからかどうか知らないけど、清士を失うんだったら会社辞めなくてよかったとか思ったらまた少しクスってなって、そうするとまた清士が俺の顔をのぞき込んで、

「大丈夫?」

って、でもまた俺がうなづいて、で、清士が、

「もし言いたくなかったらいいけど、なんで泣いてんの?」

って、言いたくなかったら言わなくてもいいんだな、って俺は思ったから言わないで、ここ出たら実家には戻りたくないな、でも家賃とかちゃんと俺、しっかり払っていけるのかな、また男作って一緒に住む?どうしようって、誰でもいいから付き合って、あの馬鹿みたいなメーカーさんとセックスして一緒に住んで、でもそれはいやだな、あんな男と付き合ってもどうせ浮気されるのが落ちだな、あ、でも清士みたいな身持ちのかたそうな男でも男作るんだから、折角色んな人にカッコいい挨拶してくれたのに、って思ったら突然俺もしっかり生きていかないと、こんなに泣いてばっかりじゃあいい年した男がって、ほんとは全然そんなこと思ってなくて、俺の周り清士よりいい男いないよな、って思ったら俺、これから死ぬまでセックスできないのかな、っと思ったけどそんなわけないよな、って、どうしよう誰と寝ようかな、得意先にも俺のこと口説いてるヤツいるし、でも絶対清士の方がセックス上手いし、モデル仲間?俺まだあんまり知らないし、そうだ、ちょっとセックス上手そうな人いるか見てみよう、って急に思ったから俺の部屋でPC開けて見てたらみんなイケメンで、ってそれは当たり前なんだけど、ハーフ多いよなって、この子可愛いな、でも若過ぎるし、ほんと俺くらいの年のヤツほとんどいないよな、だから俺に仕事来るんだな、って新たな発見があったり、でも今すぐヤりたいようなヤツもいないし、あ、そうだ前に会った新人のカッコいいヤツ、スーツ似合って、あ、でも俺あいつのエージェンシー知らないや、って思ったから、適当にメジャーなモデル・エージェンシーのサイトを見てたんだけど、考えてみたら他のエージェンシーのヤツどうやって落とすの?って思ったらなんかバカバカしくなって、そんなことをしていたら不思議なことに涙も止まって、清士なにしてんのかな、って見たら、ベッドでしっかり寝てて、時計見たら一時だって、びっくりして、上にかけるの持って来てカウチで寝た。でもどの男にしようかとか考えてたらちゃんと眠れなかったんだけど、うとうとはしてて、そしたら清士が側に来て、風邪ひくからこっちおいで、って言ってくれて、言うこと聞くのもなんか悔しかったんだけど、まあ、いいや、って思ってベッドに入って、また清士に背中向けて寝たら、清士が後ろから結構しっかり腕回して抱いてくれて、お前の身体こんなに冷たい、って、俺の裸の背中に自分の頬をあててきて、それから俺のヤバイ弱点の首の横に後ろからキスをやられて、ヤバいって思って油断したら、もう俺の身体の緊張がとけて、いつものスキだらけくらいになって、清士が俺のことをまだその首キスが終わらないうちに俺の身体を上向きにして、少し眠かったのもあってボーとしてたら、清士が俺のくちびるを自分のくちびるで開けてディープ・キスしてきたんだけど、清士の舌は俺の舌求めてたんだけど、俺の舌は全然動かなくて、でもキスはしてたんだけど、そしたら清士は俺の頭をちょっと子供にするみたいになででくれて、それで二人で寝た。

39

朝起きたら朝食のいい匂いがしてて、清士が、

「今日ちょっと表に出よう。」

って、言うんで、

「どこに行くの?」

「いつも行くホコ天辺り。」

で、俺もあそこの人がメチャ多い馬鹿みたいなとこ、大好きだったんで、異論もなくスタイルもバッチリ決めて、それで出かけた。もう去ってく清士の好きなカッコをなぜかして、さわやか系のスーツと立てた髪。で、こないだキスしてんのを撮られたカフェに行って、また席がなかったから立ってアイスコーヒーを飲みながら器用にストローを破壊しつつあった俺に、清士が、

「またやってるね。」

って、笑って、笑い顔が素敵だな、って、もうこんな人に出会えないだろうな、って考えてて、このストローもう使えないんじゃないかな、って、試してみたら意外と機能は保持してて、清士が、

「それ使えるんだ、まだ。」

って、笑って、そしたらそこに誰か清士の方を見て、おー、清士、って声かけてきて、清士が、

「この人、俺が高校の時英語教えてもらってた先生で、ケビン。」

俺がしばらく固まってたら、そのケビンが、

「初めまして。」

って、言うんで、俺も握手して、そしたらそれからすぐ、白人の人が入って来て、ケビンが、

「僕のボーイ・フレンドだよ。レイっていうの。」

って、言うんで、また握手して。そしたらケビンが、二人はカナダ人で観光で来てて、明日帰るんだって。ケビンは日本人なんだけどあっちで育ったから日本語あんまり上手くなくてゴメンね、って。考え考え喋ってるけど、俺のために一生懸命日本語で話してるんだなって、いい人、って。そしたらケビンが、清士に、

「清士のハイスクール・スウィート・ハートはとてもイケメンだね。」

ハイスクール・スウィート・ハートってなんのこと?って思ったけど、このことはすぐ忘れちゃって、二人はそれから秋葉原にお土産買いに行くから、って割とすぐ行っちゃったんだけど、別れる時ケビンが、これエンゲージ・リングだよ、って見せてくれて、レイとはもうすぐ結婚するんだよ。君達も結婚したくなったらカナダにおいで、って言ってさようならをした。それからまた清士とぼちぼち歩いて、俺がボーっとしてる時に清士がなんか花屋に入ったなー、なにしてるんだろ、ってボーっとしてたら、道路にひざまずいて、バラのブーケをくれて、俺が最初笑ってそれから泣いて、そしたら清士が抱いてくれて、一目もはばからず。そしたらあろうことかまた新聞のフォトグラファーが来て、もう、いいやって、ハッピーだったし、ちゃんとポーズをとってあげて、清士はまた横顔だけで、俺の肩抱いて俺は花と涙と一緒に写ってて、その写真はどうなったのか知らないけど、そのうち誰かが見付けて教えてくれるでしょ。で、それから二人で街を歩きながら、俺はまだボーっとしがちでっていうか、いつもそうだけど、バラがいい匂いで、

「花って不思議だね、人をハッピーにさせるんだね。」

「よかったハッピーで。」

「ゴメンね、夕べ。もう清士に会えないって思ったら、泣けてきて。」

「なんでそんなこと?」

そんなことしてるうちにホコ天も終わって、急に車がたくさん入って来て、清士と歩きながらアイスクリーム食べてまた人目もはばからずキスしながら、お互いの舌なめて、俺のはメロンで清士のはクランベリーで、俺が、

「清士の舌、クランベリー色になってる。」

と言って、俺がそのクランベリー色のとこをなめて、清士に俺の舌メロン味する?って聞いたら、する、するって。で、俺が、

「あのね、知り合いの人がね、清士のこと誰かと一緒だったって、親密そうだったって。」

「あー、だから。」

「そう、ゴメンね。」

「いいけど。」

「ゴメンね。」

「いいよ。悪かった、俺も。」

「なんで?」

「昔、俺ちょっとケビンのこと好きで、なんにもなかったんだけど、想い出して親密そうに見えたんだよ、きっと。」

なんか納得できない部分もあったけど、あっちは指輪してるし、明日帰るし、いいや、って思ってもう忘れよう。でも今回のことで、俺、清士いなくなったらヤバいまずいことになるな、って清士のお父さん早く亡くなったっていうけど、清士もそうだったらどうしよう?なんてことまで考えて、うちに帰ってまで考えてて、俺ってそんなに非力なのかな、一人じゃ生きていけないのかな?いい年の男が?清士が俺から去って行ったら?目の前にこんなに綺麗なバラがあるのに?清士が、

「なに真面目な顔して考えてんの?」

「別に。」

「なんか怪しい。」

俺は怪しいのはそっちじゃん、って、わけわかんないことを、バラに鼻突っ込みながら考えてて、あんまり考えてるとまた泣きたくなるし、そうなるとよけい怪しく見えるし。清士が俺の食べかけの夕食を片付けようとして、

「それ食べるの?それとももう終わったの?」

俺はまだ、バラに鼻突っ込みながら考えてて、

「あ、まだ食べる。」

清士は笑って、

「お前はクレージーだよ。」

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それからベッド・タイムの時間が近付いてきて、多分顔にヤバい気持ちが出てるんだろうな。清士がチラチラこっちを見てて、気付かない振りはしてたんだけど、自分でも自分が情緒不安定だなって分かってどうしようって、急に泣き出すパーターンかなこれって、笑いはしないと思うけど情緒不安定ってウェブ辞書まで引いてしまって、こうゆうのって母親譲りなのかな、でも俺、母親のこと知らないし、うちには写真一枚ないし、そう言えばこないだ伯父さんのとこで写真見せてもらえばよかった。正月とかまた行ってみようかな、もっと親戚に会えるかも。孫までいるって言ってたな。でも、うち俺はこうだし上の弟もああだし、父ちゃんに孫できるの随分先だな。って、そこまで考えてたら、清士が、

「なに考えてるの?」

「いや、そんな人に話すようなことでは。」

「なに?」

「あの、俺の生みの母には孫がいるけど、うちは俺がこうだし、上の弟もああだから、孫は当分できないなあ、って。」

「なんでそんなこと考えてんの?」

「なんでだろ?あ、俺がね、こうやってすぐ泣いたりするのは情緒不安定で、うちにはそういう人いないから、きっと母親譲りなんだろうなって。」

「お前、そんな風に気になるんだったら、会いに行ってくればいいのに。」

「でも、日本海側だって。」

「新幹線で行けばすぐだろ。」

「会ってくれるのかな。」

「そりゃ、会うだろ。」

「今まで一回も会いに来てくれなかった。」

「事情があるんだろ、色々。俺達一緒に旅行したことないし、日本海側行ってみたいな。」

で、俺はまだそれは先の予定みたいに考えてたら、清士が伯父さんに電話して色々段取りをつけてくれて、びっくりしているうちに、気が付いたら来月行くことなっていた。清士の方がよっぽどエキサイトしていた。

「温泉旅館に泊まっていっぱいエッチしような。」

だって。それからほんとにベッド・タイムになって、俺ちゃんと清士の身体を受け入れられるのかな、って考えてたんだけど、その晩清士は俺のこと、まるでどっかのお姫様みたいに抱いてくれて、そして俺は、どんだけ清士のこと愛してるか、って気付いて、清士に、ね、俺、清士のこと愛してる、って言ったら、俺の頬を犬みたいになめて、俺も七音のこと愛してる、ずっと一緒にいような、って言ってくれて、俺は、うん、って言って、俺の好きな清士の肩に抱き付いて、うん、ずーと一緒にいたいって。

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それで俺は有給と週末を合わせて清士と旅行に出た。俺より清士の方がはしゃいでて、俺は時間が経つにつれて色々考えそうになるから考えないように、と思うんだけど、口数は少なくなっていった。で、俺が、

「あとどのくらいで着くの?

「あと40分くらい。」

「降りたら俺達どうするの?」

「新幹線の駅まで誰かが迎えに来てくれるって。」

「え、これって新幹線だったの?」

「そうだよ、早いだろ?」

って、俺の頭を撫ででくれた。それでまた撮影の関係でまだ髪があの派手なプラチナ・ブロンドで、変に思われたらどうしよう?って、言ったら、

「大丈夫、俺が説明してやる、仕事だって。」

「帽子かぶってくればよかった。」

「買えばいいだろ。」

「あ、でもお互いの顔知らないのに、どうやって会うの?」

「聞けばいいだろ。」

で、それから窓の外も見ないでずっと手を足の上でモゾモゾ動かしてたら、清士が俺の手を握ってくれた。そしたら俺がほんとに酸欠みたいになっちゃったから、清士が水飲ませてくれて、しばらく膝枕で寝てたんだけど、そしたら清士が、今晩は温泉泊まりだから、そのことだけ考えてろ、って。新幹線だって知らずに乗っていた新幹線を降りて、清士の陰に隠れて改札を出ると、それらしい人が多分旦那さんと一緒に来ていて、清士は電話で話してたこともあって、普通に挨拶してたんだけど、俺はなにも言えずに立ってたら、母らしき人が、静かな声で、

「七音?」

って、声かけてくれて、俺は泣きそうな顔見られたくなかったから、下向き加減でいたんだけど、俺、背が高いから全然その意味なくて、そしたら母も背が高くてそれは予測してなかったから、三十年以上振りに会う生みの母に言う最初の言葉にしては変だったんだけど、

「背が高いんですね。」

って、言ったら、母も、

「七音ちゃんも背が高いね。」

って。ちゃん付で呼んでくれるとは想像してなかったから、少しうろたえてると、旦那さんが、

「うちの子達は女でも随分背が高いよ。」

って、笑ってて、そしたら清士が、

「お子さん二人女性の方ですよね。」

って、聞いたら、

「そう、娘が二人いて、孫も女二人だよ。」

うちは男三人で変なのって思ってたら、お腹空いてるか、って聞いてくれて、でも俺達新幹線の中で食べてたから、じゃあもう家に行くかって、いうことになって、みんなすごい好奇心丸出しで待ってるから、って。車の中で清士に、

「俺って妹二人いるんだ。」

って、驚いたように言ったら、清士が、

「もうすぐ会えるよ。」

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俺、妹二人と会う時までは緊張してたんだけど、その子供二人はまだ小学校の低学年くらいで、俺そのくらいの大きさの子大好きだから、そこで緊張が取れて、このピアノ誰が弾くの?って聞いたら二つ手が上がったから、弾いてくれる?って聞いたら最初は恥ずかしがったけど、二人共可愛い曲を弾いてくれて、ありがとう、素敵だったよって。そしたら、

「七音の字、七つの音って、変わってますよね。」

って、清士が言って、そしたらやっぱり自分がピアノ弾きたかったから付けたんだって。それで清士がタブレットで俺のモデルの写真をみんなに見せたりして、俺は二人の女の子達と着せ替えごっこに専念してて、そしたら母が七音は子供の時も着せ替えごっこが大好きだった、って。そこには長いこといて、そしたら母が、私の親友に会わせたい、って、そこからすぐの大きなお寺の奥さんだって。

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素晴らしい日本庭園のある由緒あるお寺で、中を一回り案内してくれて、清士が、感動していた。それから奥さんと少し話して、じゃ、ゆっくり三人でお話ししなさい、って奥さんはどっかに行ってしまわれて、清士が、

「どうしてこんなに遠い所へ。」

「結婚したのはあっちなんだけど、こっちに主人の仕事が決まって、子供が幼稚園に入る前です。」

「七音がよくハーフか、って聞かれるそうなんですけど。娘さん達もお綺麗だし。」

「うちって三代前まで京都だったんですって、そしたら先祖に外国から来た人がいてもおかしくないかもしれないけど、もう昔の話しだから誰にも分からないって。そう言えば七音が小さい時、眼医者に連れて行ったら、お医者さんが、この子の目は日本人じゃないねって、旦那さん、どちらの国の方ですか?なんて聞かれたことがあって、不思議だなって。」

そして少し間があいて、母が、

「七音ちゃん。」

って、またちゃん付けで呼んで、

「お母さん、貴方のこと置いて行ってゴメンなさい。」

俺は泣いてたけど、母は今日一回も泣かなくて、やっぱり俺がすぐ泣いたりするのは母譲りじゃなかったのかな、って思いながら、俺やっと、泣くのと泣くのの間をぬって、

「昔の話しだから。」

って、言えて。それから清士の挨拶が始まって、

「僕達、高校の同級生で、付き合ったのは最近なんですけど、少し前から一緒に住んでて、七音さんのことは僕が絶対幸せにします。」

って、言ったら、母は、最初少しボーゼンとショックの中間をしてて、冗談で倒れるマネをして、それから少し笑って、

「あら、そーなの?まあまあ、どうぞよろしくお願いします。」

そしたら清士が、

「あの、もし差し支えなかったら。どうして離婚されたんですか?」

「それは、私が悪いの。他の人を好きになっちゃって。七音につらい思いをさせて。貴方のお父さんは全然悪くないから。私はいつも死んだら天国に行けないな、って。」

「僕、七音の家族にも会いましたけど、全然普通に幸せですよ。気にされることないですよ。二人弟さんがいて、お母さんも楽しい人で。」

「そうなの。うちは女ばっかりなのにね。」

「七音、最近、自分はすぐ泣くのに家族にそんな人いないから、きっと母譲りかもって言うから、会いに行けばって。でもお母さん全然泣きませんよね。」

「そうね。七音が小さい時はなんで置いて来ちゃったんだろうって、しょっちゅう泣いてたんだけど、あの時一生分泣いたのかも。」

そこで俺はもう号泣状態で、でも母は全然涙一つ見せなくて、恥ずかしかったんだけど、清士の胸にすがって泣いてて、母が来て背中をさすってくれて、大分頑張って泣き止もうとしたんで泣き止んで、俺が、

「俺、いつまでも女の子みたいに泣いて。」

って、言ったら、母は、

「いいのよ、泣いても。いい旦那さんが側にいてくれるから。」

って、清士のこと旦那さん、って言ったのがおかしくて笑ったら、

「あら、旦那さんって言うんじゃないの?」

って、母も笑って、で、俺が、また会いに来てもいいの?って、聞くと、

「明日ね、貴方達の泊まる旅館でお昼食べましょ。」

妹達と小っちゃい子達に別れを告げて、また駅まで送ってもらって、温泉旅館に行った。

44

そこは大きな温泉で、清士がどんだけお金使ったのかなって、ちょっと怖くなるくらいのところで、清士に俺もお金出すから、って言ったり。贅沢な温泉で結構遅くまで人がたくさん入ってたから、俺は清士から離れないようにしてたんだけど、ちょっと離れたスキに、また、君エロいね、俺の部屋に来ない?って言われたけど、さすがに慣れてきて、僕、彼氏と一緒だからって、可愛く微笑んでたら清士が、誰と喋ってんの?って。そしたらその人は素早くどっかに行ってしまった。まったく、目が離せない、って清士に言われて、ケラケラ笑ってたら、頭を撫でてくれた。

「またエロいって言われた。もう慣れた。」

「え、どのヤツ?」

「いいよ、別に。俺の部屋に来ない?って。」

「で、なんて言ったの?」

「僕、彼氏と一緒だからって、可愛く微笑んだの。」

「ふーん。」

清士は納得できないようだったけど。そしたら、俺が、

「彼氏じゃなくて、旦那さんって言えばよかったかな。」

って、言ったら、今度は頭を叩かれた。部屋に帰ったら食事の支度ができてて、ここでもやっぱり、清士どんだけお金使ったのかな、って心配になったけど、清士が、あと二晩あるけど、温泉付きの部屋に変えてもらおうか、って言うから、いいよそんなのどうでも、って言ったら、またお前が変なヤツに変なこと言われたら、やじゃないって言うから俺が、だから今度は旦那さんと一緒だから、って言うから、って言ったら、座布団を投げられた。それからフカフカのお布団を敷いてもらって、そこにあった観光案内の本を見たりとかして、清士はなんかテレビ観てて、明日レンタカーしような、って。しっかり予約の電話までしてた。その部屋、海が見えるの、で、そこでも清士お金使ったんだな、ってありがたくなって、清士、って呼んで、

「清士、お母さんに七音は僕がきっと幸せにします。って言ってたけど、俺もうとっくに幸せだよ、清士のお陰で。」

って、言ってそしたらすぐテレビ消して、電気消して、俺はまだ寝惜しくてフラフラしてたんだけど、急にタックル仕掛けてきて、あれって思ってると、浴衣を脱がされて、ちょっと乱暴に布団に押し倒されて、やっぱり旦那さんって言われたからかな、って思ったらまた笑ってはいけない場面で笑ってしまって、清士は全然気にしないで、俺に長い長いロマンティックなキスをしてくれて、身体の色んなとこに触ってくれて三つ目のボタンのとこにキスしてくれたら、思わずエッチなため息が出てきて、清士がまだ浴衣脱いでなかったから俺が脱がして、帯ほどくってエッチだなって考えてたら、よく時代劇でそういうシーンあるな、って、悪いお代官が女の人の帯ほどいて、でもすぐ誰かが助けにくんの。って考えてたら、メチャ、スキがあって、気が付いたら清士が俺のをフェラしてて、また気付いたら俺、メチャメチャやらしい声出してて、なんで?と思ったんだけど全然声がやまなくて、清士も俺の声がすごいから、

「大丈夫?」

「分かんないけど、すごい感じる。」

って、またすごい声出ちゃって、しばらくそのままフェラされてたんだけど、俺が死にそうな喘ぎ声を出すから、清士がおれのバックを突いてきて、それは最初は大丈夫だったんだけど、すぐにやっぱり死にそうな喘ぎ声になってきて、また清士が、

「どうしたの?」

って、心配そうに聞いてくれて、でも俺は全然なんでか分かんない、って、

「全然分かんないけど、すごく感じる。」

って、言ったらもう心配とかはしてなかったみたいなんだけど、とにかく俺が気持ちよくて叫んでるから、清士も結構早くイっちゃって、俺はまたフェラしてもらってたんだけど、あんまり感じるんで無意識に足閉じちゃって、そしたら清士が俺の足広げて、それを何回か繰り返してそれで俺がイく時またいつも出ないような声が出て、清士が、

「どうしたんだろうね?」

って、不思議そうに言って、そしたら俺が、

「多分、温泉の中になにか入ってるんだよ。」

自分で言ったら自分でおかしくなって、ちょっと笑ってたんだけど、意外と清士は気にしてなくて、二人で裸で抱き合って、フカフカの布団だし、俺はすぐ寝てしまった。清士のことは知らないけど。

45

それから、次の日、朝ご飯を部屋で食べて、下の階にお土産物やさんとかいっぱいあって、館内に小川が流れているようなとんでもない贅沢な旅館で、そして母と旦那さんが来てランチを食べて、旦那さんがそこらを案内してあげようか、って言ってくれたんだけど、俺はもう十分よくしてもらったから、って思ったから、どこ行ったらいいかな、って聞いたらあちこち教えてくれて、旅館の案内に載ってないとこばっかりで、今日の母を見たら、昨日より少し派手な格好をしてて、この人はどこで出会ったとしても素敵だなって、思える人だと思って、母にもそう言ったら、

「ありがとう。」

って、最後に別れる時手をぎゅって握ってくれた。そしてあっちに行く用があったら連絡するからって、それで別れる時の俺のちょっと寂しげな顔が、小さい時と全く同じよ、って。車に手を振って別れて、しばらく俺が泣いて、それからレンタカーで色々海の周りを走って、まだ時々泣いてたけど、清士が頭を撫でてくれたし、いいスポットを見付けて、二人で座ってずーっと海を見て、暗くなって、そこは温泉街で、そこら辺の他のホテルも少し見て回ったけど、やっぱり俺達のホテルが一番いいみたいだった。旅館に帰って、窓の側でボーっと座ってたら清士が、

「なにしてるの?」

って、それから、

「夕べのお前すごかったよな。」

「うん。」

「あれはなんだったの?」

「分からない。」

「今晩もああかな?」

「それはないと思うけど。二日目だし。」

「二日目だし、ね。」

で、また温泉に浸かって、

「ありがとう。俺一人じゃとてもこんなとこまで来れなかった。」

「俺もさ、好奇心強いから、なんか七音のほんとの母親見てみたかったし。」

「どう思った、俺の母親?」

「品のいい人だよ。お前が言った通りだよ。どこで出会っても素敵な人だな、って思うよ。」

それからまた贅沢な海の幸、ふかふかの布団。で、俺が、

「温泉に、美味しい食事、ふかふかの布団に、清士、贅沢の極み。」

「じゃあ俺は贅沢な温泉と、食事と、布団と、七音。」

また二人で裸で抱き合って、清士が試しに、と言って、俺のペニスに触ってきて、

「どう?」

「昨日よりは普通。」

「でもやっぱり、叫ぶモード?」

「うん。そんな感じ。」

「そうか。」

「温泉になんか入ってるんだよ、絶対。」

それで俺、布団にもぐって清士のをフェラして、清士も清士らしくない大きな声出してて、それで布団から出てきた俺の身体にキスしながら俺のに触って、俺も知ってたけど俺のすごくたってて、清士が触っただけでかなり声出してしまって、俺、清士に入れたかったんだけど、清士が入れたがってたから、いいや、っと思って、そしたら清士が俺の好きなスポット巡りで、まず俺の髪に触って、清士の好きなプラチナ・ブロンド。それから俺の身体をちょっと傾けて、俺の耳の下と肩のくらいのとこを後から少し抱き締める感じでキスしてくれて、それだけでセックスしてる時みたいな声が出て、それからまた俺の身体をもとに戻して、ボタン三つのところと乳首と同時に責められて、清士のが欲しくてたまらなくなって、入れてって言ったら、すぐ入ってくると思ったらそうじゃなくて、また清士は俺のペニスをくわえてきて、また、ね、入れてって言ったんだけど今度は清士が俺の手を取って、自分のペニスに当てて、そしてまた布団にもぐって結構強めに下のとこをつかんでくちびると舌でしてたら、清士もいつもより声を出して、それからまた俺が、入れてって、ねだって、やっと入れてもらって、仰向けで足開かせてそこに入れてきて、清士のがあんまり硬いからすごい声出しちゃって、それに清士があんまり激しく速くしてきたから、でもその時はもう声出すどころじゃなくて息するのが精いっぱいで、もうだめ、って言ったんだけど清士はやめないで、自分がイくまでそんな感じで、それで清士が俺の中の深いとこでイって、清士が抜く時に途中ですごい感じるとこに触っちゃって、俺が叫んだらまた清士のが大きくなってきて、そしたら今度は俺をうつ伏せにして、俺のケツをすごい高いとこまで持ち上げて、そのまま俺の中に入れて、もうその時はすごい声でよがってて、自分には止められなくて、それで清士が出す時も入れる時も両方すごい感じて、それで清士がまたイって、で、俺が清士に入れて、中があんまり熱くて締まってたから俺はすぐイちゃって、それでまた二人で裸で寝た。清士と裸で抱き合うといつも気持ちよくて、安心して、清士の背中に手を回して、それで二人で寝た。

46

東京に帰ると変なことになってて、モデル・エージェンシーの社長に呼ばれて行ったら、いつも俺の出てるファッション誌で、ヌードやってくれないか、って言ってきてて、もう時間もないから一日やるから考えろって。それは女性ファッション誌でやるようなセクシーな男特集、みたいなノリのヤツで、俺の他には、名の売れた俳優さんとかが何人かいて、全く無名なのは俺だけ。なんで俺なんですか?って聞いたら、その雑誌で色々捜してもピンとくるのがいなくて、編集部でみんなが、うちの雑誌に既に出てんのいるじゃない、ってことになったんだって。帰って清士に、

「名前も出るって。」

「でもお前いつも下の名前しか使ってないじゃん。」

「そう、だから七音って出るって。」

「いいじゃないか、お前のエロさが世間で認められたんだから。」

清士は意外と全面乗り気で、それで、

「メンズのファッション誌がやることなら、大したことないだろう?」

って、いうのが大きな間違いで、ロケーションが海の見える豪華リゾート・マンションの広いバルコニーで、俺のことスカウトしてくれた剣が来てくれて、ファトグラファーも他のスタッフもいつもと違う人で、最初はこんなことやったことないから、もちろん緊張してて、でもだんだん雑誌の人とファトグラファーとでポーズとか決めてくれて、不思議だけどまた首の横見せて、って言われて、でも顔はカメラの方見て、目はカメラ目線って何回も言われたんだけど、いつもみたいに目が泳いじゃって、でもそこがフォトグラファーの偉いところで、カメラとセックスしてるみたいにカメラの方見て、って言われて、やっとそれができて、フォトグラファーが、ちょっとたってみてもらうことできますかね?ってややお願いする口調で言うんで剣が、たつってアレがたつってことですよね?って、聞いたらそうだって、で、剣が、モザイク入るんですよね?って聞くから、雑誌の人がその予定です、って。剣は自分がモデルできそうなくらいイケメンで、その剣が俺がヘルプしてやるからいいだろ、って、別に異論はないので黙ってたら、剣は清士くらい上手なキスをしてくれて、ゆっくりキスを俺の身体に流して時々舌も一緒になって身体をなぞって、その時の俺の顔をカメラが撮ってて、またカメラ見て、って言われて見たんだけど、全然焦点が合ってないのを俺自身でさえ気づいてて、剣が俺の両肩をつかんでカメラに見せてた側じゃない方の首にキスして、そしたら俺が思いっ切り喘いじゃって、これは温泉に行って以来のヤバイ感じ方で、剣がまだいるのにカメラのシャッターの音がしてて、ヤバイと思ったんだけど、もう、いいや、っと思って、剣が俺のペニスの一番上のところにキスして、そのままそこらへんを口に含んでなめてくれて、でもそのなめ方が普通じゃなくて、舌でグッと強く押し付けるようにするの、で、それで俺気持ちよかったけど、なんて言うの、悶えちゃって、高速のシャッターが切られてるの分かって、ヤバいなって。そこで雑誌の人がフェラ止めようとしたんだけど、フォトグラファーの人が、もう少し大丈夫ですよ、って、なにが大丈夫なのか分かんなかったけど、そしたら剣はそこでやめて、そこからはほんとのフル・ヌードで、自分はこの地点では、一人でなにもできないほどの感じ方だったから、他の人がポーズつけてくれて、少し俺のがなえてきちゃったから、剣が俺のを手で触って、そしたらまたすごい声出しちゃって、その間もカメラ見て、って言われたけどできなくて、顔だけこっちね、って言われてもできなくて、カメラとセックスしてるみたいに、ってまた言われて、知らないけど、それ言われるとちゃんとカメラを見るんだけど、まだ焦点合ってなくて、でもそれに関してはなんにも言われなくて、剣に、ダメ、それ以上したらイっちゃうって喘ぐのと喘ぐのの間の時に素早く言って、そしたらまた雑誌の人とフォトグラファーが、ポーズ決めてて、俺もあとでびっくりするくらいの、かなりフルでたってんのに足を広げさせられたり、なに撮ってんのか分かんなかったけど、背中とかお尻とか撮られて、なめるように、ほんとにカメラとセックスしてるみたいになって、そしたら突然終わったよー、って雑誌の人が、今までと打って変わって優しく言って、ここが問題だったんだけど、みんなは部屋の中に入って、撮ったヤツの確認とかしてて、俺とかはまだバルコニーでボーっとしてて、そこ太陽がすごく当たってて、別にそれは言い訳じゃないんだけど、剣が、どう?って聞いてくれて俺がまだなにも言えずにボーっとしてると、なぜか俺の三番目のボタンのところにキスしてくれて、やっぱりそこが匂うのかなって考えてると、剣が、俺のまだ半分よりちょっとくらいたってるのを見て、手と口で最後までイかせてようとしてくれて、俺があんまり大声出すから、中から雑誌の人とフォトグラファーの人が見に来て、終わりだ、って言ったにしてはまたちょっとシャッター切ったりしてて、それで俺が割とすぐイって、そしたらその顔も撮ってて、その時は俺の顔の真上から撮ってた。で、ほんとに終わって、剣がいろいろ飲物持って来てくれたりとか、それで大分落ち着いて、俺が剣に、

「あの最後のヤツ、もし載ったらヤバイ。彼氏に絶対イってるのバレる。」

「まあ、なんか言われたら俺に言って。あれは仕事だからって。」

そしたらファトグラファーに、男性で、しかもただのスチール写真であそこまで騒いだ人は初めてだって、笑われて。車の中でもまだ写真撮ってて。

47

社長に呼ばれて行ったら、雑誌出る前にチェックしてくれって写真送って来たって、珍しいことに。で、それ見たらすごいのばっかりで、これじゃあ、先に了解取りたくなるよな、って写真ばっかりで、社長が、

「これ表紙に使いたいんだって。」

「でも結構有名な俳優さんとか載るんですよ。なんで俺が表紙?」

「エロいからじゃないか?」

え、また?って思ってると、

「なんでも、特集のタイトルが・・・おい、剣、なんだっけ?」

よく見たら剣がいて、少しまたエロい記憶がよみがえってきて、そしたら社長が、

「君、その顔、エロいな、やっぱり。」

って言うから俺は、

「なに?今、俺なんかしました?」

って、聞いたら、清士と同じ、そのくちびるをかむとこと、目が泳いでるとこだって。で、剣が、

「タイトルは、目指セクシーな男、だそうです。」

「俺みたいなの目指してもらっても困りますよね。」

って、言ったんだけど、結局、社長、雑誌の選んだショット全部オーケー出しちゃって。剣に、

「ヤバイですよね、俺のイってる顔載りますよ。」

「自分でしてた、って言えば?」

「自分でイくのと人の手でイくのと、顔全然違いますよ。」

ここで社長以下みんな帰って、剣と俺だけになって、俺は別にそこでやることも、なんにもなかったんだけど、その俺のイってる写真とか両肘ついてボーっとして見てたら、剣が来て、座ってる俺の顔を後ろに倒して、普通のキスとディープ・キスの中間くらいのをしてきて、それはヤバいって、俺、彼氏を裏切れないからゴメン、って、いつもの俺にしてはちゃんと断って、剣は最初なにも言わなかったけど、それから、

「気が変わったら言ってくれ。」

って、清士がするみたいに頭撫ででくれて。帰って清士に、かなりセクシーな写真載るみたいだよ、って心構えをしてもらって、実は表紙の写真は、撮影の一番始めに撮ったヤツで、首の横見せてカメラ目線ので、その時は全然まだ乱れてなかったからいいんだけど、中のヤツは乱れまくり。とうとうまずいな、って感じの雑誌が出て、店頭で見たのが最初で、わー、表紙だけ見て、これ結構きてるな、ヤバイわ、って思って買わなかったんだけど、清士が、え、なんで買わなかったの?って言うから、いや、だって、

「だって清士に見せるの恥ずかしいし。」

って、言ったら清士がオンラインでチェックして、それは表紙とあとちょっとしか出てないから、じゃ、俺、そこのコンビニで買って来るから他になにか欲しいものない?って、聞いてくれて、別にないよ、って。それから、本を見て、清士がなにを言うかな、って聞いてたら、

「これ、結構、抜けるな。」

って、ひとこと言っただけだった。意外にも。そしたらその晩、俺が寝てたら清士が来て、パジャマの上を半分脱がして、首全体を責めてきて、そのまま俺をうつ伏せにしたら、まだパジャマ全部脱いでないからなんか手かせみたいになって、俺の肩とか普段あんまりしないようなとこを責めてきて、俺の耳元で、

「お前あの写真撮る時、誰かとヤってただろう?」

俺、かなり動転して、なんて言っていいのか分からなくて、

「あの顔、お前相当いい気持ちでヤってるよな。」

俺が少しつらくなってきたからパジャマ脱ごうとしたら清士が止めて、

「あれ、大分声出してる顔だよな?誰にヤられてあんな声出してた?」

そしてやっと俺のパジャマの片方の袖だけ脱がしてくれて、

「誰に向かってあんな顔してた?」

俺はまだうつ伏せなのに、清士は後ろから手入れて俺の乳首をヤってきて、俺が感じて声を出すと、

「お前、誰にヤられてその声出してた?」

また耳元でささやいて、お前、なんか言え、って、今度はパンツを脱がされて、声を出さずにいられないみたいにお尻を愛撫されて、それで声を出して、そして、清士が、信じられないくらい硬いペニスを、容赦なく俺のケツの奥まで突き刺して、俺はもう耐えられる限界を超えてて、大きく喘いで、清士は自分のペニスを俺のケツの中の壁面と俺の奥でこすって、清士も少し喘いでたけど、俺はもうずっと前に限界を超えてて、俺は清士のを自分の中に感じるのが気持ちよくて、大きな声を出してたら、清士が俺の中でイって。今度は俺のペニスを責めてきて、

「誰にヤられた?」

でも清士は、わざと俺の先の方の俺が一番感じるところは絶対触ってくれなくて、じらしてる感じが我慢できなくて、自分で触ろうとしたら、手を払われて、

「誰かにヤられたんだろう?」

俺が少し泣き声を出して、

「気持よくイかされたんだろ?」

そして清士が、まだ先の方には触ってくれなくて、舌の先で俺のペニスの裏側を根元から上のギリギリ、カリの辺りを触らないくらい、それをされて、

「そいつと俺とどっちが上手い?」

そこら辺でとうとう俺が泣き出したんで、やっと清士が口でイかせてくれて、それで俺が泣きながら、それは雑誌の人が半分たったの撮りたいから、ってそしたら事務所の人がしてくれて、でもその人、これは仕事だからって。

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そしたらそいつに会わせろ、ってことになって、いやだったけど剣に電話して、ここの近くのカフェに来てもらうことになって、清士がいきなり、貴方、七音なにしたんですか?って、喧嘩腰で、それで剣がほんとにあったことだけ言って、清士があれは、あそこまでやらないといけないような撮影だったんですか?って、そしたら剣が、自分もあそこまでセクシーな写真だと思ってなくて、編集者とフォトグラファーの意向だったから。そしたら清士が、だったら、途中でなにか言うのが貴方の仕事ですよね?って。それに関しては自分の落ち度です、って剣があやまって、そこまではまあ、よかったんだけど最後に清士が、お前まだ七音とヤりたいんだろ?って、いきなり、お前呼ばわりして、そしたら剣も、高ぶって、

「それは、ヤりたいですよ、ヤれるもんなら。」

そこで清士が立ち上がったんで、剣も立ち上がって、

「でも、はっきり断られましたよ。彼氏を裏切れないからって。」

次に剣に会った時、清士が失礼なことしてすいません、ってあやまったんだけど、剣は、気にすんな、あれは過保護な親みたいなもんで、どうとか言ってて、俺はこの人やっぱりまだ心は平静じゃないな、って思ったんだけど、今度の撮影では清士さん、よかったら一緒に来てくれていいです、って。なに、今度の撮影って?って聞いたんだけど、あの雑誌が出た後、週刊誌の取材がいくつか来て、社長がこれだけは出ろ、っていうメジャーな週刊誌のカラー・グラビアで、

「そんなの普通、女でしょ?」

俺がびっくりして、剣も、

「週刊誌もなにか新しい素材、捜してるんじゃないかな、って社長が言ってた。」

剣が、撮影でなにをどう撮りたいのかマジで全然分からないから、清士が来たいなら剣の方は全然構わない、って伝えたら、清士は本気で、じゃ、行くから、って。

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それで、撮影なんだけど、週刊誌のスタッフってファッション誌と全然違って、なんか怪しい感じのただよう人達で最初から、じゃあ全部脱いで、って。剣が全部ってアンダー・ウエアもですか?って、聞いたら、そうだ、って。そしたら週刊誌の人が、

「こないだの貴方の出てる雑誌見ました。それで貴方、下手な女よりよっぽどセクシーだと我々思ったので、今日はあのくらいのヌードで、写真の上にインタビュー記事が載るんで、それもあとでやりましょう。」

そのフォトグラファーだけど、ああ、この人いつも女の裸撮ってる人だな、って俺も思って、それから剣もそう言ってて、ポーズとかもメチャ女くさい感じで、剣が、

「載るの一枚だけですか?」

そしたら週刊誌の人が、それはまだ分からないけど普通は一枚だって。下半身どこまで入れるか、っていう話しになって、こないだあそこまでやったんだから、あのくらいやりましょう、って。女だったら毛までだからあれだけど、男は性器まで見えちゃうから、女ばっかり撮ってる人が俺のことどう撮るんだろう?そしたら案の定週刊誌の人が、フル勃起でいきましょう、って言うから、剣が来て、

「どう?」

「俺は大丈夫。」

剣が、

「おたくモザイクかかるんでしたっけ?」

って、聞いてくれて、そしたら週刊誌の人が、それは場合によりけりだ、って。やっぱり週刊誌って怪しいな、って思ってると、剣が、

「ってことは、モザイクかからないかもしれないよ。」

「俺は別にそれはいいよ。」

さっきの、フル勃起という言葉がおかしくて笑ってたら、フォトグラファーが、

「君、乳首すごい立ってるけど、女性ホルモンとか打ってんの?」

「そんなこと全然ないですよ。」

「そうだよな。声、男だし。」

だって。やっぱりこいつ上から目線だな、って興味深く思って。剣が清士にそのフル勃起をお願いして、俺、普通なら、清士がちょっと触っただけですぐフル勃起になるから、清士は俺のペニスに触りながら、届く範囲で俺の好きなスポットを、キスとなめるの中間くらいでしてくれて、それですぐフル勃起になって、俺がまだ笑ってたら、それで何枚も撮ってくれて、じゃあペニス持ってとか、その辺からだんだんエッチなモードに入っていって、自分のペニス持ってると、なんかマスターベーションしてるような錯覚に陥って、少し持つ手が動いてたら、フォトグラファーがお前、ほんとにエロいな、って。そこら辺でそのフォトグラファーも女と男の違いを理解してきたみたいで、あんまり馬鹿みたいなポーズは言わなくなってて、そのスタジオはその週刊誌専用らしいんだけど、男の匂いがむっとして、ゲイじゃなくてオスの獣の匂いがして、フォトグラファーからもそんなオスの匂いがして、それは逆らえないような匂いで、俺のペニスを持ってる手も少しあからさまに動いてて、それにつれて下腹も動いてて、そのフォトグラファーに甘えるような表情をして、それでそのフォトグラファーは、こないだの人みたいにカメラ見てとか言わないから、俺の目も泳ぎっぱなして、そしたらフォトグラファーがカメラを持って俺のすぐ近くまで来て、なにするつもりなんだろう、って思ったら、キスしてきそうになって、そしたら剣が飛んで来て、

「ゴメンなさーい、モデルに触らないでください。」

って、言ってくれて、フォトグラファーはなんにも言わないで、深いため息だけして、また仕事にもどって、身体に触ってるポーズして、って言われたから、首と、ももと、胸と、髪に触ってるとこやって、それで終了。清士が誰も見てないとこで俺のをヤってくれて、それで服着て、フォトグラファーが、

「俺、ゲイじゃないし、男に魅力感じたことないけど、今日は理性を失いそうになった。」

って、あやまってくれて、剣が俺のかわりに、いいですよ、って言ってくれて、この時はその場で写真が決まって、俺がペニス持ってるヤツで、持ってるから半分以上隠れてて、そんな感じ。そのあと簡単なインタビューあって、モデルさんなんですよね、お名前本名ですか、背が高いですね、髪の色地色ですか、日本人ですか、休みの日はなにされてるんですか、好きなタイプは、まあ、こんな感じ。清士が剣と少し喋って、あんな素早く動く現場で、選択の余地のない状況に置かれるのはしょうがないという、見解に落ち着いたらしい。しかし、今日のお前は一体なんだ、公衆の面前でマースターベーション?って怒られて、だって触ってたら、手が動くじゃん、って。そしたらそれはお前だけだ、って。さすが週刊誌ですよ、言ったことも書いてあるけど、言ってないことも書いてあるし、セックス好きとか、それはほんとだからいいけど、撮影中にマスターベーションしたとか、ま、それもほんとだからいいけど、好きなタイプで男の名前言ったらすっかりゲイにされてるし、ってそれもほんとだからいいけど。電車の中づりのポスターに写真が出ちゃって、さすがに髪の色変えて、伊達メガネかけて、帽子まで被って通勤してた。それからまた、ゲイ・ビデオに出ないかとか、テレビのバラエティー出ないかとか、いろいろ来てたらしいけど、社長と剣でみんな断って、やったのは、水着のタイアップ広告だけで、そのタイアップの雑誌は俺の年齢層のファッション誌の中で一番メジャーなヤツだった。

50

撮影は、俺入れて三人で、あとの二人はハーフでその中の一人は俺のタイプで、それがなぜか結構近くに寄る感じのからみで、あんまり側に来られると、水着で、しかも、股間ヤバくなって、ほんとにヤバくなったからフォトグラファーの人が、男性誌ではちょっと珍しく女性で、剣に頼んで言ってもらったんだけど、俺を一番前に、ってメーカーさんが言ってるらしくて、またメーカーさんか、って思って、剣に頼んで、少し休憩させてもらって、俺ってだんだん淫乱になってきたのかなって、そしたら、その俺のタイプの子がなぜか俺と話ししたかったらしくて、近くに来そうになって、剣がちょっとヤバいから一人にさせておいて、って頼んだんだけど、ヤバいことにその子全然日本語分かんなくて、その子のエージェンシーの人も来てなくて、そしたらもう一人の子のエージェントが英語できたんで、言ってくれて、そしたらその俺のタイプの子が、ゲラゲラ笑って、You are crazy、って言ってきて、それはね、俺は十分承知してるよ、って言ってもらって、休憩したら元気になったんじゃなくて、元気なのがおさまって、今度は上手く撮影ができて、考えてみたら俺、全然泳げないのに変だな、なんで俺だったんだろう、って思ってたら、メーカーさんがサイン欲しいんだって、って、剣が言ってきて、適当にサインをでっち上げて、その人、ファッション雑誌じゃなくて週刊誌の方を見たんだって。剣が俺の出てるファッション雑誌持ってて、メーカーさんに見せてたらその人、やっぱりプラチナ・ブロンドがいいって言ってて、せっかく染めたのにまた?って思ったんだけど、今の色だって悪くないし、グレーっぽい黒って感じで、まだ結構派手だし。その時、そのメーカーの宣材全部やって欲しいって言われて、社長は喜んだけど、俺、泳げませんから、全然。もしプールに飛び込めとか言われてもできませんよ、って。で、それからその宣材やったんだけど、一人が多くて、時々女性と一緒だったり、一人の時は真っすぐ立って真っすぐカメラ目線でっていうのが多くて、あんまりこないだのタイアップみたいなチャラい感じのがなくて、なんて言うの、真面目な感じ?そのメーカーさんも、真面目な感じの人で、毎回そろそろ来るかな、って思うんだけど、来なくて、まあ、剣もいつも一緒だったし。でも若い女性のモデルさんだって一人で来てんのに、なんで俺だけ?信用されてないの?って剣に聞いたら、その通りだって。

「なにかあったら、清士さんに顔向けできませんからね。」

51

そしたら、ある日その会社のカレンダーの撮影っていうのがあって、そんな時に限って剣がどうしても他のモデルの面倒みないと、って言って、俺一人だけ行ったの。そしたら、撮影って、なんだ俺だけ?って、他の人はもう終わって帰ったあとなんだって。俺が12月で少し暗くなったところで、綺麗なクリスマスのライトをつけてる感じ。一人でこんな浜辺に来るの慣れてないから、電車乗り継いで来たし、いろいろ考えてたら、フォトグラファーの人に、クリスマスだからねー、って、楽しい顔しよー、って。クリスマスに水着きてるって、どういうシチュエーションなの?って考えてたら、メーカーさんが、なに考えてるんですか?って聞くから、そう言ったら、あんまり深く考えなくっていいですよ、カレンダーですからね、ちょっと休憩してビールでも飲みますか?って言われたけど、俺、絶対撮影の時は飲まないから断って、その時のフォトグラファーの人もまた女性で、それもこないだのタイアップの時と違う人で、女性のフォトグラファーさん好きなんですか?って聞いたら、一度女性の目を通すといやらしくなくなるからいいんだって。確かに俺なんて普通にしてるつもりでも、兄ちゃんエロいな、とか言われたし。そしたらメーカーさんが、今度はなに考えてるんですか?って、聞くから、さすがの俺も、

「俺ってそんなに顔に出ます?」

って、聞いたら。

「全部顔に出てますよ。」

って、言うから、じゃあ俺がいつメーカーさんが来るかな、って考えてるのも分かるのかな、って、考えてたら、休憩が終わって、実はすごく俺、緊張してて、フォトグラファーの女性がなんとか俺のこと笑わせようとしてるんだけどだめで、メーカーさんが、

「なにをそんなに心配してるんですか?」

でも、俺なにも言えなくて、

「剣に電話していいですか?」

そしたら剣は、あっちもトラブってて動けないって。そしたら驚いたことに、そのフォトグラファーさんを、旦那さんとお子さん、まだ小さい女の子と男の子が迎えに来て。

「ママー!」

って、二人で大きな声で叫んで走って来て、そしたら俺、わーって、自分でも信じられないくらい笑顔になって、男の子が、

「お兄さん、なんで水着きてるの?」

「お兄さんはこれから泳ぎに行くんだよ。」

「じゃあ、僕も!」

「水着を着てない人は、泳げません。」

そしたら、女の子が、

「電気がきれい、クリスマスみたい!」

「そうだよ。クリスマスなんだもん。」

「ちがう、クリスマスはまだだよ。」

「ここら辺だけ、今、クリスマスなの。」

「ふーん。」

即座に撮影終了。メーカーさんも驚いて、

「子供好きなんですね。」

「はい。年の離れた弟が二人いて。」

52

そこはレンタルのコッテージみたいなとこで、メーカーさんのあとかたずけも手伝ってあげて、車にいろいろ運んであげて、

「ここまでどうやって来たんですか?」

って、聞くから、少し黙ってたら、

「じゃあ、一緒に帰りましょう。」

一緒に乗って、考えてみたら、いつも剣をはさんでたから、この人の名前も知らないことに気付いて、

「あの、貴方のことなんてお呼びすれば?」

「朱鷺。あの絶滅寸前の鳥ですよ。」

って、にこりともせずに。そしたら、

「七音さん、彼氏いるんですよね?」

「はい。なんか大変なのが。」

「なにが大変なんですか?」

「あの雑誌のヌードやってから急に嫉妬深くなって。」

「どんな方なんですか?」

「俺の高校の同級生で。」

「じゃあ、もう長いですね。」

「付き合ったのは最近なんですけど。こないだ剣と喧嘩して。」

「剣とずいぶん親しそうですもんね。」

「俺が悪いんですけど。」

「そうなんですか?」

「俺にスキがあり過ぎるんだって。」

「確かにそれはそうですね。」

「分かってるんですけど。自分でも。」

「だからセクシーって言われるんでしょ?」

「セクシーって言えば聞こえはいいですけど、エロいって言われて、俺それあんまり好きじゃなくて。」

「確かに俺の見た週刊誌でも、エロいって言葉使ってましたよね。」

それからしばらく二人共黙って、かなり都内に差し掛かって、

「七音さん、どこですか?」

「朱鷺さんは?」

「俺はいいですよ。」

「銀座から近いとこ。」

「分かりました。」

そしてまた二人が黙って、なんかこの人って沈黙してるとセクシーだなって考えてると、

「今なんか俺のことチラって考えたでしょう?」

「はい。」

「なんです?」

「この人は沈黙してるとセクシーだなって。」

「そうですか?言われたことないけど。」

俺もこの派手な頭で夜道を一人で歩きたくなくて、結局うちまで送ってもらって、別れる時、彼は俺の手を取ってキスしてくれて、おやすみなさいって、低い声で静かに言ってくれた。清士もまだ帰ってなくて、部屋で今のキスのことを考えてて、それはよくないな、って思って、でも止まらなくて、さっき手洗わない方がよかったな、って考えたら少し笑えてきて、それでその夜はそのキスのことはもう思い出さなかった。

53

清士が帰って来て、

「七音?なんで電気つけないで。」

それでも俺が黙ってるから、清士が電気つけて、俺の顔をのぞき込んで、

「どうした?」

って、すごく優しく。

「今日、仕事大変だったから。」

「また水着のヤツだろ?」

「うん。」

「ご飯食べて来たの?」

「食べてない。」

「冷蔵庫に食べるものたくさんあるだろ?」

「うん。」

「なにがそんなに大変だったの?」

「カレンダーのクリスマスのヤツだったんだけど、どうしても笑えなくて。」

声もたえだえだから、三回くらい言い直して。清士が、

「で、どうしたの?」

「そしたら、フォトグラファーの人が女の人で、旦那さんと小さい子供が迎えに来て、子供達可愛くて見てたらすっかり笑顔になったの。」

そしたら俺、またそのこと思い出して、大分気分がよくなって、冷蔵庫の中をあさってると、清士が、

「お前の感情ってコロコロ変わるな。子供みたい。」

って、90度キスをしてくれた。その晩寝ながら、清士が、

「お前の乳首ってそんなに立ってるかな。」

って、触ってきて、

「まあ、俺のよりは立ってるよな。」

って、乳首なめてきて、それだけで息が早くなってきて、ちょっと恥ずかしかったから、それを隠そうとしたんだけど上手くいかなくて、

「お前、乳首そんなに感じるんだ。」

今度は首くらいからお腹の下くらいまで愛撫されて、しかもなんか結構いやらしい感じの触り方で、時々乳首にも触って、我慢しようと思ったんだけどやっぱり声が出て、

「お前は変わったよ、前はこうじゃなかった。」

俺の両肩を抱きしめて頬とか首とかにキスしてくれて、そしたら声出さないように我慢しようと思ったことをすっかり忘れちゃって、清士は俺の胸にキスしながら俺のペニスを触って、それを上下に動かして、我慢しようと思ったのに清士が声を出させようとしたのかは知らないけど、もっと激しく俺のすっかり硬くたったペニスをしっかりにぎって、上下に動かして、俺のペニスの頂点のところにキスして、それからすぐ口に入れてくれて、そしたら声がたくさん出て、その声はなんかもうイく時くらいの声で、清士が俺のペニスを口から抜いて、

「大丈夫?」

って、言うほどの声で、そして清士がまた俺のを口に入れてくれて、そんな心配するほどの声出したらヤバいな、って思ったけどすぐそんなことは忘れて、また死にそうな息苦しいような声になって、そしたら清士が、

「お前を殺したくないからな。」

俺のをまた口から抜いて、どうするんだろ、って思って、清士が俺のことをうつ伏せにして、両方のお尻のてっぺんにキスして、それからキスとなめるのの中間くらいで、くすぐったかったから少しお尻が動いちゃって、

「お前のケツ、エロい。」

って、また同じことされて、またお尻が動いちゃって、そしたら清士が俺のアヌスをいきなりなめて、俺は思わす叫んで、そしたら清士が、

「大丈夫?」

でもそこで俺が深呼吸をしたからそれで俺が生きてるって分かったから、そこでもう一回俺のアヌスの周りには触らないで、アヌスを手でひろげて、いきなり舌だけ中に突き入れてきて、それがすごく刺激的だったから、

「もうダメ。」

って、言ったんだけどそれは効かなくて、明るいとこでヤってたから俺が自分のペニスに触ってんのも見えちゃって、清士はなんかしばらく考えてたみたいで、なにを考えてるのかは分からなかったけど。そしたら清士がベッドに座って、俺が清士に背中を向ける格好で自分の膝に乗せて、それから俺のアヌスを自分のペニスの上に乗せて、ちょっと難しくて、でも二人のリズムが合った瞬間長い吠えるみたいな獣の声が何度も出て、その時は大丈夫とも聞かれなくて、清士の息もだいぶ早くなって、かなり感じてるみたいで、そしたら清士が手を前に回して俺のペニスに触ってきて、その時少しショックだったからまた俺のケツが大分動いて、そしたら清士はまた手を俺のペニスから離して、今度は俺のケツになんていうか、少し爪を立たせて触って、またその刺激で俺のケツが動いて、そしたらしばらく止まってた俺のケツをまた清士が上下にしてきて、また二人のリズムが合った瞬間にうめくような声が出て、つらかったから清士のペニスから俺のケツを抜こうとしたんだけど、ダメ、って今度は俺のももを両手でつかんで上下してきて、俺がずっとうめいてて、清士が俺のケツを上下しながら少し回すみたいに動かして、そこで清士がイって、やっと俺のケツを離してくれて、そのまま少し倒れて、そしたらまた俺のケツをなめだして、それはすごく卑猥な感じで、それから俺を上向きにして、清士のペニスの形になった俺のアヌスに清士が指を入れてきて、俺のノドから自然に獣の声が出て、それから清士が俺のペニスに触って、でもケツの指が今度は回転しだして、喘ぎ声があんまり激しくて、でも息も吸わないといけないと思ったから息を吸おうとしてる音がまた卑猥で、清士の指がまだ俺のアヌスの中とペニスにあって、どちらかというとアヌスの方がもっと感じて、そしたらまた俺のケツが動いて、そしたら清士のペニスが前より硬いくらいになって、清士が俺の口にその、また硬くなったモノを入れてきて、その時は俺は清士が愛おしくてたまらなかったから、清士のペニスもたまらなく愛おしくて、俺が口とくちびると舌でそのペニスをヤってて、そしたら清士が俺の顔を自分に向けさせて、

「七音、俺はお前が俺のペニスをしっかりくわえ込んでる顔を見たい。」

そして俺も清士の目をしっかり見てて、そしたらまた俺のことを俺のことを四つん這いして、ケツを思い切り高く上げて、息をつく間もなく俺のケツに入れてきて、俺が全身を震わせて、快感にあえいで、清士のペニスが俺の中の一番奥の方まで入った時に俺のケツがメチャメチャに動き始めて、そしたらまた清士がイって、そこでまだ俺の喘ぐのが全く止まらなくて、清士のペニスもまだ中にいて、俺はお願いだから抜かないで、って思ったから、

「お願い、抜かないで。」

って、お願いしたんだんだけどやっぱり抜いて、でもすごくゆっくり抜いてくれて、清士のオスのペニスが俺のオスのアヌスの内側をゆっくりかき回しながら、清士が俺の中に出したものでどろどろになった感じるスポットを全部触りながらちょっとずつ抜けていって、抜けた瞬間にもう一回俺がオスの獣の声を出して、そうしたら頭が真っ白になってきて、それから気が遠くなってきて、そしたら清士が俺が息してないのに気付いて、七音、息して、って叫んでるのがやっと少し聞こえて、それから俺が大きく息しだしたから清士がそれで大分安心して、でも荒い息が止まらなくて、身体も細かく痙攣してて、清士が、

「大丈夫か?なにが欲しい?」

って、言ってくれて、少し寒いって言ったら毛布を持って来てくれて、ちょっとなんか飲みたいって言ったら、冷蔵庫に入れてないジュースがあったからそれを飲ませてくれて、また、

「なにかいる?」

って、聞くから、手にぎって、って言ったらそうしてくれて、それから一回、わって泣けてきて泣いて、ちょっとしたら少し疲れて少し寝て、ちょっとして目が覚めて、まだ清士が俺のこと見てて、もう大丈夫だよ、って言ったら、分かったって。それでも清士は寝ないで時々俺のところに来て、息をしてるか確かめてるみたいだった。次の日、

「お前一回病院行った方がいいんじゃないか。」

「病院でなんて言うの?セックスの時失神するんですけど、って?」

それで、清士が色々調べて、心療内科に行くことになって、抗不安剤を処方されて、これがあれば、息はすぐ楽になるはずだから、って。で、それからドクター曰く、ゲイ・セックスでどちらかが失神っていうのはとても珍しいから、大学の研究に協力してくれないか、って言われて、いいですよ、って。そのうち誰かから連絡がいくから、だって。

54

次の雑誌の撮影があって、丸の内の土曜日のオフィス街で、カジュアル・スーツとかじゃなくて、バリバリのビジネス・スーツで、水着の撮影でまたプラチナブロンドに戻ってて、この頭で変だったんだけど、こないだこの髪でその雑誌の表紙を飾ってしまったっていうのもあって、このままだった。その時はちゃんとビジネス・スーツが着こなせるモデルが他のエージェンシーから来てて、それでその中の一人が最初からなんか俺の側に来たがって、話しもしたがって、滅多にお目にかかれないくらいイケメンだったから悪い気はしなくて、その人すごく胸板が厚くて、こういう人がバリバリのスーツ似合うんだなって感心したりとか。それで清士が電話してきて、早く仕事終わったから迎えに行くよ、って、俺の分はもう終わってたから、そこまで来ることになって、そしたら俺の彼氏迎えに来るよって言ってんのに、その人俺の側から離れようとしなくて、ヤバいな、って思ったんで、俺の彼氏嫉妬深いよ、みたいなこともやんわり言ったりとかしたんだけど全然効果なくて、で、俺がマジでさようならを言って離れたんだけど、

「どこ行くの?」

って、またくっついて来て、もう清士が着くくらいの時間だったから、もう一回、今度はもっとはっきりと、

「俺の彼氏マジで嫉妬深いよ。」

って、言ったら、

「だからなに?」

だって。やっと清士の車が見えたからそっちの方に行きかけたら、その人はじゃあさよならをしよう、って言うから、それがどういうことかも考えずにずっと歩いてたら、後ろから抱き締められて、俺と清士だけの秘密の俺の首のスポットにキスされて、遠目だったけど絶対見えてるって、思って、そしたら案の定清士はそいつの方を睨んでて、

「誰、あいつ?」

「知らない、他のエージェンシーのモデル。」

剣の時もそうだったから、

「言いたいことあるんだったら今言って、あとで言うのはやめて。」

って、俺が言ったら、車とめて、ワザとかは知らないけど人の多いとこに行って、

「あいつのことが好きなのか?」

普通に怒ってない振りしてるけど、それは絶対振りで、

「そんなわけないじゃん。今日会ったばっかで名前も知らないよ。」

「名前も知らない相手となんであんなキス?」

「知らない。誰にでもやるんだろ。」

って、俺が言ったら、清士は少し黙ってから、

「お前にスキがあるから・・・」

「そんなこと知らない。」

「お前が押しに弱いから・・・」

「俺のせいにしないで、向こうがしつこいから。」

「しつこくされたのか?」

「しつこい人だった。俺がもうすぐ彼氏が迎えに来るから、って言ったら、だからなに?って。」

「お前、そういう押しの強いヤツが好きなんだろ?」

「そんなことない。」

剣の時はベッドの中で虐められたから、どうだろ?って思ってたら、言葉には出さないけどやっぱり普段よりアグレッシブで、あいつがキスしたところに何度も何度もキスしたり頬ずりしてきたり、まるで他の男の匂いを消そうとしてるみたいだった。その性感帯を何度も責められて、もうその時点で俺の息がヤバくなってきて、清士が抗不安剤を飲ませてくれて、それを飲むと呼吸は楽なんだけど、頭の芯がボーっとするから、いつも清士にヤられるままになるんだけどその時もそうで、清士はいつもよりアグレッシブだったけど、俺はほとんど身体を動かせなくて、時々清士の背中に手を回して、抱き付きたいけど力がないからすぐ俺の手がベッドに落ちて、だから清士がベッドに寝て、俺が上に乗って、俺の重みを清士にあずけて、清士の乳首なめたり抱き付いたり清士のペニスを口に含んだり、でも力がないからあんまりちゃんとフェラできなくて、先のところだけなめたりして、清士が俺のアヌスに自分のペニスを入れようとして、俺がひざを立ててケツを清士に向けて、でもひざに力がないからすぐ倒れて、そしたら清士が俺のお腹の下にまくら入れてくれて、そして清士はいつもの何倍も激しく突いてきて、いつもならそんなことされて叫ぶのに俺は力なく清士に突かれてるままで、叫んではいないけど感じてて、叫ばない代わりに言葉が出て、

「清士・・・俺の中、どう?」

清士が、

「いい、すごくいい。」

「もっと中に入れて。」

清士は俺の腰を持って自分の方に強く寄せて、清士が、

「どう?気持ちいい?」

「もっと中に入れて・・・」

「これ以上入らないよ。」

「じゃあ、もっと上の方を突いて。」

「この辺?」

「うん。気持ちいい。」

「俺もそこ気持ちいい。」

「なんで抜くの?」

「抜いてない。」

清士が抜いてそれから入れるのを繰り返して、それも清士のがすごく硬くなってたから、俺のアヌスの入口のとこが死ぬほど感じて、清士が俺に入れる時、手で俺のケツを左右にひろげてくれるけど、それがすごく気持ちよくて、そこで待ってる俺のアヌスが震えてるのが俺自身にも分かって、それで清士がまた俺の一番奥まで入れてくれて、ほんとだったら獣のように叫んでる、その代わりにまた言葉が出て、

「気持ちいい、清士。愛してる、清士。」

「俺も七音を愛してる。それから七音のケツも愛してる。」

清士がだんだんもっと激しい出し入れをしてくれて、清士がいつもみたいに俺の一番奥でイって、それからベッドに力なく寝てる俺の足を愛撫して、俺のペニスにキスして、それからお腹から乳首にキスして、それから胸に行って、ボタン三つのとこにキスして、俺が少し喘いで、清士が大丈夫?って、俺の耳にささやいて、それから俺の首の横に行って、そのときも息は苦しくなくて、少し目を閉じてたら、清士が、

「眠いの?」

「大丈夫。」

それで俺が自分のペニスに触りたがったから、清士がその手をはずして、それを自分の口に入れてくれて、俺はずっと目をつぶってたけど言葉は出て、

「清士・・・」

って言ったけど清士は俺のが口に入ってたからなんにも言わなくて、また俺が、

「清士・・・俺、清士のこと愛してるから。」

清士はいつもフェラが上手くて、俺はすぐイかされて、でもその時は薬のせいで頭の芯がボーっとしてて、あんまり俺のペニスに集中できなくて、少しイくのが遅くて、その代わり俺がやっとイった時に清士が喜んで、

「気持良かった?」

「うん。」

そこからの記憶がないから、多分寝てた。

55

そしたらあろうことか、次の撮影の時またその男がいて、全然ビジネス・スーツでもなんでもないカジュアルなタウン・ウエアみたいなヤツで、俺の頭はもうブロンドじゃなくて、俺のコーディネートもみんなカラフルで若者っぽかったから、うれしいな、って思ってたらよく見たらそいつもいて、こないだあのあと、そいつのこと調べたら、なんだっけ、航青とかいう名前で趣味のところにボクシングって書いてあった。こんなことを言うとまた清士に怒られる、って言うか、絶対言わないけど、航青俺のタイプなんだ。墓場まで持って行く。普通彼氏いるとか言うと引くじゃない。でもそいつ自信があるんだか知らないけど、また寄って来てマズいぜ、って思ったんだけど、ヤバいなっていう相手には、さすがの俺でもスキは見せなかった自信はあって、でもその航青とやらは俺の守りの陣地にいとも簡単に入って来て、航青を撮影してる時に仲のいいスタイリストさんに聞いたんだけど、あいつに変なウワサとかはないらしい。むしろ真面目で有名で、仕事もなんかの会社の管理職なんだって。天気よかったし、俺が衣装と衣装の間で待ってる時に上半身裸でいたら、航青が、

「七音ってやっぱりエロいな。」

「おれ、エロいって言われんの好きじゃなくて。」

「なんで?」

「それってスキがあるってことだって。」

「スキがあるからエロいんだ。」

「そうらしいよ。」

そしたら航青が、この間と同じように俺の首んとこにキスしてきて、

「やっぱりスキがあるな。」

それでそのまま俺の首んとこにとどまって、俺の肩にあごを乗せて、俺の耳に、

「俺ってお前のタイプだろ?」

「全然違う。」

って、言ったんだけど、全く説得力がなくて、真実を当てられてドキっていうかズキっていうか。そしたら今度は、俺のあごに手を当てて俺の顔を自分の方に向けてほっぺにキスをされて、

「ほらまたスキがある。」

航青、自分の番はとっくに終わってるのにずっと俺のを見てて、認めたくないけど俺、ずーと航青のことを意識してて、こんな風に人って浮気すんのかな、とか考えてて、で、そんな日に限って清士忙しくてどっか遠くにいて、これがもう今日最後のコーディネートというのをやって、終わって、そしたら航青が来て、なにかな?って思ってたら、

「これからどこ行く?」

だって。

「俺もう、うちに帰るんで。さようなら。」

ほとんど意味ないの分かってたけど、

「うちってどこ?」

「近いんで。」

「じゃ、俺ボディーガードになるよ。」

実はありがたかったんだけど。

「ありがとう。俺すぐ変なこと言われたりするから。」

「なんて?」

「兄ちゃんエロいな、とかなんとか。」

「どこで?」

「地下鉄ん中で。」

「そんなのいたら俺が殴ってやるよ。」

「どうも。」

航青がヤバいことに俺の手とか握ってくるから、さすがの俺も、それはヤバいって、俺のうちほんとにすぐそこだし、彼氏嫉妬深いし、そしたら航青が、

「じゃあ、そこらでちょっとお茶してそれでさようならをしよう。」

それで、そこらのカフェに座って、そしたら航青がまた、

「スキあるな。やっぱり。」

「どの辺に?」

「目があちこちに飛んでいる。なんで?」

「分からない。」

「じゃあ、俺の目を見て、じっと。」

「見てる。」

「なんかまだ他のこと考えてるだろう?なに考えてんの?」

「それもスキなのかな?」

「そうそう。他のこと考えてると、肝心なことがおろそかになるだろう?」

「なるほど・・・」

「ほら、また違うこと考えてる。なに考えてんの?」

「えっと、以前、もうそんなにないんだけど、セックスしてる時になんか変なこと思い出して、ゲラゲラ笑ったりしてて、それで彼氏に、なに考えてんの?ってよく言われた。」

「へえ。なに考えてたの、セックス中に。」

「あのね、その時はね、まだ一緒に住んでなかったから、俺の飼ってる熱帯魚のことを考えてたの、それで、彼氏が、誰か他のヤツのこと考えてるだろう?って、言うから、確かに他のヤツはヤツだな、ってずっと笑ってて怒られた。」

「七音、彼氏の話しする時、ハッピーな顔すんな。」

「航青さん彼氏いないの?」

「まあ。」

「そういうこと言う男は信じられませんね。」

それで、いい時間になったから、航青が、この先いつ会えるか分かんないし、って、どこかにキスしていい?どこがいい?って聞かれたから、その日ルーズなTシャツ着てて、じゃここって鎖骨のとこ指してキスしてもらおうとした。鎖骨んとこってあんまり清士がしないとこだったからいいかなって。で、俺がそのつもりでいたら、航青は、自分の身体の重みを少し俺にかけるような感じで、俺のくちびるにキスをして、

「やっぱりスキがある。」

だって。

56

清士が帰って来て、なんか真面目な顔で、

「お前さ、薬飲んでるとあんまりボーっとしてよくないんじゃない?」

「まあ、自分ではよく分からない。力が入らなくなるな、ってそのくらいは分かる。」

「今度薬半分くらいにしてみようか?」

「いいよ。」

その晩は薬半分にしたんだけど、かなり強い薬らしくて、またボーっとしてて、あろうことかベッドで清士を目の前にして航青のこと考えちゃって、まずいな、寝言でなんか言ったらどうしよう?って思ったんだけど、頭から離れずに。ボーっとベッドに座って考えてて、清士が、

「なに考えてんの?」

でも言えるわけないから黙ってて、

「大丈夫?」

って、優しい優しい声で。それでも言ったらだめだって、墓場まで持って行くんだ、って思って、でもこれもきっと薬のせいだから、薬のせいにしといて、俺が、

「頭がボーっとして。」

「力は?俺の手にぎってみて。」

そしたら、手はちゃんとにぎれて、でもよく考えてみたら航青とだって別にキスの時、舌入れられたわけじゃないし、もちろんセックスしたわけじゃないし、航青のことが頭を離れなくて、これは薬のせいだなって、だってそんなよく知らない人のこと考えるのあり得ないし。考えるのが止まらなくなって、だんだんつらくなって、ここで一発泣くとスッキリするかなって思って、泣くんなら一人で泣きたいと思ったから、キッチンに座り込んで泣いてたら、すぐ清士が来て、

「なに泣いてんの?」

「分からない。」

「床、冷たいだろ。」

って、椅子に座らせてくれて、身動きするのもつらかったから、でも泣くのはすぐ収まって、清士が、

「薬変えてもらおうね。」

って、また優しい優しい声で言ってくれて、俺が他のヤツのこと考えてんのに、でも墓場まで持ってく決心したから、って思ってて、しばらくして、清士が、俺をベッドに連れて行こうとしたら、俺、身体が動かせなくて、無理に立たせようとしたら、床に崩れ落ちて、そこでもじっとしてまた航青のことが頭に浮かんで、なんでか知らないけど、自分の手のひらをじーっと見てて、自分では自分の手も動かせないんだけど、どうやったのか知らないけどじーっと自分の手のひらを見てて、清士が、

「そこになにか書いてあるの?」

って、優しい声で。俺が。

「分からない。」

って、また泣き出して、床にクッションとかしいてくれて、水飲ませてくれて、手で持つにはコップが重かったから、ストローを差してくれて、水を飲んだら大分よくなって、清士がベッドに連れてってくれて、次の朝、俺があんまり明るくて元気に喋ってるから、

「仕事行けるのか?」

「大丈夫だよ、なんで?」

「具合が悪かったら休みなよ。」

「そんなことないよ。」

「会社まで送ってやるよ。」

って、言ってくれたから、それはお願いして、清士が夕べなにがあったか覚えてるか?って聞くから、覚えてるよ、って言って、ほんとにちゃんと全部覚えてたから会社には行ってもいいけど、なんかあったらすぐ電話しろって言われて、今あんまり会社も忙しくないから、外回りもないし。航青のことももう全然考えてなくて、そしたら清士が、また病院に行こうなって、言ってくれて。その次の週くらいに予約が取れたから病院に行って、最初は清士と一緒に話してたんだけど、ドクターが俺とだけ話したい、って言って、俺が仕事で会った人のことをずーっと考えてて止まらないことがあったけど、今は大丈夫。それも薬飲んでる時だったから、じゃあやっぱり薬変えましょう、ってなって、またその職場で会った人のことを頻繁に思い出すようだったらまた来いって。で、それから新しい薬になって、普通にセックスもできて、呼吸困難にもならなかったけど、またしばらくして、これは自分では覚えてなくて、清士に聞いたんだけど、ある日、清士が帰って来たら俺の靴があるし、買って来た食べる物とかも玄関の床に置いてあって、冷蔵庫に入れるような物も玄関の床に置いてあって、どの部屋にも電気がついてなくて、俺のことを捜したんだけど分からなくて、そしたら俺が暗いバルコニーにいて、

「なにしてんの?中に入んな。」

って、俺に声かけたら、

「うん。」

って、普通に言って部屋に入って来て、清士が、

「こんな暗いとこでなにしてたの?」

「俺が帰って来た時はまだ明るかった。」

「何時に帰って来たの?」

「分かんないけど、多分四時くらい。」

その時もう七時過ぎてて、コンビニのレシートはやっぱり四時ちょっと前くらいなんだって。清士が、「じゃあ、三時間もバルコニーにいたの?」

「そうだよ。なんで?」

「なにしてたの三時間も。」

「なんか頭が熱かったから外にいたら気持ちよかった。」

でも、俺がそう言ったことも全然覚えてなくて、次に病院に行ったら、ドクターが、俺はものすごく薬に敏感なんだって。何階に住んでんの?って聞かれて、四階だ、って言ったら飛び降りなくてよかった、って真面目に言われて、もう薬は出さないけど、セックスする時は休み休みしろって。帰ってから俺が、

「休み休みセックスってどうやんの?」

「休む時がきたら俺が教えてやるから。」

57

その週の金曜日にじゃあ、その休み休みセックスを実施しよう、ってことになって、清士が俺の服を脱がしてくれて、それから自分も脱いで、二人でベッドに座って、裸で抱き合って、俺が裸の男抱くの大好き、って言ったら清士が少し笑って、そして二人であちこちキスし合って、俺が清士に入れたいって言ったら、いいけど無理すんなって、俺が分かった、って言って、俺がマックスになった時に入れたかったから、清士がしばらくフェラしてて、それでも俺の息が普通だったから清士に入れて、それでもまだ余裕だったからすごい速くなって、二人共すごい刺激でよかったんだけど、清士の言う休憩タイムになって、脈とかみてくれて、大丈夫になったからまたキスから始めて、で、また俺が清士に入れて、あんまり激しくやると多分ヤバいなって思ったから、少しゆっくり目でヤっててそれも清士の中がよく分かって、それがよくて、ゆっくりヤってた時になんとなく分かった清士の好きなスポットにすごく速くして突いたら、清士も声出してて、休憩とか言われても今やめられないな、って思ったけど清士はなんにも言ってなくて、俺はどうしても清士の中でイきたかったから、自分でも少し遅くしたりまた速くしたりしてて、まだ全然いけたから、俺がイくまでヤって、そして休憩にして、清士がすごいディープ・キスをしてくれて、俺のケツなめてきて、多分俺のケツに入れたいんだなって思って、でも前に息止まった時も俺のケツヤってる時だったな、と思って、俺、大丈夫かな?って聞いたら、清士が、休み休み難しいな、どうしても止めたくない時あるよな、って言いながら俺のケツの割れ目を指でなぞって、くすぐったかったから俺のケツが動いて、そしたらもう清士を止められなくて、息すんの忘れんなよって言われて、一気に入れてきてしばらく結構激しめで入れてきて、それでも俺が普通に息してたから、清士が俺から抜かないまま俺のことを持ち上げて、清士に背中向けた騎乗位をしてきて、そこでまだ俺が大丈夫そうだったから、すごく速く動かして、俺とリズムが合った時にヤバい快感があって、清士がまだ下から突き上げながら俺の心臓辺りを触ってきて、でもやめなかったから多分大丈夫で、速めに腰動かしてきて、それと同じ時に俺のももの内側とか触ってきて、そして俺のペニスとか触ってきて、それで俺が少し苦しくなったから、清士は残念そうだったんだけど、俺は清士から抜いて、それから少し横になって休んでて、清士が俺の頬を愛おしそうに撫でてくれて、ちょっと俺が自分の舌で自分の下くちびるをなめたら清士が今のエロいって、休んだらお前の口に入れたい、でも息できる?って聞いてきて、大丈夫、って俺が言って、清士が俺のくちびるにキスしてて、俺がちょっと笑ったら、なに?って言うから、これじゃあ休めないよ、って言って、もうだいじょぶ、ってなって、俺が飲めるように水を置いといてくれて、それを飲んでフェラしたら清士が俺の口の中冷たくて気持いいって、でもやっぱりフェラするの息苦しくなったからやめて、少し休むって俺が言って、そしたら清士が俺をうつ伏せにしてお尻に触って、それがなんかいやらしげで俺も感じてきて、でもまだ息は苦しかったからまた仰向けに寝て、そしたら清士は最初は俺の片方のももを上げて片方のケツを握ってきたんだけど、そのうち両方のももを上げて、両方のケツに触ってきてついでに、ケツ側の両ももの間から俺のペニスに触ってきて、で、俺の息がまた速くなって、俺がこれじゃ休めないよって、言って、ゴメンって。そして大分よくなったから、いいよって、そしたら清士が俺のももを上げて、それを開いて、ケツに入れてきて、ちょっとそれは予想外だったので、ももが震えちゃって、そしたら清士が俺のももを痛いくらいつかんできて、痛いよ、って言ってやっと気付いたみたいで、それから清士がイって俺のお腹に出して、その時に俺のペニスに少しかかって、なんかそれがいいなって思って、清士に言うと、お前はクレイジーだよ、って。

58

電話かかって来て出たら剣で、

「え、また?マジで?・・・いつですか?・・・はい、分かりました。じゃあ。」

清士が、

「なに?」

「またヌードだって、で、今度の女性誌だって。」

「へー。」

「清士も来てよ。」

「なんで?」

「また、ちょっと勃起だって。剣がもう俺の勃起の世話はしたくないって。」

それからちょっとして、詳しいことが分かってきたんで、清士に、

「なんか女性誌だとあんまりマッチョじゃない方がうけるんだって。で、フル勃起は気持ち悪いんだって。他は俳優さんとかで、またモデルで無名なの俺だけなんだって。」

当日現場に行くと、意外とスタッフは男性が多くて、それはよかったんだけど、男性のヘアメイクさんが、

「女性誌ですからね、七音さん。」

って、変な前置きをするんで、えっ、って思ってたら、長さ的にはあごのラインくらいの明るめのブロンドのウィッグをかぶせられて、清士は笑ってはいけないと努力しているみたいだったけどやっぱり笑ってて、でもあとで高校時代を想い出すって言ってたけど、剣も固まってて、フォトグラファーの人は女性で、周りの女性スタッフは可愛い可愛いと言ってて、で、さっき変な前置きをしてくれたヘアメイクさんが、また、

「女性誌ですからね、七音さん。」

って、言って、下の毛を大分綺麗に整えてくれて、その時は清士もいて、へー、そうやんのか、って、感心してて、フォトグラファーの人がテスト・ショットを見せてくれて、前髪の分けたとこをもっと重くしましょうとか、ヘアメイクさんと話してたけど、ブロンドだとハーフっぽいな俺って、って考えていると、女性の編集者の人が、ちょっとインタビューいいですか?って来て、いつもの背高いですね、日本人ですか?七音さんっていいお名前ですね、本名ですか?由来は?タイプの芸能人は?ここでちょっと剣に、俺ってゲイでいいの?って聞いたら女性誌だからゲイでいいよ、って言うからなんで、ってあとで聞いたら、女はゲイが好きなんだって。で、好きなタイプの芸能人は男性で、とりあえず言っておいて、そしたらその編集者の人が突っ込んできて、

「男性の方がお好きなんですか?」

「すいません。」

って、言ったら、その、「すいません、男性の方が好きで。」っていうのがキャッチ・コピーになって、それが俺のゲイ・カムアウト、メジャー・デビュー。

「女の好みに合わせるの疲れるなー。」

って、剣に言ったら、

「まだ終わってませんよ。」

って、言われて、え、って思ってたら、さっきの編集者じゃない別の女性の編集者さんが来て、

「じゃあ、七音さん、これから貴方の役の説明をしますから。」

って、おごそかに言うんで、ちょっと不安だったから剣を呼んで、そしたらその人が続けて、

「ヴィスコンティの、ベニスに死す、っていう映画ご覧になったことありますか?」

って、聞かれて、それってゲイ映画のクラシックだから幸い観てて、

「はい、観ました。」

「ビジュアル的には、あの映画で。」

「あ、だからビーチなんですね。」

これでほんとに観てるって分かってよかった、って思って、

それから、その人が、

「まあ、ビジュアル的には、あれなんですけど、ストーリー的には、貴方が青年芸術家で、貴方にはかなり年上のパトロンがいて、貴方はこの、彼のプライベート・ビーチで毎週末を一緒に過ごすと、そういうシチュエーションでお願いします。」

年上のパトロンは得意だな、って剣に言ったら、ああ、それはよかった、って。あとで剣があのシチュエーション説明の時は、笑わないでいるのが大変で、やっぱ男の方が頭、単純だな、って思ったって。で、ポーズとる時も、その長い話をしてくれた人がいて、で、剣が、これって性器も入るんですよね、って聞いてくれて、どのくらいたってた方がいいんですか?って聞いたらその人、えっそんなに上手くコントロールできるんですか?って、すごくびっくりしたように言って、で、剣が、まあ、やってはみますけど、で、なんでか知らないけど、ヘアメイクの男性が来て、女性にとって男性器のイメージはやっぱり半だちくらいなんだって。ビーチでデッキチェアーに半身起こして座ってて、そのチェアーの背に年上の男がまとうような柄物のガウンがかかってて、で、俺そのガウン俺の足の下に敷いていいですか?って、その方がエッチかなって思って、て、言ったら意外とオーケーで。そしたら、半だちをキープするために清士が呼ばれて、あとで剣が、清士ってなに?誰あの人?って、みんなに聞かれたって。清士とキスするだけですぐ半だちになるから、来てもらってよかった、って、思ってるうちに、そのシチュエーションの人がポーズでなんか言う前に、ぬれた砂を少し身体と顔に付けてみたりとか、そして、俺ってほんとに年上のパトロン大得意だから、ほんとにその人がすぐそばに立っているような、ちょっと甘えてキスをねだったりとか、少しすねてみたりとか、自分の乳首触って挑発してみたりだとか、ワザと知らん顔してみたりだとか。で、意外と早く終わりそうだったから、俺、ケツに自信あったから、

「じゃあ、後ろ向きもやります?」

って、言ったら、フォトグラファーの人が顔だけカメラ見てって。で、またプロポーションに自信のある俺が、

「立ちポーズもやりましょうよ。」

その時は立ったまま清士にフェラしてもらって、女性陣はちょっと別の方を見てて、男性陣は凝視してて面白かった。で、それで終わりだった。結局あのシチュエーション、大分ヘルプになったから、女性誌も悪くないな、って。それでそれは月刊誌だったか少し待って、そこの雑誌は事前に写真のチェックもないみたいで、最初に見たのが店頭で、それは結構ヤバい感じので、清士でさえ、これは母さんや姉ちゃんには見せられない、って言ってて、その割にはお姉さんにメールして教えてたけど。表紙もだったから、清士がもっとギャラもらえって、言ってて、俺の表紙に、「七音、男の方が好きですいません。」って、書いてあって、写真は俺がそのデッキチェアに座ってて、その年上のパトロンがいるであろう方角に、アンニュイというか退廃的というか、って同じことか、で、俺の退廃的な顔がそのパトロンの方誘惑するようにちょっと突き出したくちびるでキスをせがむように、で、俺のスキだらけの身体で、自分のエロい乳首を触ってるの。俺の所謂性器はね、上から文字が載ってるから見えなくて、でも中のグラビアではほとんど意味のないくらいのモザイクがかかってて、あとで聞いたら、同じ号に出てた俳優さんのオフィスが、なんであんな無名のモデルが表紙なんだ、ってクレームつけてきたんだって。でも編集長さんが、編集部が決めたことだから、全然気にしなくていいって言ってきたんだって。

59

それからとうとう俺が十五年以上務めた服飾の会社を辞めて、清士の貿易会社を手伝うことになった。最初はよく分かんないし、ペーパー・ウォークだけで何日もかかったりして、でも営業は商品が変わっただけで同じだから、上手くいってて、ただ一軒だけ店長と話さないといけないのに店長が難しい人で、最初に挨拶してもこっちの方は見るんだけど全然なにも言わないから、どうしようかなって思って、とりあえず一通り喋って、本の中身について質問されたんだけど、答えられなくて、

「英語読めないで営業できるんですか?」

って、言われて、帰って清士に、そう言われたんだけど、って言ったら、清士も、

「ああ、あいつね。普段は必要最低限しか喋らないから、それだけなんか言ってくれたんだったら、気に入られたんじゃない?」

で、その次の時資料持って行って、

「こういうの入れませんか?」

そしたらまた、

「その本になに書いてあるのか分かって言ってるんですか?」

とか、また言われて、確かに服のことは知ってても英語は分からない。

「このシリーズ色がきれいだから、本棚に置いたら素敵ですよ。外から見えるとこに置いても可愛いし、そのテーブルに積んでもいいかも。表紙に花書いてあるから、造花とか置いてもいいし。」

って、自然に出ちゃって。それでも渋い顔して、腕組みして俺のことにらんでるから、俺が、

「じゃあ、また社長とよく打ち合わせしてまた来ますから。」

って、明るく言って店を出て行こうとすると、その人が追いかけて来て、俺の腕を取って、

「いいよ、いいよ。」

なにがいいのかな、って思ったらそのシリーズ入れるから、って言ってくれて、その代わりディスプレイ手伝ってね、って。清士は、そんなことやらなくてもいいのに、って言ってたけど、こっちも英語さっぱりなの悪いなって思ってたから。次の時に行ったらほんとにディスプレイやらされて、まあ好きなことだからいいけど、ちょっと休憩しましょう、ってその店長さん、雄貴さんっていうんだけど、と一緒に隣のカフェに行って、初めて本屋の仕事を離れてその人を見たら、なかなか渋い魅力のイケメンで、年も思ったより若そうな感じで、僕、十五年くらい洋服の営業やってたんですよ、とか、そんなに大きな会社じゃないからディスプレイとかも営業が手伝ったりしてて、とかそんな話しもできて、そしたら、俺のこと背も高いしモデルさんみたいって言ってきて、で、その本屋、半分は普通の日本語の本屋だから、俺がレギュラーで出てる雑誌とか見せてあげて、そしたらお店の人が、

「店長、あんなに喋ってんの初めて見た。」

って、言ってるのが聞えて、清士の言った通りだなって。で、それから何回か行くうちに、

「この後なんかあるんですか?」

って、聞いてきて、

「今日はもう終わりですよ。」

「ちょっと飯でも食いに行きませんか?」

この人もメーカーさんみたいなあのノリなのかな、ってちょっと警戒してしまったけど、清士の会社だし、上手く立ち回らないと、って思ったんで、

「いいですよ、どこ行きます?」

その店が繁華街にあったんで、歩いてすぐ飲めて食べられるところがたくさんあるんで、適当に行って、まあ俺は営業トークで、俺がどんなに意識してスキのないように、って頑張ってもしょうがないのは分かってたから、あんまりそのことは考えないようにして、モデルさんやってるから服とかカッコいいんですね、俺が、ありがとうございます、って言ったり、なんだかんだ飲みながら二人共少し打ち解けて、どうして十五年もやってた服の仕事辞めて、英語分かんないのにこの仕事?って、聞かれて、俺が冗談で、

「もう英語分かんないはいいですよー。」

って、言って、理由の一つは、社長と高校の同級生で、もう一つがヌードの仕事が三回あって、その内二つが表紙になって、そうなると勤めていた会社は問題なかったんだけど、電車に乗るのが大変になってきて、そしたら、雄貴さんが、

「へー、どういう風に?」

「チカンに会うし、僕、背が高いから逃げようがないし、変なこと言われたり。」

「へー、どんなこと?」

「兄ちゃん、エロいな、って地下鉄で。」

「エロいな、ですか。」

「それはよく言われるんですけどね。」

「それより、雑誌のヌードって、どの雑誌ですか?」

って、聞かれて、答えて。

60

後日、向こうから電話かかってきて、

「ちょっと飲みに行きませんか。」

清士もあの人がそこまでするなんて、ってびっくりしてて、それで会った時、

「僕、少し英語勉強した方がいいですかね?」

って、俺が聞いて、雄貴さんが、

「やっといて損はないでしょうけど。」

俺が冗談で、

「こないだ、英語読めないのによく営業できますね。」

って、言われたんですよ、って。

「そういうことを言う人は、ただの欲求不満だから、ほっとけばいいんですよ。」

それで俺が少し笑ったら、雄貴さんが、

「今の表情、エロいですね。」

「言われんのやなんですけどね。どの辺がエロいんですか?」

「目があちこち飛ぶとこ。」

「よく言われます、それ。無意識だから。」

「俺の目見てても、見てないんですよ。焦点が合ってない。」

「視力はいいんですけどね。あ、それから、ここだけの話しなんですけど。」

ここで言うのもまずいかな、って思ったんだけど、もういいや、っと思って、

「こないだ、想像を絶するようなイケメンとお茶飲んでて、もう会えないかもしれないから、どこかにキスさせてください、って言われて、どこがいいですか?って聞かれたから・・・」

そこでしばらくストップしてたら、雄貴さんが、

「俺ちゃんと聞いてますよ、なんて言ったんですか?」

「この鎖骨んとこ、ってこう指さして。」

「で?」

「で、そして俺がキスするの待ってたら・・・」

「待ってたら?」

「ちょっと、軽く押し倒されて、くちびるにキスされた。」

「へー、なんかフランス映画みたいでカッコいいですね。」

「その人、俺にスキがあるから悪いんだって。社長もよく言いますよ、それ。スキがあるって。」

「想像を絶するイケメンって、どんな人ですか?」

「あのね、その俺のやってる雑誌のゲストモデルみたいな人で、その人じゃないと着こなせない、っていうタイプのスーツがあるんですよ。でも、もう多分会わないと思う。」

「へー、そんな人いるんですね。」

「それでね、目がこうあちこち流れるから、だからスキが生まれるんだって。あ、それで・・・」

「あ、それで?」

「スキがあるから、エロいんだって。そういう風に言われた。」

「なるほど。」

そしたら、雄貴さん、ちょっと改まって、

「七音さん、俺ね、普段全然喋らないんだけど、貴方にだけは喋れる。なんでか分からないけど。」

「なんか、それ社長も言ってましたよ。俺にスキがあるからですかね?」

「すごくたまに、貴方みたいな人いるんですよね。」

「へー、じゃあ、喋りたくなったら呼んでください。」

61

それからまた新しいシリーズの本が入って、俺が雄貴さんを手伝って、一緒にディスプレイをやってたら、って言うか、楽しく喋って笑ってやってたら、店のスタッフ達すごくショックみたいな感じで、俺達の方ばかり見ていた。普段どんだけ喋らないんだろ、この人、と思った。それから二人で半分個室みたいになってる、居酒屋よりちょっと高級感のある飲み屋で飲んでて、まだそんなに二人共飲んでなかったのに、雄貴さんが壁にもたれて目をつぶってて、俺がなにも考えずに普段、清士が俺にするみたいに、額にちょっと触って髪をかき上げるみたいに触ってて、雄貴さんが目も開けずに俺のやるままにさせてて、そしてまだ目をつぶったまま、

「こういうの、いいですよね。貴方にもボーイフレンドがいるし、俺にもいるし、別れるつもりはないけど、でもこういうのがあっても、いいな。」

で、どちらからともなく、キスをした。短くてドライなキス。

62

帰ったら、清士が、

「誰と飲んでたの?」

ってあんまり普通そんなこと聞かないのに、俺が、

「雄貴さん。」

「あの人とそんなに仲良くなれるなんて。」

「似てるところがあるのかな?」

「絶対そんなことない、正反対だ。」

「じゃあ、だから。」

「だから?」

「正反対だから仲良くなれるんだよ。」

「じゃあ、せいぜい仲良くなって、本を売ってくれ。」

帰っても少しさっきの雄貴さんとのキスが思い出されて、少しボーっとしてて、清士がまだなんかしてたから先にベッドに入って本読んでて、っていうか英語の本だから全然分からなかったけど、それは多分フィクションで、絵とかないから全然分かんなくて、こんなの分かる人って偉いな、って思ってたら清士が来て、

「なんか分かる?」

「全然分かんない。ただこんなの読める人すごいなって。」

そしたら清士が、俺の髪をいつもやるみたいに、かき上げて、さっき俺が雄貴さんにしたのと同じにして、まるで俺の心を見透かしたみたいに、じっと俺の目をのぞき込んで、

「営業もいい加減にしろよ。」

って、でも、あんまり見透かされて、すこし悔しかったから、

「なんのこと?」

って、自分でも目が泳いでるの分かって、

「雄貴さんのこと。お前の顔に全部書いてある。」

もうなにをしても俺の気持ちは隠せないな、って思ったら自分がすごく非力に思えて、でも、もういいや、っと思ったら泣けてきて、でも泣くのも悔しかったから、まばたきをたくさんして、泣いてるのを隠そうとしてたら、清士が、

「大丈夫?」

「もし、あそこの営業大変だったら、俺がやるから。」

63

でも継続して雄貴さんの店は俺がやってて、その次プライベートで会った時は、二人でフランス映画を観に行った。最初、手を握ってたんだけど、俺がそれはヤバいなって気がしてきたから、それはやめて、そしたら雄貴さんが俺の肩に頭をもたせかけて、それは大丈夫だからそのままで、その映画はつらい恋の物語で、俺が少し泣いてて、映画が終わってからも少し泣いてて、俺が、

「ゴメン、俺、すぐ泣くから。」

「泣くような場面、あったかな?」

「主人公が別れたくないのに別れるとこ。」

「でも、すぐまた他のボーイ・フレンドできたからいいじゃない。」

「まあ、そうだけど。でも、あそこで別れるとこで泣き始めたから、そんなに簡単に泣き止まないもん。」

雄貴さんが、ちょっとカッコいいバー、見付けたから行こうよ、って。そこはほんとにカッコよくて、それで俺、目が泳ぐから分かったんだけど、離れた方にいる客で俺のことちょくちょく見てる人がいて、なんだろ?たまに俺のこと雑誌で見ましたよ、っていうのがいるからそうかな、って思ってて、雄貴さんに、あの人知ってる人?こっちをチラチラ見てるけど、って、言ったら、知らないって。七音がイケメンだからだろ、って。じゃ、こうしたらあきらめるんじゃない?って雄貴さんが俺の肩に手を回してきて、俺、ほんとはもうこういう関係無理で、泣きたくなるし、こういう風に触られたら、これ以上のこと想像しちゃうし、もう俺の耐えられる範囲は越えてるんだけど、とっくに。でも、もう会えないって言えない。営業なら清士ができるし。しょうがないから、俺、雄貴さんだけに聞こえる声で、

「それ、無理。」

って、言って、雄貴さんの腕を俺の肩からはずして、そしたら雄貴さんが、

「どこまでが無理なの?」

「本当は、会うだけでも無理だけど、会いたいから。」

雄貴さんが、しばらく黙ってるから、俺が、

「雄貴さんの彼氏はなんか言わないの?」

「最近、誰と出歩いてんだ?って、一回聞かれた。でもそれだけ。七音は?」

「俺すぐに顔に出るから。全部知ってると思う。」

で、二人共しばらく黙って、そして俺が、

「もう会わないって、言えたらいいんだけど。」

「俺も、もう会えないって、七音に言えればいいんだけど。」

彼は俺の手をギュって握ってきて、手の感覚がすぐ全身に回ってきて、で、俺がカクテルのグラスを持つ振りをして彼の手をはずして、ほんとは別の手を使えばいいだけの話しだったから目的はみえみえで、だから俺は、

「貴方の手から火が全身に回るから。」

雄貴さんは、俺の手が離れたのを名残惜しそうにしてて、少し俺のそばに身体を寄せてきて、で、俺が、

「俺って、いい年して、なんでこんなティーンエイジャーみたいな恋してんだろう?」

ここで、俺、本格的に涙が流れて来たけど、カウンターの端っこだったから、俺が泣いてるのは店の人にしか見えなくて、そしたらバーテンダーさん冷たい水を持って来てくれて、それで少し落ち着いて。俺が、

「もし貴方にもう会えない、って決めたら、それで忘れられるのかな?」

「俺も最初から七音に会わなかったと思って、忘れられたら。」

64

あとで清士に聞いたんだけど、俺が目を真っ赤に腫らして、ふらっと帰って来て、俺の部屋に真っすぐ入って行って、長い間あんまり静かだからドアをノックしても静かなままで、ドアを開けたら俺が倒れてて、いつか病院でもらった薬全部飲んで、まだ意識はあったけど、吐かせようとしたんだけど吐けなくて、そのうち意識がなくなって、救急車を呼んだんだって。それで身体はよくなって、でもまだ自殺願望があるかもしれないから、って言われて、しばらく入院した。清士は毎日来てくれて、でも俺は清士の顔はまともに見れなくて、泣きながら、ゴメンね、ゴメンねって何度も繰り返し言って。でも、雄貴さんのことは頭のどこかにあって、考えてて、あんなに好きになっちゃいけない人を好きになること自体、俺って既にもうそこからおかしかったのかな?って考えたりして。これも、あとになって清士に聞いたけど、清士が雄貴さんに会いに行って、俺が入院してるっていう話しをしたんだって、でもまだ不安定だから会いに来ないように、って言ったんだって。それで俺ずっと泣いてたんだけど、前に薬が効き過ぎて変になってるから、病院でも、抗うつ剤と抗不安剤を、ものすごく少しの量から始めてだんだん増やしていかないとダメだから、それで薬がちゃんと効くまで、分かんないけど、一か月くらい病院にいた。

65

退院した時にはもうそんなに泣いてなくて、もう清士の顔もちゃんと見られて、雄貴さんのことはまだ考えてたけど、なんであんなに好きになったんだろう?自分にも疑問で、客観的に見られるようになってきて、でも、今、会ったらまたあんな苦しい思いをするの分かってたから、会おうとはその時は考えてなくて、病院で取り上げられてたケータイに、雄貴さんのメッセージもあって、でもなんか遠いところの人みたいに思えて、会ってはダメだ、って分かってたけど、時々だけど会いたくなって。それから不思議なんだけど、また雄貴さんに対する思いが高まって、ずっと一日中彼のことを考えてて、病院のカウンセラーの人にも言われたけど、会ってはダメだって。一番苦しいのは、もしかしたら彼はもう俺のことなんて忘れて、好きでもなんでもなくなってるかも、ってそう思うのが一番つらくて、清士が薬類は全部隠してしまって、俺の飲む薬はそのつど飲む分だけくれて、清士が外出している時にバルコニーから少し身を乗り出してて、全然飛び降りる気はなくて、もし飛び降りたらどうなるかな、ってちょっと思っただけだったんだけど、見てた人がいて、警察を呼ばれて、また病院に逆戻りで。まあ、でもこんなに彼のことを一日中考えてること自体おかしいんだから、病院に逆戻りもしょうがないかな、って。今度はガラス張りの部屋に入れられて、ナースステーションから丸見えの部屋で、それでもまだここをこうすれば首吊れるな、とか考えてて、こんなガラス張りにしたって甘い甘い、とかずっと考えてて、なんか部屋にはなるべくいないように病棟内を歩き回ってて、ナースに怒られて、でもあんなところに入れられたら逆に首吊ること考えますよ、って、うっかり言っちゃって、隔離病棟に送られる寸前でカウンセラーの人に助けられて、今度は大人しくガラスの部屋にいるから、ってナースに約束して、でもドアはずっと開けっ放しにしてた。そして遂に全然泣いてない日が一週間以上になって、清士にも大分よくなった気がする、って言いながらも雄貴さんのことは一日中考えてて、カウンセラーの人に、それは精神科医に言わないとダメだけど、自分が言っておくから、って言われて、まあいいや、って思って、精神科医は薬がちゃんと効いてないんだな、って、またちょっとずつ薬が増えて、俺やっぱり薬はすぐ効く体質みたいで、もう雄貴さんのことはあんまり考えてなくて、首を吊るとかそういうことも考えてなくて、で、不思議なことに、この薬飲むとみんな体重がすごく増加するらしいんだけど、俺には逆に効いて、体重が減った。剣が来てくれて、仕事に戻れるならすぐ教えて、って。なんか俺すでに廃人になったつもりでいたから、その言葉は驚きで、仕事あるんだ、ってすごくうれしくて頑張ってよくなろう、ってそれで思った。とにかく早くここを出なくては、と思って、頑張って実績を作ろうとして、色々やった。それがかなり認められて遂に、そこを脱出できる日が決まって、清士にも、もう自殺願望ないし、大丈夫だ、って。清士はそれをあんまり信用してないみたいで、でも俺が早く仕事したい、って言ったら少し安心したみたい。そしてちょっと無理していい子にしていた俺にヤバいことが起こって、あと三日で退院というところに、雄貴さんがお見舞いに来て、カウンセラーの人にも会ったらだめだ、って言われてたんだけど、会いたくない、ってナースにひと言えばそれですむことだったのに、会ってしまって、彼は俺の入院に関して責任を感じてるらしくて、全然そんなことないですよ、って。あと三日で退院できるから、そしたらもう仕事にも復帰できるし、って、明るく言っておいた。とうとう本物の彼を見てしまって、懐かしいなと思うし、魅力は感じるし、彼に会ってうれしい。でも彼の身体から出てたあの火のような誘惑はどこへ?多分薬が効いてて俺の狂ったような彼に対する気持ちはもう消えたんじゃないかな?って、いうのは全部ウソで、彼を見て、とたんに前と全く同じ気持ちになった。それで清士がいつも来るような時間になったから、じゃあ、俺ちょっと疲れたから、って言って、雄貴さんは帰って行った。そしたら、あろうことか、清士が雄貴さんとすれ違ったって。話しはしなかった、会釈しただけだったらしい。俺は、

「雄貴さん来てくれたけど、ほんの少しの間で、俺がもう疲れたから、って帰ってもらった。」

そう、なるべく普通っぽく言っておいた。すごく不思議だけど雄貴さんと会ったばっかりで、なんか清士を愛する気持ちが一気に復活して、清士に、

「退院したら、いっぱいエッチしようね。」

って、ナースが見てないすきに、清士と濃厚なキスをしてしまった。すごくうれしかった。早く清士とセックスしたい。俺ってやっぱりクレージーなのかな?

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退院したその晩のセックスは、なんだか優しくてすごくうれしくなるような感じので、二人共、口でしかしてなくて、でもそれで十分以上の気持ちだった。エッチしながら雄貴さんのこと考えるかな、って思ってたけどそれはなくて、っていうのはウソで、でも考えたのはほんのちょっとの間で、で、すぐまた、清士に対する愛情が盛り返して、すごく幸せな気持ちになった。清士って俺があんなに他の男に気持ちを持っていかれたのに、全然怒ったりしないし、俺にはもったいない男だな、って思ったし。それからも情緒不安定がしばらく続いて、朝方元気でよく喋っていたと思ったら、夜はずっと何時間も泣いて、そのあと泣き疲れて、ずっとぼーっとしてたり、なんで泣いてんの?って清士に聞かれても、分からない、って答えてみたり。清士に毎週病院に連れてってもらうんだけど。ドクターに、じゃ、また病院に泊まっていくか?って言われて、あの、それはもういいです、って答えて、じゃあ、ちゃんと治さないとだめだぞ、って。ある晩、また泣き疲れてボーっと清士を見てて、なに?って聞かれて、

「こんななんの役にも立たない俺をうちに置いてくれてありがとう。」

「どういたしまして。」

「泣きすぎて頭が痛い。」

「どの辺?」

「額の辺。」

で、清士が額をなでてくれて、キスしてくれて、毎晩泣くのやめたいんだけど、って俺が言うと、

「泣きたい時は泣けって、ドクター言ってたじゃない。」

「でも一緒に住んでる人がこんなだと、嫌でしょ?」

「七音はどんなになっても七音だから。ここにいてくれるだけで俺はいいし。」

それからはあんまり何時間も馬鹿みたいに泣いてることはなくなってきたけど、その代わり、自分がやったこととか、言ったこととかをすっかり忘れる、っていうことがしょっちゅうあって、ドクターは一時的な混乱だと思うけど、ってあんまり自信ないみたいに言ってて。

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それはほんとに一時的なもので、それがおさまって、モデル・エージェンシーに挨拶だけしに行って、俺の髪が大分伸びてて、全然切ってなかったし、そしたら社長がそのまま伸ばしとけ、って、もう少し顔の疲れが取れてきたら、それで写真撮ってみよう、って。その晩、雄貴さんからメッセージがきて、体調どうですか?みたいな簡単なヤツで、それでもし雄貴さんに普通に仕事で会えるようになったら、俺が回復したってことじゃないかな、って思ったからそう返しておいた。返事はもうそれで来なかった。大分体重が減ってしまって、清士が色々食べさせようとしてくれたけど、俺は食べ物を見詰めてため息をつくばかりで。ボーっとする時間が長くなってきて、ある時なぜか今住んでるマンションの一階の入り口のところでボーっと座っていたら、何時間もいたらしいんだけど、不審者だということでまた警察を呼ばれてしまって、ここでまた病院に戻るわけにはいかないと思ったから、俺、ここに住んでるんですよ。友達が帰って来るの待ってるだけですよ、って、必死に言って、すぐ清士に来てもらって、幸い近くにいて、でも警察官がここに三時間以上身動きもせずに座ってた、っていう通報があったんですけど、って、結構若い警察官で、俺が笑顔を振りまいて、そんな三時間なんて大袈裟ですよ。で、清士が来てくれて、ほんとにここに住んでることを証明してくれて、もうこういうことのないように、しっかり監督しますから、と約束して、そしたらその若い警察官が、

「こんなきれいな顔した青年がこんなとこに座ってたら、悪いヤツに連れて行かれますよ。気を付けてください。」

って大真面目な顔で言って、それで許してもらった。よかった。で、俺が、

「ゴメンね清士、仕事中だったんでしょ?」

「なんであんなとこにいたの?」

「分からない、あそこにいるとなにかいいことがあるような気がして。」

「例えばどんな?」

「さあ、それは覚えてない。」

「こんなきれいな顔をした青年があんなとこに座ってたら、悪いヤツに連れて行かれるから気を付けないと。」

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それから俺の精神科医と、ちょっとずつちょっとずつ薬の調整をして、やっとうまくいって、俺も仕事に戻ることができた。それで、俺のモデル・エージェンシーで長い髪の俺の写真を色々撮ってプロモートしたら、なんとあの俺がヌードをやった女性誌が、ぜひなにか一緒にやりましょう、という返事をよこして、見開き二ページで、テーマは、「退廃」。久々の仕事だったし、当日剣が付いて来てくれて、行ったら十代の男性モデルとのからみで、フルヌードしゃなかったけど、ベッドでシーツに二人でくるまってる感じで、今回の髪はヘアメイクさんが頑張って見事な巻きの入った感じになって、俺まだ目の下に多少隈が残ってて、まさに「退廃」そのもので、そしたらまたストーリーを説明する人が来て、今回は、ビジュアル的にはカルバン・クラインの広告写真みたいな陶器のような質感で、まるで死体のように動かない感じ。で、ストーリー的には、その十代の子が最初、俺に惚れてて手練手管で誘惑してくるんだけど、俺は絶対なびかなくて、でもそのうち立場が逆転して、俺がその子を追う側になっていって、キスしたいんだけど、その子はそれを受けてくれない、っていう聞いた端から忘れそうなストーリーで、撮影直前に剣と話してて、なんで女はゲイが好きなんだ?とか二人で考えてみたんだけど、そんなこと考えてる場合でもないから、男の単純な脳でいかないとダメだから、ってことになって、その若い子、仕事初めてだったんだって、だからエージェンシーの社長が見に来てて、多分小さい会社なんだなって。その人がやっぱり元モデルらしくてメチャイケメンで、見てるだけでたちそうになって、剣もヤバいよね、って言ってて、撮影に入った途端にやっぱりさっきのストーリーは全部忘れてしまったから、でもその割にはポーズに注文を付けてくる人もいなくて、その子、撮影前に俺のこと知ってて、ファンなんだ、って言ってて、最初この子、俺の相手には子供過ぎるよなって、キスとかして児童虐待とか言われないかな、って心配したんだけど、へー、俺のファンなんだ、って思ったら、ま、いいや、っと思って遠慮なく好きにさせてもらった。写真三枚で、一つ目が、俺が半分ひざ立ててベッドの上に座ってて、男の子が俺のひざ枕で俺の顔見てるんだけど、俺はあらぬ方向を虚ろに見てて、でも俺の手はその子の髪をもてあそんでる、というモノで、二枚目がお互いを受け入れてる感じで、目と目で見つめ合って顔が接近しててキス一歩手前で、三枚目が、二人でベッドに座ってて、俺がその子を後ろから抱いて、その子の首の横に、清士がしてくれるような感じのキスをするんだけど、その子は半分目を閉じでうっとり俺のキスは受けるんだけど、首は少し俺から離れてて瞳はもっと違う方向を向いてるという感じで、スタッフもみんなよかったですよ、って言ってくれて。それは表紙にはならなかったんだけど、表紙に「七音、退廃ロマンス」って、文字があったから、雄貴さんそれ見てメッセージくれて、髪が伸びたんだね、元気になって安心した、って。彼のことを思うとまだ身体中が熱くなってしまう。でも忘れようとはしてて、カウンセラーの人が、急がなくていいからゆっくり忘れればいいから、って。だけど、ゆっくり忘れていく過程で苦しい、つのる思いも長くなるから、ほんとに分かって言ってんのかな、この人?でも雄貴さんのこと以外では元気になって、清士のペーパー・ウォークも英文以外は全部俺がやってて、営業もぼちぼち行き始めて、雄貴さんのところはまだ清士がやってたけど、もう警察が来たりすることもなくなったし、泣くのは雄貴さんのこと考えるの、どうしても止められない時だけになってて、清士にはそんなこと言わなくても、なんで泣いてるのか知ってて、俺がいつまでも他の男のことで泣いてたら清士もたまらないだろうな、って思うとよけい泣けてきて、でも泣いてる時以外は大分食べられるようになって、身体が元気になったら、頭も元気になるんだろうな。それから清士が急に花束をくれて、なんで?って聞いたら、俺達が初めてキスした記念日だって、当然俺は泣いて、清士の胸にすがり、よくそんなこと覚えてたね、って言ったら、ま、大体このくらいの日だった、って、なんだいい加減、って言ったらほんとはちゃんと覚えてた、って。俺が、

「二人で笑ってるだけで幸せだったあの頃に戻りたい。」

「同じ様にずっと生きていける人もいるけど、そうじゃない人もいるんだよ、きっと。」

「俺が清士の立場だったら、とっくに俺みたいな馬鹿捨ててる。」

「じゃあ、明日ゴミの日だから・・・」

「あ、やめて。」

それから俺ほんと体力落ちてて、でも性欲はあったから、ベッドに行って、しばらく裸の清士の胸に抱かれてて、それはすごく気持ちよくて、清士大好き、って言いながら清士のペニスにキスして、それでそこが俺の馬鹿さ加減なんだけど、俺と雄貴さんって一度のゼックスもしてないんだよな、って考えて、もし一回でもしてたらどうなってたんだろう?って考えて、清士のモノをくわえながら目があちこち泳いでて、清士がお前の顔すごくエロい、って俺達飽きるまでキスして、それで清士のがすごく硬くなって、俺のケツを自分のひざに乗せて特別いやらしい感じで愛撫して、それでさらにいやらしく俺の二つのケツの山をひろげてくすぐったい溝のところから俺のアヌスまでなめてくれて、それで清士の舌が俺の中に入って来て、うっかりして大きな声が出ちゃって、清士が大丈夫?って、大丈夫だったから、大丈夫、って言って、それから清士は俺がまだうつぶせで、俺のケツをなでながら、うつぶせの乳首に手を入れてをまたいやらしげにいじってきて、ほんとはすごく感じてて、あえいだりしたいんだけど、それで清士がそれをやめたら嫌だな、って思ったからなるべく静かにしてて、でもそれがばれたかどうかは分からないけど、ちょっと休憩されて、でも清士の手は俺のケツをまだつかんでて、それは結構執拗でいやらしくて、今度は本気で息が早くなって、でもきっと清士としてはそんなつもりはなくて、

「お前のケツってそんなに感じる?」

「うん、メチャ感じる。」

今度ほんとにケツにも触らず、ほんとにちょっと休憩して、俺がまだ油断している時に清士が一気に俺の中に入れてきて、それがすごい刺激で俺のケツの中から、頭の先まで感じて、そしてだんだん俺のケツの位置を上げていって、清士のモノが入ったまま俺のケツが上がっていく、というのもすごい刺激で、俺の息が早くなってたんだけど、多分清士は今やめたくなくて、荒い息をしながら清士が大丈夫って?って聞いて、でも俺大丈夫かどうか分からなかったし、あんまり叫ぶような体力もなかっし、でも子犬が泣くような声が出ちゃって、それで清士が休憩にしてくれて、でも俺がずっと清士のペニスに触ってて、で、また二人でキスして、少しして、俺の息が戻ったから、清士はまた俺のケツに戻ったんだけど、気持よくってすぐ無意識に俺のケツが動いちゃうから清士は、

「お前のケツほんとにエロいな。」

清士にエロい、って言われるのは俺は好きで、むしろうれしいから、いいけど。そしたら、なぜか俺も自分のケツに触りたくなって、清士のモノが俺のケツの中で動いてるところが触ってみたくて、清士が、

「なにしてんの?」

「清士のが俺に入ってることろ、触りたい。」

清士が少し考えてるみたいで、これってちょっと休憩なのかな、って思ったらそうではなくて、すぐまた入れてきて、その時は俺を仰向けにするパターンで、清士が俺に俺の足を持たせて、それで俺が自分のもものとこを持ってたら、もっとひろげてって言われて、そして清士が結構感じてるっぽく入れてきて、俺も清士が動いてるのがよく見えて、俺の触れる範囲で清士のが動いてる辺りをさぐってて、時々俺の焦点の合わない目でそれを見てて、また清士が、

「お前の顔メチャメチャエロい。」

って言って、そしたらなんか自分のももをもう少し、しめたくてそうしたら、清士の動きが速くなってきて、で、また少しゆっくりになって、俺のペニスに触ってきて、俺も自分のに触りたくなってしょうがなかったけど、ちょっと触ってしまったら、清士はそれを見ながら考えてて、結局また清士の動きが速くなって、イきそうって言うので、顔にかけって、って言ったらしてくれて、自分の出したのを自分で払って、メチャ淫乱っぽいキスして、俺も夢中で清士の舌に俺のをからませて、清士のヒゲのところにもキスして、清士が俺のペニスに触ってるのも気付かなかったほど、そのキスがよくて、清士が俺のペニスをいつもよりきつく握ってきて、それで、清士が少し息が速いよって言って、残念だったから、また自分のペニスに触ろうとしたら、ダメだ、って言われて、少しして大分息も遅くなったから、それから清士が俺のペニスをヤってるところが見たいって俺が言ったから、俺の股ひらく感じで、それで、清士が時々俺のアヌスの周りとかまでなめて、それで俺がイって、気持よかった。清士もよかったって言ってた。

69

少し体力がついてきて、外周りの営業もできるようになり、書店用の資料を持って歩くことになった日、清士は少し心配してたけど、俺も実は大して自信があったわけでもなかったけど、雄貴さんに会いに行くことになった。すぐ隣のカフェに行って、少し新商品の説明をしたり、世間話しをしたり、この人の身体の中にある火は前と同じだった。別れ際に、

「七音が望むんなら、俺は彼氏と別れて君と一緒になりたい。」

って、雄貴さんが言ってくれて、俺は、

「それはしてはいけないから。」

時々来るからまたディスプレイ一緒にやりましょう、って言って別れた。帰ったら清士が、雄貴さんどうだった?って聞いてきて。

「大丈夫。また一緒にディスプレイしましょうね、って言って、さようならをして来た。」

「そうか。ダメだと思ったら俺がやるから。」

その時急にハッ、て思ったことがあって、俺は清士の前で泣き崩れた。

「さっき言われたの、雄貴さんに。彼氏と別れて七音と一緒になってもいい、って。でも俺はそれは全然考えてなかったから、そう言ったの。でも俺の母は・・・そっちを選択したんだな、って。あんなに小さかった俺と父ちゃんをすてて。」

「いいんだよ。七音は断ったんだろ?いいんだよ、それで。」

「でも。」

「七音と七音の母親は別の人間なんだよ。」

「うん。」

「状況だって時代だって違うし。」

「うん。」

「カウンセラーの先生が言ってっただろ?雄貴さんのことは、病気が七音に見せてる錯覚だって。」

「うん。」

「ちゃんと断ったお前の方が、お母さんより強かったんだって。」

清士はそのあとも泣いてる俺に薬を飲ませてくれて、脈をとってくれて、ベッドに入れてくれて、手を握っててくれた。俺はそれでもなお、雄貴さんが彼と別れて俺と一緒になってくれる、って言ったことを考えてて、錯覚ってなんてしつこくこびりついてくるもんなんだろう。それからカウンセラーの人に錯覚って強力ですね、でも錯覚かどうか、ってどうしたら分かるんですか?って聞いたら、そもそも世の中の恋愛のほとんどが錯覚なんだって。それって俺、上手く理解できないんだけど。

70

俺が一年間レギュラーでやってた、雑誌の契約が切れて、ま、大した収入源ではなかったけど、ちょっと心配になってたら社長に呼ばれて、そしたら、おめでとうとか言われて見たら、見たことない人がオフィスにいて、その人結構メジャーな男性ファッション誌の人で、きちんとした重いスーツってやっぱりこういう胸板の厚い人が似合うんだな、って思って見てたら、その人が俺に、

「あっちの契約が切れるのずっと待ってたんですよ。待ってると余計長く感じますね。あっちの雑誌、絶対七音さんのこと離さないし。」

って、謎のことを喋ってて、その人にうちの雑誌でとりあえず一年専属でやってください、って言われて、俺がまだなにも言ってないのに社長が、よろしくお願いします。なんて言って、その人編集長なんだっていうんだけど、なんで編集長がわざわざ、って思ったんだけど、俺なんて全然そんなの知らなかったから、またスケートボード・キッズみたいなカッコしてて、社長があんまり口出すから、俺まだ喋るチャンスもなくて、緊張して目が流れっぱなしで、その編集長が、

「七音さんって、無口だったんですね。」

だから俺が、

「社長が喋り過ぎるんですよ。全然無口じゃないですよ、ね、剣。」

って、なぜか剣に証人になってもらった。

71

初めての撮影があって、場所はほんとに人通りの多い下町のストリートで、俺の髪まだ長かったけど、ヘア・メイクさんがなんかホットカーラーみたいなのできれいに巻いてくれて、巻き毛のプードルかマルチーズみたいに可愛くなって、この雑誌あんまり実はのぞいたことなくて、そしたらメチャ、モードで、本の年齢層が二十代後半から三十代で、俺がギリギリくらいで、相変わらず年齢詐欺はしてたけど、まあ、それはみんなしてるから詐欺にはならなくて、前のとこがすごく実用的でトラッドっぽい感じの雑誌だったから、えー、こんなのにこんなの重ねるんだー、みたいな驚きがあって、色の合わせ方も、えー、こんなのにこんなの重ねるんだー、みたいな感じ。見てたら、スタイリストさん、服は色々そのテーマのを持って来てて、でもコーディネイトはその場で考えるの、周りの街の色とか、俺の多分体型とか見て決めてるんだと思う。そしたらそこに近所のおばちゃんが小っちゃい巻き毛の犬連れて散歩してて、俺達の撮影を立ち止まって見てて、俺、子供も好きだけど犬猫も好きで、いいですか?って断ってから犬抱っこさせてもらったら、同じカーリー・ヘアーで、しかも色もほとんど同じで、フォトグラファーの人が笑いながらそれを撮ってて、それが俺のその雑誌初登場で、その表紙を飾った。そのプードル頭でうちに帰ったら当然清士に可愛い、って笑われて、その髪で例の着せ替えごっことお医者さんごっこの中間をしようって言われたけど、ちょっと考えさせてください、って言っといて、

「でも、この髪何種類も整髪料が使ってあって、早くシャンプーしないと気持ち悪い。」

って、言ったら、清士が、じゃあ俺がシャンプーしてあげるから、って。清士が、

「これ、なんかシャンプーでは落ちないものを使ってある。」

「えー。」

「ここまでしか落ちないから、明日これやった人に聞いてみるしかないよ。」

だから、シャンプー後でもまだ巻き毛がかなりキープされてて、清士はそれを喜んでて、固まったままドライヤーかけてくれて、せっかく着たパジャマはすぐ脱がされて、ここがお医者さんごっこの一番いやらしいとこなんだけど、俺が裸で椅子に座らされて、清士はお医者さんの役だから服は着てて、俺の髪を自分の指にクルクルしながら、

「ほんとにお人形みたいだな。」

って、いやらしい目で俺の方を見て、それからキスしてそれがどんどんディープキスになって、

「寒くないだろ?」

「寒かったけど、清士とキスしたら暖かくなった。」

そしたらお医者さんが立ち上がって俺に90度キスをしてくれて、そのあとは俺のどこに触っても感じるようになって、清士が、

「息が速くなってるよ。」

「俺、清士がどこ触っても感じる。ちょっと苦しい。」

ベッドに横になって、少し休んで薬飲んで、そしたら息が戻って、清士はセックスしたがったけど、胸が苦しかったから、俺がヤバいって言って、それで二人でベッドに横になって、清士としばらく色んな話しをして、お前大分よくなったから、お前の両親にでも会いに行けば?って、でもなんか気が進まなくて、昼間の犬の話ししたり、それで息は普通になって、それでも清士がどこに触っても感じて、で、俺が、

「変だよね、なんでだろう?」

「そんなに?」

「うん、そんなに。」

「どんな風に?」

「清士が触ると頭と胸が苦しい。でもそれが気持ちよくもある。」

そこでなんとなく、雄貴さんが俺の手をにぎった時のことがフラッシュバックみたいに蘇って、でも好きとかいう気持ちは少しずつ、大分遠のいてきてたから、そのフラッシュバックのことはまたすぐ消えて、で、俺が、

「あのね、俺と清士の身体が結びついてる感じ。だからどこを触られても感じる。」

そしたら清士も服を脱いで、ベッドの背もたれに座って、そして俺が清士の裸の胸に甘えて顔をうずめて、キスしてなにげなく乳首触ってたら、

「ヤらしてくれないんなら、変なとこ触っちゃだめだぞ。」

それで俺、なにを思ったか、ふとんに潜って清士のペニスなめ始めて、すごいエッチっぽく音まで出ちゃってそれで苦しくなったからふとんからは出たけど、俺がヤってる間に清士のがすごくかたくなってて、清士がふとんをガバってめくって、俺がまだいやらしく音を立てながらフェラしてて、俺のまだガチガチの頭を触って、なんだこの頭は、って笑って、俺それしながらも目が無意識に泳いで、清士と目が合って、でも目の焦点は合ってなくて、清士の乳首にもたくさん触って、そしたら清士が俺の首のとこで脈はかってくれて、でも大丈夫だったから、また清士のペニスに戻って、先っちょのほうをいっぱいなめてから思いっ切り、俺の、のどの方まで入れて唇でしめながら舌も使いながら出し入れしてたら、

「いい、それ。」

って、喘いで、

「もうイくっ。」

て言うから、俺が、

「口に出して。」

って、言ったらそうしてくれて、すごくハッピーな気持ちになった。

72

次の日は日曜で、俺も大分元気になったからって、例のホコ天に行ってみた。デパートなんかも人がいっぱいで、清士がついでに自分のところで輸入してる食品をチェックしたり、それからなんとなく雄貴さんのいる本屋の前を通ったら、彼がいて、

「すごい頭ですね。」

「これ取れないんですよ。」

「え、じゃあどうするんですか?」

「さあ。」

今度から違う雑誌にかわったんでまた見てください、って、言ったりとか、近々寄りますから、ってそれで別れた。清士は外で待ってて、また彼には会釈しただけだった。で、清士の行ってる美容院があったから、俺の頭見せて、どうやって取るのか教えてもらった。次の撮影の時同じヘアメイクさんで、あれ取るのに苦労しましたよ、って文句言ったら、言わなかったですか?すいません、ってそれだけ。そしたらなんとあろうことか、その日の撮影に航青がいて、なんと彼とのからみ。男同士でタキシード着てなんのからみ?って思ってたらさすがモードの雑誌で、パーティーみたいに人がいて、航青はその中の一人でシャンパングラスを持っていて、俺がその後方5mくらいの暖炉の前に立ってて、大きな鏡に映る航青の横顔をじっと見ているというもので、さすが装飾もかなり凝ってた。二番目のショットが、俺達二人がジャケット脱いで黒いボウタイで、航青が後から俺の肩に自分の腕を乗せて、手にはまだシャンパングラスを持ってて、俺になにかささやいてて、俺の目が航青の目と反対側を見てるというもの。その時航青がささやいてたのは、

「ヘイ、ベイビー、病気だったって?まだ目の下に疲れが見えるな。セクシーだな、それ。」

航青、俺の首の横にキスしそうになったから、そこは清士だけがキスできるの、って思ったからよけたら、

「なんでよけるんだよ。」

って、言われて結局、ほっぺにキスされた。それで三番目のショットで、思いっ切り嫌な予感がしてたら、やっぱりベッド・シーンで、航青自ら俺のボウタイをはずして、それから上からボタンをはずしていって、多分六個くらいはずしたところで俺の乳首にキスして、濃厚なヤツ、でも俺はくすぐったかったからちょっと笑ったら、航青が、

「なんで笑ってんだよ。」

「くすぐったい。」

そしたらいきなり俺の口にキスしてきて、それはそんなに濃厚ではなかったけど、

「相変わらずスキがあるな。」

73

あとでエディターさんに聞いたんだけど、あそこでキスしろなんて全然言ってないんだって。航青が勝手にやったんだって。それで乳首にキスされてるのと、口にキスされてんのが載ったから、清士は前一回だけ航青のこと見てたけど忘れてて、誰こいつ?って、清士はあんまりいい気持ちはしてなかったみたい。今度、航青に会ったらなんか言ってやろ、って思ってたら、そのチャンスがすぐ来て、

「こないだの撮影の時キスしろなんて誰も言ってないって。」

「そうだったかな?」

「そうだったかな、じゃないだろ?」

「いいじゃん、キスしてんのが載ったんだから。」

「いいじゃん、じゃないです。」

「それよりこないだ、なんで首の横んとこキスさせてくれなかったんだよ。」

「ここはね、大事な人のためにとってあるの。」

「あっそ。でも俺お前のタイプだろ?」

「そういう質問には答えられません。」

「そうなんだろ?」

「俺はね、もう絶対恋はしない、今の男だけを愛していく、って決めたの。だから。」

「だから?」

「だから、そういうこと。航青にもいるんでしょ、彼氏。」

「まあ。」

「ほらいつかも、まあ、って言ってた。いるんだったらその人を大事にすればいいだろ。」

74

それから何回か雄貴さんのいる書店のディスプレイを手伝って、休憩しましょう、って雄貴さんと、隣のカフェに行った。雄貴さんは、

「七音には関係ないことだけど、俺、彼氏と別れた。」

「そう。」

「一緒にいる意味がだんだんなくなっていって。」

「うん。」

「またいいの見付けようって、笑って別れた。」

「そう・・・俺、もう恋はしない。あんなのつらすぎる。」

「ゴメン、七音。」

「誰のせいでもないから。」

雄貴さんのことは、俺、実はまだ好きだな、って思ったりする。一緒にいると今も胸が熱くなる。でも、俺には清士がいて、もうよそ見はしない、っていう決心があって。

75

営業から帰ると清士がなんか料理をしてて、一緒に食べて、二人で話したんだけど、俺が子供服の輸入をやりたいって話し。最初から百貨店は無理だから、まず売ってくれる店から探して、それから商品を探して。不可能ではない話しだから。夜がふけていって誰かから電話、俺のケータイに。

「・・・お前なんで俺の番号知ってんの?」

「俺、頭いいから。」

「うるさい!一家団欒の邪魔をするな。じゃあ。」

「あ、ちょっと待った。」

「なに?」

「お前、俺がお前のこと好きなの知ってるよな?」

「知らない、関係ないし、じゃあ。」

電話を切って、そしたら清士が、

「誰?」

「あの馬鹿、航青。」

「あ、あいつ。なんだって?」

「俺がお前のこと好きなの知ってるよな、って言うから、知らない、関係ないし、って。あいつ、彼氏いるんだよ。彼氏いるんならその人を大事にしなきゃダメだよ、って言ったのに、こないだ。」

清士が、

「あれだろ、誰もキスしろって言ってないのにお前にキスしたヤツ。」

「そう。なんで俺の番号知ってんだろ?」

そしたらまたかかってきて、もう出たくない、って言ったら、清士が電話取って、

「お前いい加減にしろよ!」

って、怒鳴って、それで俺が、

「なんだって?」

「すぐ切れた。なんだあいつ?」

「なんなんだろ?」

「もしなんかしてきたら、俺がただじゃおかない。」

「航青ボクシングやってるから。」

「だから?そんなの関係ない。俺は七音を守るためにここにいるんだから。」

清士、カッコいいと思ったから、ポーっとして清士を見てると、清士が、

「なに?」

「清士カッコいい。」

「だけど、ほんとにあいつボクシングやってんの?」

「そうらしいですよ。エージェンシーのプロフィールによると。」

「今度そこに苦情言ってやるといいぞ。電話番号知ってるだけでもおかしいんだから。」

俺のエージェンシーの社長から編集長に話しが行って、俺と航青の撮影が一緒にならないようにしてくれるそう。

76

編集長にお詫びに一杯おごるから、って誘われて、それで聞いたんだけど、その編集長、俺がまだ二十代、と言ってもその時も年齢詐欺はしてたけど、まあ二十代の頃出てた雑誌で、その時エディターだったんだって。下手すると十年以上も前のことを覚えててくれたんだなって。あの頃、君、よく泣いてたよね、って言うから、今でもよく泣いてますよ、って。航青は人気あるからうちの雑誌からは切れないけど、ゴメンねって。なんかあったらすぐに言って、って。それから、編集長が言うには、俺にはなにか人を狂気に駆り立てるモノがあるって。それで俺ちょっと黙っちゃって、編集長が、

「なに?黙って。」

「航青ボクシングやってる、って。だから。」

「だから?」

「俺の彼氏がなんか過剰に心配してて。」

「ああいう虚勢張ってるタイプは実は気が弱いから。」

「はい。」

「変なこと言わなければよかったかな?」

「え?」

「だから君にはなにか人を狂気に駆り立てるモノがあるって。」

「それね、多分違う。」

「そう?」

「だって、そんなこと言ったら、俺の方がよっぽどおかしいもん。」

「そう?」

「俺少し前、他の男好きになって、おかしくなって、でも俺の彼氏、全然怒らないでじっと見ててくれて。」

「どんな人なの、君の彼氏?」

「高校の同級生で。優しい人。」

「そう。」

その時、俺のケータイが鳴って、

「迎えに来るって言ってたから。」

77

それは清士からだったんだけど、警察にいる、って。それで、編集長と一緒に警察行って、週末で、エレベーター、とかもいっぱいで、急な階段上って、清士を捜してたら、航青がいるの見ちゃって、向こうも俺のこと見てて。で、清士を見付けて、航青がうちの周りをうろついてて、一発だけ殴られて、ケガはたいしたことないって。航青はかなり酔ってたって。航青の弁護士がもう来てて、名刺くれて。俺と清士は念のため病院に行って、俺があんまり泣いてるから、ドクターもナースも俺がケガしたと思って、笑われて。清士は額を少し切っただけで、俺がそこにキスしたら痛い、って怒られた。診断書もらってすぐうちに帰ったんだけど、警察にいても、病院にいても、週末だから、パトカーとか救急車とか何台も出たり入ったりしてて、俺泣いてたから赤いライトがまぶしくて、で、俺が、

「でも、あいつどうしてうちが分かったんだろう?」

清士は、

「多分あとつけられたんだよ。」

編集長から電話が来て、あいつはもう絶対使わないから安心して、って。で、俺が清士に、

「編集長が言ってたけど、俺にはなんか人を狂気に駆り立てるモノがあるんだって。」

「へー、で、なんて言ったの?」

「それは違うって。こっちの方がよっぽどおかしいって。」

「ほんとにそうだな。」

って、清士が笑って。俺にはこんなに優しくて、俺のこと守ってくれる男がいるんだな、って。


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千本松由季

Author:千本松由季
東京都出身。カナダ在住。
男同士の恋愛を、様々なテーマで書いています。作品は長編を中心に50作以上。
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bridgetteyuki@hotmail.com
イラストも描いています。

©Yuki Sembommatsu 2017-2018